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いざホームパーティ!

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大和と侑が肩を並べ、られてはいないが先を行くのを周平はその背中を見ながら思い返していた。
あの卯花とかいう編集長、あの部屋に入ったとき、高木が大和に駆け寄ったとき、驚いた顔をした。
そしてそれはすぐに鼻に皺を寄せた嫌悪の表情になった。
こっちが見てるのに気づいてすぐに愛想笑いに切り替えやがったけれど、と思う。

「あいつもまさかやまちがって思ったんか?」

チッと舌打ちをした周平を、足を止めた大和と侑が振り返った。

「ペー助はなにパーティにしたい?」
「パーティ?」
「うん、あの昼懐石は美味しかったけどさ、上品だったじゃない?」
「だから、夕飯はちょっと味の濃いものにしよっかって。俺は串カツパーティがいい」
「僕はねぇ、焼き鳥パーティがいいなぁって…ペー助どうしたの?」

パーティ、パーティ…なにか忘れている気がする。
なにを?と頭を働かせた周平はあっ!と声をあげた。

「ホームパーティ!!」
「…うん、家でするけど」
「違う、これだ!」

ジャケットのポケットから出したスマホ、すいすいと操作してメッセージ画面を掲げた。

「なにこれ」
「大和君も侑君もぜひご一緒に、だって」
「そうなんだよ!やまちのアレコレですっかり忘れてたんだって!」

「「「 誰だよ、こいつ 」」」

松竹梅の声は駅前の雑踏の中でハーモニーとなった。
キョトンとお互いの顔を見る三人、視線は自然とスマホに落ちた。

──お久しぶりです。やっと落ち着きましたので、ホームパーティを開催します。久しぶりに会いたいです。よかったらお越しください。大和君も侑君もぜひご一緒に…──

小日向千尋こひなたちひろってほんと誰?」
「わっかんないだよなぁ」
「でも、僕らのこと知ってる口ぶりだよね?」
「そうなんだよ、そこなんだよ」
「今日が木曜日だから、明後日じゃん」

うんうん、と三人でめいっぱい頭を悩ませたがさっぱりとわからない。
蔦の喫茶店を通り過ぎ、マルトミスーパーを通り過ぎ、橋を渡って気づけばもう家の前だった。

「考えてもわかんねぇんだからパーティ行こうぜ」
「あっくん、靴そろえて」
「やまちおねがーい」

ぽいぽいと革靴を脱いだ侑は、ジャケットを脱ぎ捨てた。
お詫びをしたいと料亭へ招かれた松竹梅は今日はセミフォーマルな装いだった。
革靴を履いたのは卒業式以来だ。
さっさっと着替えた侑はキッチンで、侑特製のアイスキャラメルラテを三人分作る。

「知らない人のパーティ行くの?」
「行ったら思い出すかもじゃん」
「あっくんの言うことも一理ある」
「じゃあ、行く?」
「おう、ホームパーティと言えばぁ?」

「「 たこパ!! 」」

そんなわけで三人はマルトミスーパーで良さげなたこを買って、お誘いメールにあった住所に赴くのであった。


たこを携えた松竹梅は地図アプリの案内に従って、梅雨の合間の晴れの空の下を歩く。
白壁を横目に見ながらの三人は三人共、まさかなぁという思いだった。
その三人の予感はまもなく的中することになる。

「ペー助、ほんとにここ?」
「ここ」

三人は両開きの大きな扉の前に立っていた。
その脇には普通の扉もあったが、如何せんインターホンらしきものが見えない。
ここまで横目に見てきた白壁がまだずっと向こうまで続いている。

「とんだお屋敷じゃん!たこ足りないよ!?」
「あっくん、問題はそこじゃないよ?これはきっとたこパじゃない」
「やまち、そこも問題じゃない」

問題はな?と周平が言いかけたところで、普通の扉からエプロン姿の女性が出てきた。

「なにか御用?」

びくぅっと震えあがり抱き合った三人は、たこパと信じて疑わなかったのでTシャツにハーフパンツやジーンズといったラフすぎる格好だった。

「あっ、千尋さんのご友人の方かしら?三人いらっしゃるかもしれないと伺ってたんですよ」

こちらへどうぞ、の言葉が最後通牒のように聞こえた松竹梅はしょぼしょぼとその後をついていく。
敷地内なのに舗道がある、木が生い茂っている、あちこちに建物がある。
なにこれ?と三人の視線はうろうろと定まらなかった。
いくつかある建物のひとつである洋館に案内され、通されたそこは広いホールだった。
着飾った人達がシャンパンやワインを飲みながら歓談していて、あまりに場違いなそれに三人はもう消えてなくなりたいと思った。

「周平君!大和君も侑君も来てくれたんだね!!」

駆け寄ってくる小動物、ではなくふわふわの髪をした小柄な男。
誰だよ、と訝し気な視線など気にすることも無く男は三人に抱きついた。

「あれ?忘れちゃった?やだなぁー、千尋だよ」
「お、おう」
「えー、ほんとに忘れちゃったの?」
「あ、さわ君?」
「大和君、思い出してくれた?」

嬉しいなぁ、と朗らかに笑う男はゆり花一年目の夏に中退していったオメガだった。
御曹司だったか、バイオリニストだったかは覚えていないし、寿中退したやつのことなんてさっぱり忘れていた薄情な三人は曖昧に笑うしかなかった。
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