花と外道

お千葉ちゃん

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蜘蛛の糸

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 栞が浩介と愛人契約を結んでから既に数ヶ月が経っていた。あれから栞は3日と空けずに浩介の部屋へと呼び込まれ、その若く美しい身体を明け渡していた。その為暁斗の病室へ通う頻度は少なくなってしまい、真樹からも無理な仕事をしているんじゃないかと心配をされたが、栞は精一杯の笑顔で真樹に「大丈夫です!割の良いバイトを紹介して貰ったんです」と言って受け流し続けた。
 暁斗の入院費用の為に上司と愛人契約を結んだなんて事が真樹にバレれば、きっと彼女は深く絶望して栞を拒むだろう。それだけは避けたかった。
 浩介は栞が要求する金額を事も無げに用意してくれた。最初は月に100万程渡してやると言われたが、流石に栞の方が気が引けてしまい、話し合いの末、一度行為に応じるごとに5万貰うという話で片がついた。それでも栞にとっては大金だったが、浩介は「もっと必要ならいつでも言いなよ」と憎らしい程男前な顔で笑って言った。





 栞は暁斗とあまりセックスをしたことがなかった。暁斗は穏やかで優しい性格をしており友人も多かったので、週末になれば野球やら釣りやらとよく出掛けていた。もちろん栞の為の時間もたくさん作ってくれて、よく二人で温泉旅行に行った。セックスをしたのはそういった非日常の夜ぐらいだったが、それでも栞は特に気にしたことは無かった。栞自身も普段の暁斗との恋人生活の中で欲求不満になることは無かったので、淡白なタイプなんだろうな、ぐらいの気持ちだった。暁斗とのセックスで絶頂したことは無く、ただ恋人としていつもより深いスキンシップをしている感覚で、それでも甦る記憶は繋がって笑い合っている幸せな時間ばかりだった。

 栞は暁斗との穏やかで優しいセックスを、あの獣の様な男に塗り替えられていくことが怖かった。
 骨が軋む程強く腰を掴まれ、何度も何度も子宮の入り口まで突き込まれる恐怖と絶望とあり得ない程の快感。
 どれだけゆるしてと泣いても聞き入れられず、乱暴な言葉で責められながら激しく犯されるやり方を最初は嫌悪していたが、何故かいつも身体は反応して男を迎え入れる様に濡れてしまうのだ。
 そんな自分を栞は受け入れる事が出来ず、抱かれるのはお金の為なのだと自分に言い聞かせていた。


 その日も栞は夜勤の仕事終わり、浩介から部屋へ来る様に声を掛けられた。けれども朝に暁斗の事で話したい事があると真樹から連絡があり、浩介の誘いを一度断った。そうすると、何故か浩介は不機嫌そうな表情でいつもよりしつこく栞に迫った。最近はセックスの最中以外は強引な態度を取られる事も少なかったので、栞は思わず逃げ腰になったが、避けた分だけ浩介に間合いを詰められた。
 このままだと最初の時の様に適当な部屋に連れ込まれ無理矢理抱かれてしまいそうだと思い、迫る浩介の胸を軽く押しやると咄嗟に妥協案を提示した。

「ごめんなさい、今日は本当に約束があって無理なんです。その代わり、時間はあまりないんですが、よければ舐めさせて下さい…」
「…は?栞ちゃんフェラとか出来るの?」
「出来るだけがんばります、だからそれで許して下さい」
「…わかったよ。それじゃ適当な部屋でやっちゃおう。この時間なら人もいないし」

 栞の提案に浩介は少し悩んでから了解した。栞と愛人契約を結んでからしばらく経っていたが、自身を舐めさせたことは無かった。一度だけ行為中に要求してみたが、栞があまりにも嫌がるので噛まれたらごめんだと思い直し諦めるしかなかった。それが、今日はやむを得ないとはいえ栞の方から申し出てきたのだ。最後まで出来ないのは不満ではあるが、栞から口淫のご奉仕をして貰えるのだからその案に乗ってやることにした。
 
(約束なんて、どうせ彼氏に会いにでも行くんだろう。そいつも不幸な男だとは思うが、俺からしたら羨ましい限りだな)

 浩介はいつまでも栞の心を支配している男に激しく嫉妬していた。何度二人で食事をしても、何度激しく抱いても、栞の瞳は浩介を映すことは無く、いつも拒絶の色をはっきりと示していた。
 浩介は自他共に認める美丈夫であったし、更に実家も裕福であり将来も約束されている。もともと学生時代からも女性から拒まれることはなかったので、栞に対しても最初から強引に迫り過ぎたという後悔はある。その時点で栞からは嫌いな上司だという烙印を押されてしまったのかもしれない。
 初めはただ美しい栞をモノにしたいと言うだけで口説きにかかっていたが、話せば話すほど彼女の容姿以上に清廉な内面に興味が湧いて、もっと話したい、好かれたいと思う様になっていった。
 それでもこちらから心の距離を縮めようとすればするほど栞からは距離を取るように逃げられた。
 それでもしつこく彼女を食事に誘っていた夜に「恋人がいるのでお食事には行けません」とはっきり断られた時、自分でも驚くほどに傷ついてしまった。その時にようやく、浩介は栞に本気で恋をしていると気付いてしまった。遊びのつもりで軽く声を掛け、印象を悪くしてしまった自分を呪った。それからは何度も栞の事は諦めようとしたが、同じ職場故にいつも彼女の存在を気に掛けてしまってどうしようも無かった。
 透き通る様に白い肌、垂れ目がちの大きな瞳に、少しぽってりとした柔らかそうな唇。どれを取っても栞の造形は浩介を惹き付けて止まなかった。

(あのさらさらと靡く細い髪に触れてみたい、折れそうに細い腰を抱き寄せてみたい)

 栞が側にいることが辛かった。ここまで一人の女性に執着してしまう自分がいたことに、浩介自身も驚いていた。
 そして浩介は、押さえきれない想いを一人で消化しきれずに、職場の上司という立場を利用して栞のプライベートについて調べ始めた。そして、彼女の恋人が事故に合い今も入院中で恐らく寝たきりであること、彼女が恋人の見舞いと仕事に明け暮れて疲弊していること、恋人の入院費用がかさみ金銭的に緊迫していることを知った。
 どうにか助けてやりたいと思った。彼女に頼れる家族がいないことも調べていたし、第一彼女の真面目な性格からして誰にも愚痴を言ったり助けを求めたりはしていないだろう。だとしても、美しい彼女がこのまま擦りきれていくのをただ見ていたくはなかった。
 そしてあの日の朝、夜勤終わりの彼女の小さな後ろ姿を見つけ、つい後を追ってしまった。

(ただ彼女に金銭の援助を申し出たいだけだったのに、どうしてあんな事をしてしまったのだろう…)

 浩介の栞に対する歪んだ愛情と欲望は、最も最低な形で昇華されてしまった。もう後戻りなど出来ないことは浩介もわかっていた。

(どれだけ後悔しても、栞が俺に振り向くことは絶対にない)

 そして、二人は愛人契約を結んだ。






 部屋に入ると、浩介はベッドに腰掛けて後を追って立ち尽くす栞を見つめた。行為の始まりはいつも浩介の方から手を伸ばされていたので、栞は動きを見せない浩介に戸惑いを隠せないでいた。

「…何してるの?フェラしてくれるんじゃないの?時間ないんでしょ、さっさとして」
「…っ!ごめんなさい。私、したことなくて、どうしたらいいですか?」
「はあ?自分で考えて動けよ。今日は手出ししないから栞ちゃんに任すわ。知ってると思うけど俺けっこう遅漏だし、早くしないと栞ちゃんが困るんじゃない?」

 浩介に嘲笑う様に吐き捨てられて、栞の瞳はどんどん涙の膜を張っていく。その時、栞はポケットに入れていたスマホが震えたのを感じた。

(きっとお義母さんからだ…。早く行かなきゃまた心配させてしまう。やるしかない)

 栞はベッドに近付くと、浩介の開いた両足の間に身体を入れた。そして震える手で浩介のベルトに手をかけると、慣れない手つきでカチャカチャと外した。

「…すいません、ズボンとパンツを下ろしたいんで腰を上げて貰えますか?」
「全部下ろすの?まあいいけど…」

 浩介は栞の良いようにさせてやることにした。腰を少し浮かせてやると、その小さく可愛らしい顔を真っ赤に染め、たどたどしい指先で浩介の下着をズボンごと掴んで少しずつ下げていく。浩介のまだ兆していないモノが露になると、栞はますます混乱した表情で浩介に助けを求める様に上目遣いを寄越してきたが、浩介は口端をあげるだけにとどまり無言でいなしてやった。
 浩介がまるで動く気配がないことを悟り、栞は仕方なくまだ柔らかい陰茎にそっと両手を伸ばすと、その細く柔らかい指先で包み込み、ゆるゆるとしごき始めた。浩介の太ももがピクっと反応したが、栞にはそれが正解なのかどうかも分からぬまま続けるしかなかった。そのまま少し続けていると、浩介の息遣いが少し荒くなっているのを感じ、さらに強弱をつけて揉みこむとどんどん手の中のモノが硬く大きく成長していくのを感じた。
 ちらりと浩介の顔を伺ってみると、形の良い眉を歪め、軽く歯を食いしばり、何かに耐える様に栞を凝視していた。栞が視線を上げたことで、浩介と目線が合ってしまった。
 すると、浩介はすっと右手を伸ばし栞の頭から顎のラインにかけてするりと撫で上げた。さも愛しいと言わんばかりに、熱のこもった掌と瞳で。
  栞は浩介のその優しげな表情を見た途端、頬がカッと熱くなるのを感じ、 急いでうつむき、陰茎をしごく手つきを少し強めた。するとその先端から先走りがとろとろと溢れて来て、栞はそれを指先で弄びながら大きく張り出したカリの部分にぬるぬると塗り付けた。
 男の下半身など明るい場所では見たことなど無かった栞にとって、最初は恐怖と戸惑いしか無かった行為だったが、浩介の色っぽい表情とわずかに漏れる吐息、声、掌の大きくなる肉棒の熱さ、全てに興奮し始めていた。浩介に抱かれる時はいつも好き勝手に凌辱されて終わることが多く、そんな男を今は栞が気持ち良くさせているという事実に優越感を感じることが出来た。そうして栞が夢中になって手を動かしていると、掌から大きくはみ出るまでに成長した肉棒が一際ビクリと跳ねた。

「…っ!は…っ、く、そろそろ舐めてよ」
「…あ、はい、…、…うぅ、む、あむ、ふっ」

 浩介に頭を撫でながら促され、栞はまた少しずつ体温が上がっていくのを自覚しながら、まず肉棒の先端に舌を尖らせてぬるりと這わせると、初体験の何とも言えない少ししょっぱい様な味に戸惑いながらも口内へゆっくりと招き入れた。

「…はあ、っ、熱いね。栞の口のなか」
「んむっ、…ちゅっ、んん、はぁっ、あっ」

 あれだけ毛嫌いしていた男の筈なのに、栞はその肉棒へと一心不乱に、まるで蛇の様に舐め上げ舌を這わせていた。しばらく続けていると、浩介が我慢出来ないといった様に少しずつ腰を使い出し、栞の狭い喉奥を突いた。苦しくてえずきそうになるのを何とか堪えながら、栞自身もじわりと蜜が溢れてくるのを感じ、我慢出来ずに腰をくねらせ始めた。

「…っはは、栞ちゃん、やっぱりドMだよね。イラマされるの気持ちいい?」
「うむっ、はぁ、あぶっ、やっ、ちがっ…!」
「腰、揺れてるけど?」

 浩介はにやりと笑い、栞の頭を掴むと更に激しく腰を動かした。行為のラストスパートの時、いつも栞の子宮を突き回すのと同じ腰つきだった。狭く締められた喉奥を抉じ開ける様に肉棒を押し込まれ、栞は余りの苦しさに涙目になりながらもがいたが、許されることは無かった。何度もえずきながらそれでも歯を立てない様に必死だった。軽い酸欠状態で目を白黒させていると、ついに肉棒の先端が大きく膨らんだ気がした。

「…っ、は、出すぞ、全部飲んで」
「んぶっ、はっ、ぶ、ぐ、っん、…んぅ、ごく、はあ、あ、」
「…まだ出る、吸い出せ、おら」
「はい、あむ、ん、んっ」

 栞は浩介に言われるがまま、口内に出された青臭い精液を数回に分けてなんとか飲み下した。そして先端を咥えたまま尿道に残ったものも全て吸い上げた。
 お互いにしばらくは息を整えていたが、先に動いたのは浩介だった。
 身なりを整えた後、まだ熱に浮かされた様にぼんやり座り込む栞を見て、ハンカチを出して優しく口元を拭ってやった。栞は一瞬驚いたように身を引こうとしたが、浩介と目が合うと、小さく「ありがとうございます」呟いた。

「いやいや、こちらこそありがとう。急いでるんでしょ?行っていいよ」
「…え?」
「用事あるんじゃないの?」
「あ、はい。行きます。ごめんなさい!」

 栞は浩介に促されやっと思い出した様にばっと立ち上がろうとした。その瞬間、膝からガクンっと崩れ落ち、目の前にいた浩介の胸へと倒れ込んだ。

「おっと!大丈夫?」
「…っ!大丈夫です、ごめんなさい!」

 浩介は栞の身体を腕で支える様に離そうとしたが、その時近くで見上げて来た栞の瞳が、興奮に潤んでいることに気付いてしまった。思わずするりと作務衣から覗く首もとを撫でてやると、その身体は小さく震え、火照ったように熱かった。

「ああ、俺だけ気持ちよくなっちゃってごめん。ちゃんとイかせてやるから」
「…っ!いいです、ちがうんです…っ!」
「大丈夫、暴れんな」
「っ、あっ、やぁっ!ぅ、あっ、あっ!」






「こんなえっろい身体しやがって、ああ?どうせおまんこぐちょぐちょにしてんだろが」

 浩介は栞の色素の薄いピンク色の乳首を両手の親指と人差し指で乱暴に摘まむと、ぐにゅぐにゅと形が変わるほどに引っ張った。

「っあ、ああ…いや、」
「なにが嫌って?こんなエロいおっぱいして男誘いやがって。おら!ここ乱暴にされるの好きだろ?」
「ぁあ、はぁ…やめて、もうゆるして…」
「許すかよ」
「はぁあ、あぅぅ、んっ、んっ、それ、いやぁ!!」

 栞は懸命に頭を降って身を捩るが、浩介に腰の上に乗られているため全く逃げが効かない。か弱い細腕の抵抗もみっしりと筋肉の浩介のたくましい腕の前では無力だった。

「はぅ、ああ…もう、もう。ちくび、やめてよぉ…」
「あ?お前も好きだろうが。ああ、やわらけー。もう、まんこも突きまくりてぇな…」
「あ、あぅ、今日はだめ!ゆるして…」
「あー、うるせぇな。わかったよ、くそ!」
「や、あぁ…はぅう」

 牛の乳絞りでもするように両方の乳首をきゅっと摘まむとその限界まで引っ張りながら捏ねまくる。何日と空けずに弄んでいるせいなのか、もともと張りのあった栞の乳房は更に豊満になった様で、左右、上下へといやらしくたぷたぷと揺れている。

「なあ栞、愛してる。めちゃくちゃ好きだ。頼むから。金ならいくらでも渡すから」
「あん、あっあっ、いや、やだやぁ…わたし、むりなんです」
「…頼む。栞。好きなんだ。すき、すき、かわいい」

 浩介は切なげに眉を寄せると、身体を倒して栞の中心へと身体を割り込ませ、硬い膨らみを栞の作務衣のズボンへと擦り付ける。そして栞の赤く染まった耳へと唇を寄せた。

「栞を抱けなくなった男より、俺を選んでよ」
「………!!最低ね!や、いやぁ!お金いらないからもう離してよぉ!!!」
「わ、ちょっと、待って!暴れんな!」

 浩介の言葉に憤慨した栞は全身の力を振り絞って暴れ、浩介の下から抜け出そうともがいた。大きな瞳に涙が滲んでいるのを見て、浩介はついに栞を押さえつけていた力を緩めて栞を解放した。
 栞は大きくはだけられた作務衣の胸元を直しながら浩介を睨み付けた。

「何であんなひどいことが言えるの。この人でなし。最低よ!暁斗のことは関係ない。あなたという人間が、私は大嫌い!!」
「知ってるよそんなの。口滑らせただけだよ、悪かった」

 栞は返事をせず、振り返ることもなく部屋を出て行こうとしている。勢いでその細い肩を掴み、用意していた金の入った封筒を右手に握らせた。

「今日の分貰わず帰ったらもったいだろ。せっかく今日も身体張ったんだから」
「…いりません」
「いらないことないでしょ。お金。もう余計なこと言わないから、明日もよろしく」

 浩介の説得に栞は少しだけ頭を下げ、しかし無言を貫いたまま浩介に一瞥をくれることもなく今度こそ部屋から出ていった。

  浩介は遠ざかる小さな背中を見送りながら、聞こえないように唇だけで好きだと鳴いた。

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