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嵐到来
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ずびずびと鼻水を啜る忍。
「美人は鼻水垂らしてても美人だわー」
「陸、言い方」
拭いたげる、海斗は忍の鼻水をティッシュでゴシゴシ拭く。
忍の鼻の回りはもう真っ赤だ。
「落ち着いたら食べな?ノルマ一人二枚ね」
「・・・はい」
忍は食べた。
豚玉と海老玉の二枚をペロリとたいらげた。
あ、僕けっこう食べますよと忍は食べ終わりごちそうさまでしたと手を合わせた。
「片付け手伝います」
「いいよ。蒼太と海斗がやるから。忍さんはゆっくりしてて」
陸は忍の背を押してリビングのテーブルに誘導した。
テーブルに頬杖をついてニマニマと忍を見る陸。
「ほんとに海だけ見に来たの?」
「・・・そうです」
「じゃあ、海見てどうだった?」
「陸やめろ」
「なんでー?洗い物しとけよ。Ω会に入って来ないで」
「女子会みたいに言うな。ごめんな、忍君、これ飲んで」
マグカップから立ちのぼる湯気はほのかにオレンジの香りがした。
「忍さんは、なにかから逃げてきたの?」
「に・・・逃げて・・・るのかな?」
「だって、着の身着のままって感じだったって里中のおばちゃん心配してたよ」
──運命に出会ったんだ。
──ずっと前から好きだったんだ。
──慰謝料は払う。
──みぃちゃん
──稔
──俺たちはずっと稔の味方だ。
──すまない。
──どうしようもないんだ。
──みぃちゃん私たち結婚する。
「・・・忍さん?」
「あ、えと、僕は、僕はどうやったら・・・」
忍は視線をさ迷わせ、陸はそれをじっと見ていた。
忍は陸の視線から逃げるように、頭を下げギュッとズボンを握る。
ガラララッ───
掃き出し窓が突然開き、男がおいーすと言いながら窓に手をかけ靴を脱いでいた。
「いやぁー、今日の初号機は絶好調よ!めっちゃ強かったわー!」
男は靴を脱ぎズカズカと上がり込み、驚きで目を丸くしている忍に目をとめた。
「は?なに?めっちゃ可愛い子いる!え?すごい美人!誰?この町にこんな子いなかったでしょ、どこに隠れてたの?うわー、ほんと可愛い!可愛い!可愛い!」
「金ちゃん、やめろ!蒼太!」
男は忍をぎゅうぎゅう抱きしめまくし立てた。
忍はされるがままに目だけを陸に合わせ、助けてと小さく呟いた。
「なに?助けてほしいの?何から?俺が助けてあげるよ!なにしたらいい?誰かぶっ飛ばしてきたらいいの?」
「お前だ!お前から助けてほしいんだよ!離れろ、こら!」
「・・・そ、蒼太さん」
「あ、俺、遠山一穂。一穂でも、いっくんでも、いっちゃんでも好きに呼んで?ね?」
「あの、と・・・遠山さん」
「なにキョロキョロしてんだよ!遠山はお前しかいないだろ!はよ、離れろ!」
蒼太が二人の間に入ろうとするが一穂は忍を抱え込み離さない。
「なんで、蒼太は名前で呼ぶの?」
「ここには三人上木がいるからだろ!」
「じゃあ、俺も上木になる!上木一穂です。よろしく。一穂って呼んで?呼ばないと離さない」
「いっ、一穂さん!離して!」
一穂は体は離したが、大きな両手は忍の肩をぐっと掴んで離さなかった。
「てか、服ダサいね!いや、一周回って新しいのかな。どこで買うの?」
「に、nisiyama」
「あ、あのスーパー?え?あそこで買ったの?じゃ、明日俺と一緒に買いに行こ!俺の服選んでよ!ね?ね?」
満面の笑みで忍を見下ろし、その瞳は忍を捉えて身動きがとれない。
「あ、名前なんていうの?」
嵐を呼ぶ二十八歳児 遠山一穂 降臨───
「美人は鼻水垂らしてても美人だわー」
「陸、言い方」
拭いたげる、海斗は忍の鼻水をティッシュでゴシゴシ拭く。
忍の鼻の回りはもう真っ赤だ。
「落ち着いたら食べな?ノルマ一人二枚ね」
「・・・はい」
忍は食べた。
豚玉と海老玉の二枚をペロリとたいらげた。
あ、僕けっこう食べますよと忍は食べ終わりごちそうさまでしたと手を合わせた。
「片付け手伝います」
「いいよ。蒼太と海斗がやるから。忍さんはゆっくりしてて」
陸は忍の背を押してリビングのテーブルに誘導した。
テーブルに頬杖をついてニマニマと忍を見る陸。
「ほんとに海だけ見に来たの?」
「・・・そうです」
「じゃあ、海見てどうだった?」
「陸やめろ」
「なんでー?洗い物しとけよ。Ω会に入って来ないで」
「女子会みたいに言うな。ごめんな、忍君、これ飲んで」
マグカップから立ちのぼる湯気はほのかにオレンジの香りがした。
「忍さんは、なにかから逃げてきたの?」
「に・・・逃げて・・・るのかな?」
「だって、着の身着のままって感じだったって里中のおばちゃん心配してたよ」
──運命に出会ったんだ。
──ずっと前から好きだったんだ。
──慰謝料は払う。
──みぃちゃん
──稔
──俺たちはずっと稔の味方だ。
──すまない。
──どうしようもないんだ。
──みぃちゃん私たち結婚する。
「・・・忍さん?」
「あ、えと、僕は、僕はどうやったら・・・」
忍は視線をさ迷わせ、陸はそれをじっと見ていた。
忍は陸の視線から逃げるように、頭を下げギュッとズボンを握る。
ガラララッ───
掃き出し窓が突然開き、男がおいーすと言いながら窓に手をかけ靴を脱いでいた。
「いやぁー、今日の初号機は絶好調よ!めっちゃ強かったわー!」
男は靴を脱ぎズカズカと上がり込み、驚きで目を丸くしている忍に目をとめた。
「は?なに?めっちゃ可愛い子いる!え?すごい美人!誰?この町にこんな子いなかったでしょ、どこに隠れてたの?うわー、ほんと可愛い!可愛い!可愛い!」
「金ちゃん、やめろ!蒼太!」
男は忍をぎゅうぎゅう抱きしめまくし立てた。
忍はされるがままに目だけを陸に合わせ、助けてと小さく呟いた。
「なに?助けてほしいの?何から?俺が助けてあげるよ!なにしたらいい?誰かぶっ飛ばしてきたらいいの?」
「お前だ!お前から助けてほしいんだよ!離れろ、こら!」
「・・・そ、蒼太さん」
「あ、俺、遠山一穂。一穂でも、いっくんでも、いっちゃんでも好きに呼んで?ね?」
「あの、と・・・遠山さん」
「なにキョロキョロしてんだよ!遠山はお前しかいないだろ!はよ、離れろ!」
蒼太が二人の間に入ろうとするが一穂は忍を抱え込み離さない。
「なんで、蒼太は名前で呼ぶの?」
「ここには三人上木がいるからだろ!」
「じゃあ、俺も上木になる!上木一穂です。よろしく。一穂って呼んで?呼ばないと離さない」
「いっ、一穂さん!離して!」
一穂は体は離したが、大きな両手は忍の肩をぐっと掴んで離さなかった。
「てか、服ダサいね!いや、一周回って新しいのかな。どこで買うの?」
「に、nisiyama」
「あ、あのスーパー?え?あそこで買ったの?じゃ、明日俺と一緒に買いに行こ!俺の服選んでよ!ね?ね?」
満面の笑みで忍を見下ろし、その瞳は忍を捉えて身動きがとれない。
「あ、名前なんていうの?」
嵐を呼ぶ二十八歳児 遠山一穂 降臨───
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