2 / 47
脈あり?
しおりを挟む
数分が経ち、ボロい木造のアパートの前に差し掛かると、部屋から誠と同じ大学に通う谷口 晴美《はるみ》が出てきた。
晴美は沙織に気付き、会釈をすると、元気よく駆け寄っていく。
沙織は笑顔で手を振っていた。
「沙織さん、おはようございます。お出掛けですか?」
「おはよ。えぇ、そうよ。晴美ちゃんは今から講義?」
「いいえ、今日は午後からなんです。だから今から、食料の買出しに行こうと思って、外に出た所だったんですよ」
「そう、私も丁度、買い物に行く所だったの。御一緒していい?」
「はい、もちろん!」
晴美は笑窪ができる可愛らしい顔で、元気よく返事をした。
そんな笑顔をみて、沙織は元気が貰えたようで、嬉しそうに微笑んだ。
「それじゃ、行きましょうか」
「はい」
誠と同じ大学に通う女の子ということもあり、二人は知り合いで、こうして一緒に買い物をすることは、割りとあった。
二人は気が合う方で、今もお互い笑顔で、会話を楽しんでいた。
二人が買い物するスーパーマーケットは、アパートから歩いて五分で行ける。
大型スーパーマーケットではないが、近くに大学があるので、種類と安さは保障されていた。
カートを押しながら、晴美が先を歩き、沙織が後ろを歩いている。
精肉売り場に差し掛かると、晴美は立ち止まり、沙織は晴美を避けて横に並んだ。
「あ。この肉、安い」
晴美は嬉しそうに豚肉の入ったパックを手に取って、カートの中に入れた。
「晴美ちゃん、一人暮らしで大変じゃない? 大丈夫なの?」
「はい、大丈夫ですよ。一人暮らしは慣れているので」
「そう? 何かあったら言ってね」
「ありがとうございます」
「そうだ。今日も暑いし、向かいの喫茶店で涼んでいかない? 奢るわよ」
「え、いいんですか?」
「うん」
「ありがとうございます!」
※※※
二人は買い物を済ませると、向かいの喫茶店に入った。
店員に案内され、窓際の席に座る。
平日の朝方のためか、店内はチラホラと客がいるだけで空いていた。
「何がいい?」
「そうですね……じゃあ、アイスコーヒーで」
「私もアイスコーヒーにしようかな」
沙織はメニューを閉じて、呼び鈴を押した。
店員がお冷と、おしぼりが載ったお盆を持ち、二人に近づく。
「お待たせ致しました」
店員はテーブルにお冷と、おしぼりを二つ置いた。
「アイスコーヒーを二つ」
「アイスコーヒーを二つですね?」
「はい」
「かしこまりました」
店員が戻っていくと、晴美はコップを手に取り、水を一口飲んだ。
「涼しいわね」
「そうですね」
何気ない世間話が始まり、数分が立つ。
「ねぇ、晴美ちゃん」
「はい、何でしょう?」
「つかぬことを聞くけど、晴美ちゃんは彼氏いるの?」
「え? いませんよ」
晴美はキョトンとした顔をして答えると、手に持っていたコップをテーブルに置いた。
「お待たせしました。アイスコーヒー二つです」
店員は二人の前に、ガムシロップとミルクが入った容れ物と、アイスコーヒーを置いた。
「ごゆっくり、どうぞ」
店員が会釈をして、また戻っていく。
「そう、良かった。うちの息子なんてどう?」
「え!?」
いきなりの沙織の勧誘に、晴美は急にソワソワし、艶のある綺麗なセミロングの黒髪を撫で始めた。
「晴美ちゃん、可愛いし。うちの子を拾ってくれたら嬉しいな。ちょっと性格は変わっているけどね」
沙織はニヤニヤしながら、晴美の様子を見ている。
「えっと……」
晴美はポーションタイプのガムシロップとミルクを手に取ると、蓋を開けた。
アイスコーヒーの中に、ミルクを半分入れ、続いてガムシロップを半分入れる。
容器をテーブルに置き、ストローを手に取ると、クルクル混ぜ始めた。
困った表情はなく、ただアイスコーヒーを一心に混ぜているように見えるが、込み上げてくる感情を抑えきれなかったのか、一瞬、頬が緩んだ。
「ごめんなさい。いきなりだったわね」
「いえ、そんな……」
「少し安心した。気が無さそうな雰囲気じゃ、無さそうだもん」
晴美はハッとした表情を浮かべるが、黙って俯く。
「今日のことは内緒にしているから、大丈夫よ」
沙織の満面の笑みをみて、晴美は心配そうに眉を顰めて見つめていた。
「応援しているからね」
沙織はミルクだけをアイスコーヒーに入れると、飲み始めた。
「うん、美味しい」
晴美は沙織に気付き、会釈をすると、元気よく駆け寄っていく。
沙織は笑顔で手を振っていた。
「沙織さん、おはようございます。お出掛けですか?」
「おはよ。えぇ、そうよ。晴美ちゃんは今から講義?」
「いいえ、今日は午後からなんです。だから今から、食料の買出しに行こうと思って、外に出た所だったんですよ」
「そう、私も丁度、買い物に行く所だったの。御一緒していい?」
「はい、もちろん!」
晴美は笑窪ができる可愛らしい顔で、元気よく返事をした。
そんな笑顔をみて、沙織は元気が貰えたようで、嬉しそうに微笑んだ。
「それじゃ、行きましょうか」
「はい」
誠と同じ大学に通う女の子ということもあり、二人は知り合いで、こうして一緒に買い物をすることは、割りとあった。
二人は気が合う方で、今もお互い笑顔で、会話を楽しんでいた。
二人が買い物するスーパーマーケットは、アパートから歩いて五分で行ける。
大型スーパーマーケットではないが、近くに大学があるので、種類と安さは保障されていた。
カートを押しながら、晴美が先を歩き、沙織が後ろを歩いている。
精肉売り場に差し掛かると、晴美は立ち止まり、沙織は晴美を避けて横に並んだ。
「あ。この肉、安い」
晴美は嬉しそうに豚肉の入ったパックを手に取って、カートの中に入れた。
「晴美ちゃん、一人暮らしで大変じゃない? 大丈夫なの?」
「はい、大丈夫ですよ。一人暮らしは慣れているので」
「そう? 何かあったら言ってね」
「ありがとうございます」
「そうだ。今日も暑いし、向かいの喫茶店で涼んでいかない? 奢るわよ」
「え、いいんですか?」
「うん」
「ありがとうございます!」
※※※
二人は買い物を済ませると、向かいの喫茶店に入った。
店員に案内され、窓際の席に座る。
平日の朝方のためか、店内はチラホラと客がいるだけで空いていた。
「何がいい?」
「そうですね……じゃあ、アイスコーヒーで」
「私もアイスコーヒーにしようかな」
沙織はメニューを閉じて、呼び鈴を押した。
店員がお冷と、おしぼりが載ったお盆を持ち、二人に近づく。
「お待たせ致しました」
店員はテーブルにお冷と、おしぼりを二つ置いた。
「アイスコーヒーを二つ」
「アイスコーヒーを二つですね?」
「はい」
「かしこまりました」
店員が戻っていくと、晴美はコップを手に取り、水を一口飲んだ。
「涼しいわね」
「そうですね」
何気ない世間話が始まり、数分が立つ。
「ねぇ、晴美ちゃん」
「はい、何でしょう?」
「つかぬことを聞くけど、晴美ちゃんは彼氏いるの?」
「え? いませんよ」
晴美はキョトンとした顔をして答えると、手に持っていたコップをテーブルに置いた。
「お待たせしました。アイスコーヒー二つです」
店員は二人の前に、ガムシロップとミルクが入った容れ物と、アイスコーヒーを置いた。
「ごゆっくり、どうぞ」
店員が会釈をして、また戻っていく。
「そう、良かった。うちの息子なんてどう?」
「え!?」
いきなりの沙織の勧誘に、晴美は急にソワソワし、艶のある綺麗なセミロングの黒髪を撫で始めた。
「晴美ちゃん、可愛いし。うちの子を拾ってくれたら嬉しいな。ちょっと性格は変わっているけどね」
沙織はニヤニヤしながら、晴美の様子を見ている。
「えっと……」
晴美はポーションタイプのガムシロップとミルクを手に取ると、蓋を開けた。
アイスコーヒーの中に、ミルクを半分入れ、続いてガムシロップを半分入れる。
容器をテーブルに置き、ストローを手に取ると、クルクル混ぜ始めた。
困った表情はなく、ただアイスコーヒーを一心に混ぜているように見えるが、込み上げてくる感情を抑えきれなかったのか、一瞬、頬が緩んだ。
「ごめんなさい。いきなりだったわね」
「いえ、そんな……」
「少し安心した。気が無さそうな雰囲気じゃ、無さそうだもん」
晴美はハッとした表情を浮かべるが、黙って俯く。
「今日のことは内緒にしているから、大丈夫よ」
沙織の満面の笑みをみて、晴美は心配そうに眉を顰めて見つめていた。
「応援しているからね」
沙織はミルクだけをアイスコーヒーに入れると、飲み始めた。
「うん、美味しい」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる