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17話

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 数日が経ち、私達はあの日の事が無かったかのように穏やかな日々を過ごす。
 奈緒はあの日の夜、すぐに竜司と別れたと言っていた。
 報復を恐れたいた私たちだったが、神様は本当にいるのかもしれない。
 竜司とその友人は、ほかの女の子の被害届により、退学処分となった。

「美穂、一緒に帰ろうー」
 と、奈緒が言いながら、自分の席に座っていた私の方に近づいてくる。

「奈緒、ちょっと待った」

 優介が言いながら、奈緒に近づき立ち止まる。
 奈緒は立ち止まり、優介の方を向くと「なに?」

「今日は俺に譲ってくれないか?」
「え? バイトは?」
「今日は休んだ」

 休んだ?

「へぇー……仕方ないな。譲ってあげる」
「ありがとう。その代わりといっちゃ何だが、良太を貸してあげよう」
「は?」
「帰る方向、同じだろ? 今日は部活休みたいで、一人じゃ寂しいだろうし帰ってやってくれないか?」

 奈緒は頬を右手の人差し指でポリポリと掻くと「別に良いけど……」

「サンキュー」

 奈緒はトボトボと良太君の方へと歩いていく。

「良太君、一緒に帰ろうぜ」
 と、奈緒が声を掛けると、良太君は慌てた様子で振り返った。

「え、な、何で?」

 テンパっている様子が初々しくて、可愛らしく思える。

「何でって、優介君が帰ってあげてって言うから」

 奈緒、そこはハッキリ言う所ではないぞ。
 ――まぁ、照れ隠しもあるのだろうけど。
 良太君がジィーッと優介の方を見つめている。

 おーおー睨んでる、睨んでる。
 優介は堪らず視線を逸らし、私の方を向くと「さて、美穂。帰るぞ」

「はいはい」
 
 私は席から立ち上がると、肩にバックを掛け「奈緒、良太君。バイバイ」
 と、手を振った。
 二人も笑顔で手を振り返してくれる。

「またね」

 私と優介は歩き出し廊下へと向かう。
 奈緒、完全に男性不信にならなくて良かった。
 良太君と優介とのやり取りを見て少し安心する。

「――ところで優介。何でバイト休んだの?」
「秘密! 今日は公園に寄り道して行こうぜ」
「秘密って何よ、気になるじゃない。まぁ公園ぐらい暇だから付き合うけどさ」
「えへへ」

 転校の事かな?
 でも今の明るい感じからして、その話じゃない気がする。

 私達は玄関を出て、自転車置き場に向かうと、自分の自転車に乗り、告白したした公園へと向かった――。

 公園に着くと、自転車置き場に自転車を止める。
 すでに桜は見ごろを終え、散り始めていた。
 周りでは子供達の元気な遊び声が響き渡っている。

「美穂。ジュース買ってくるから、先に奥のベンチに座って待っていて」
「分かった」
「オレンジで良いだろ?」
「うん、大丈夫」
「それじゃ、行ってくる」
「いってらっしゃい」

 私は自動販売機の方へと向かう優介を見送ると、ベンチへと向かう――。

「よいしょ」

 言われた通り奥のペンキの剥げた古いベンチに来ると、腰掛ける。
 スカートのポケットからピンクの折り畳みの財布を取り出し、小銭を取り出すと、財布をまたスカートのポケットに戻した。
 
 何もすることがなく、とりあえず青空を見上げる。
 まだかな……。
 数分待っていると、優介が缶ジュースを持って、トボトボ歩いてくる――。

「お待たせ」
 と、優介は私の前に立ち止まるとオレンジジュースを差し出した。
 私は受け取りベンチに置くと、優介にお金を差し出して「はい、お金」

「いらないよ」
「いいの?」
「うん」
「ありがとう」
 
 私がスカートから財布を取り出していると、優介がスッと隣に座る。
 お金をしまいながら「ねぇ、何でバイトを休んだの?」

 優介は苦笑いと浮かべながら「せっかちだな」
 と、言ってジュースの蓋を開けた。
 私は財布をスカートにしまいながら「だって気になっちゃって」

「のんびりしようぜ。時間あるだろ?」
「あるよ」
「じゃあさ、こういう時間も大切にしようぜ」
「うん……」
 と、私は返事をしてジュースの蓋を開ける。

 こういう時間か……ただ単に二人でのんびり過ごす時間を大切にしたいって意味だろうけど、何だろ。
 転校するかもって知っているからか、その言葉が胸へと深く突き刺さる。
 
 優介がゆっくりオレンジジュースを飲み始める。
 私も仕方がないので、ジュースを飲み始めた――。

 数分が経ち、優介は缶をベンチに置くが、黙ったまま一点を見据えているだけで、それ以上は動かない。
 優介はいま、何を考えているのだろ?
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