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伸るか反るか

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リリコは貴族牢にいた。
あの後、紫髪男に家まで送ってもらい降りた所を捕縛された。
父と母は泣いていた。

「リリアナがごめんなさいって言ってた!」

それだけは、大声で聞こえるように伝えた。
リリコはもう思い残すことはないと思っていたが、貴族牢ってめっちゃ快適やん!と満喫していた。

鉄格子の中は普通にベッドがあり、手洗いもお風呂もついていた。
しかも結構広い。
ご飯も出てくる。
パンと具が少し入ったスープだけだが、充分美味しくて毎度完食した。
クローゼットにはドレスが入っていたが、まるで興味なかった。
婚約破棄された時に着ていたものからするとだいぶ質素なんだろうが、リリコは面倒くさがって常に下着姿でいた。
もう少し寒くなったらなんか着ようかなー、位にしか思ってなかった。
鉄格子の前には常に見張りの男がいたが、空気のように扱った。
胸と股間が隠れてれば問題ねえだろ、と羞恥心はもとよりなかった。

その日も下着姿で寝ていた。
することが無いので寝るしかないのだ。

「・・・きろ・・・リアナ・・・起きろ」

リリコがぼんやり目を開けると金髪碧眼のこれまた美丈夫が自分を覗き込んでいた。

「・・・お前、誰だよ」

金髪男は目を見張ったが直ぐに取り繕うように笑って

「水を飲むかい?」

と言って、リリコに水を手渡した。
リリコは素直に受け取り、一気に飲んだ。

「で?なんか用?」
「本当にリリアナ嬢じゃないんだね?」

驚いたなぁ、と金髪男はベッドの傍にある椅子に腰掛けた。

「あぁ、違うよ。そんだけ?おやすみ」
「待って、待って、少し話をしよう」

リリコはあからさまに面倒くさそうに金髪男に向き直りベッドの上で胡座をかいた。

「・・・目のやり場に困るな」
「気にすんな。話ってなんだよ」
「明日ね、君は陛下の前で審議にかけられる」
「あっそ」
「それだけ?」
「他になにがあんだよ。小娘一人の言うことだけ聞いて国のトップが出てくんだろ?しょーもない国だね、ほんと」
「いや、だから私が君の話を聞きに来たんだ」
「ふぅん。リリアナには何も聞かなかった癖に今更だね。私に聞いたって知らないよ。リリアナの最後がすごく悲しかった、そんだけ」
「・・・それは、申し訳なかったと思ってる」
「あっそ」
「なんでそんな他人事なんだ。明日、次第によっちゃ処刑されるかもしれないんだぞ」
「だからなんだよ。ギロチンで首落とされるってか?それとも棒にくくり付けられて火あぶりにでもされるか?上等だよ、受けて立つ」
「っ君はっ!リリアナの体をなんだと思ってるんだ!」
「お前はリリアナの心をなんだと思ってんだ。体は器だ。お前さっきコップに水入れて飲んだだろ?その空いたコップにワイン入れたらそれは『ワインの入ったコップ』なんだよ。『水の入ったコップ』じゃねぇ。大事なのは中になにが入ってるかってことだ。お前もあの変態紫髪男と一緒かよ。中身はどうでもいい。器さえありゃいいっての?肉体の傷も痛みもリリアナの代わりに私が全部引受けんだよ。そんで心だけ逝ったリリアナに体も返してやるんだ」

睨み合うリリコと金髪男。
辛抱切らしたのは金髪男だった。

「とにかく、私はこの件を今からでも調べて明日ひっくり返してみせる」

金髪男は膝の上で強く拳を握った。

「好きにすればいいんじゃねぇのぉ~」

リリコはこの上なく馬鹿にした言い方でもぞもぞとベッドに潜り込んだ。
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