異世界陸軍活動記

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隊員達の会話

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「ケンタクン久しぶり」

「よお」

 2週間もの休暇を貰い、心も体もリフレッシュした『ケントゥアルクゥ・アルカシャーツ』ことケンタクンは、少し早いと思ったが軍本部へと来ていた。
 だが自分が一番という訳ではないようで、同じ部隊に所属しているコトン・ラティウスが既に来ていた。
 その隣には彼女の召喚獣であるデュラハンがいる、そのデュラハンは今日は珍しく2体共出て来ている。
 いつもは人型のデュラ子だけしか出て来てないのだが、今日は馬の方のハン子も一緒に出てきていた

「早かったなー、隊長とレンダルももう来ているのか?」

「ハヤトとは一緒に来たし、今は次の任務にの事で聞きに行ってるよ。レンダルはまだ来てないみたい」

 ケンタクンが所属する部隊『竜騎士隊』は分隊でありながらも、どこの部隊の下にも付かない独立した特殊な部隊であった。
 任務の内容によっては下に付く場合もあるが、隊長であるハヤトの隊長としての能力もあり、他の部隊を率いて任務をこなす事の方が多かった。
 独立した部隊であるが故に、報告や連絡などでハヤトが直接出向く必要があった。出発の時間に合わせるためにハヤトは早く出て来て任務の内容を聞きに来ているのだろう、とケンタクンは思った
 
 そしてもう一つ今コトンが少し気になる事を言っていた

「一緒に来たって、どっかで待ち合わせしてたのか?」

 コトンはうんうんと首を横に振り
「私達同棲してるから」

「!? えっ! マジか!? もうそんな事になってるのか!?」

 隊長であるハヤトは、ケンタクンから見たら少しだけコトンと距離を取っているように見えた。コトンはハヤトと結婚を約束したと言ってはいたものの、肝心のハヤトがどう見てもそんな事言って無い風だったので少し心配だったのだが、どうやらそれは杞憂であったようだ

「そうか‥‥うん」

 コトンのハヤトに対する気持ちを知っており、そしてハヤトが生きていたと聞いた時の泣き崩れたコトンオ姿を知っていたケンタクンは、二人がどうやらうまくいっているようで安心した。
 あと、嬉しくてちょっとだけ涙が流れそうになった

「なにが同棲だって?」
 とそこへ丁度もう1人の竜騎士隊の1人であるレンダルがやってきた

「おはよう」

「よう」

「うん、おはよう。それで同棲ってのは?」

「それがさ、隊長とコトンがついに同棲を始めたってさ」

 ケンタクンが説明するとコトンはニコニコと笑顔を浮かべる

「そ、そうか‥‥ついに一緒に住み始めたのか」

 ケンタクンから二人の仲を聞いていたレンダルは、心底ほっとしたような表情を浮かべる。
 というのもこのレンダルの兄であるライカ・ダーモンが影響していた

 レンダルの兄であるライカは、『破壊の一族』であるサコナ・ソルセリーと結婚した。
 約4年前、大陸深部を抜けハルツールを目指そうとしている仲間を救うため、ハルツールは竜翼機を飛ばしまだ横断している味方を捜索した。
 その時、最後に救出されたのがハヤト隊であったライカ・ダーモンとサコナ・ソルセリーそしてタバルダイアの3人だった。
 竜翼機が発見した際、3人共満身創痍の状態であり、その中でソルセリーとタバルの体の負傷が大きく、歩く事も困難な状態の中、その二人を両脇に抱えるようにハルツールを目指していた兄のライカ。
 右手にはハヤトから預かったとされる折れた刀を握り締め、ハヤトの最後の命令を見事に果たした

 その一年後兄のライカとソルセリーは結婚する事となる。
 結婚する際、ライカはソルセリーを実家に連れて来た。その時レンダルもそこに居たのだがソルセリーを最初に見た時、世の中にはこんなにも綺麗な人がいるのかと驚いたものだった。
 『破壊の一族』のサコナ・ソルセリーはかなり見た目が美しいとは聞いていたが、これほどとは思っていなかった。
 その美しさにレンダルは少しの間見惚れてしまったほどだった
 
 ライカはソルセリー家の婿に入る事になるが、例え婿又は嫁として家に入ったとしても、ソルセリーの家名は名乗る事が許されないので兄のライカは『ライカ・ソルセリー』ではなく今と変わらず『ライカ・ダーモン』のままとなる

 そしてその二人をレンダルは祝福した


 だが、その3年後、死んだはずのウエタケ・ハヤトが生きて帰ってきたと聞く事になる

 レンダルはハヤトに憧れ軍を目指したため、ハヤトの帰還を心から喜び興奮した
 
 だが‥‥同時にハヤトとソルセリーの関係もよく耳にしていた。
 血を残さなければならないソルセリーはどうやら自分の隊長であるウエタケ・ハヤトと一緒になるらしいと‥‥。
 一緒に居る所をよく見るし、仲よさげに話をしていると噂で聞いたことがある、結婚するのは時間の問題とも兵士達の間では噂になっていた

 だからこそ、ハヤトが帰ってきたと聞いた時には嬉しさと同時に不安を抱えていた。兄夫婦の間に何か問題が起こるのではないのだろうか‥‥と。
 考えすぎかもしれないがもしかしたらと不安になっていたレンダルだったが、そんな時にケンタクンからハヤトとコトンの関係を知る事となる。
 どうやら二人は将来を誓い合った仲で、その内一緒になるだろうと‥‥

 しかし、どう見てもハヤトのコトンに対する態度が少しだけ素っ気ない感じがしたので、不安が少しだけ顔を覗かせていた。
 だが既に同棲していると聞きレンダルは安心する事が出来た。どうやらハヤトの素っ気ない態度も、多分照れ隠しとかだろうとレンダルは思った


 3人共笑顔でいる中、少し離れた場所にいたデュラ子は

「あれを同棲と言い張るのか‥‥」

 周りと考え方が少し違う自身の主に、少しだけ呆れと不安を抱えていた
 
 


 ◆◇◆




 ハルツールで無敵の部隊と言われたリクレク中隊、今は大隊となり現在ロメ奪還のに当たっている。その最強のリクレク大隊の隊長を任されているオーバ・パイルプスはちょっとした悩みを抱えていた

 リクレク大隊は部隊の中に4つの中隊があり、更に各中隊の下には更に4つの小隊で構成されそれがメインの部隊となっている。その他にも斥候や衛生、補給などの分隊も含まれていた

 その中で、クイック中隊長が率いる第一中隊所属でガイド小隊長が率いる第二小隊、その先頭を務める人物。
 過去にリクレク中隊時にオーバが務めていたその場所を受け持つ1人の兵士、その兵士の事が気がかりだった

 かつて自分が勤めていたポジションだから気になっているという訳ではなく、前部隊で同じ部隊に所属しているからという事で気になっていた

 その兵士の名はライカ・ダーモン。
 同じハヤト隊に所属し、大陸深部を通過の際にはハヤトからソルセリーを頼むと言われ、オーバはそれを果たすことが出来なかったが、ライカは見事それを成し遂げた。
 剣技の才能が凄まじく、剣技だけだったらこの世界に彼に勝てる者はいないだろうと思わせるほどの天才であった。
 彼が大陸深部で発見された時は、動けなくなっていたソルセリーとタバルを抱え、ハヤトから譲り受けた刀『雷雲』を握り締めていた。
 最初竜翼機で救助にやって来た兵士達の事が分からず、兵士達に向けて刀を構えたという。魔物と人の違いが分からぬほど限界まで追い込まれギリギリの所で戦っていた。
 そのライカをオーバは高く評価しており、リクレクの隊長になった際にはライカを第二小隊の先頭に指名した

 そのライカだが、死んだとされ葬儀も開かれたウエタケ・ハヤトがハルツールに帰還した時から心が不安定になっていた。
 ハヤトが生きていたと知らされた時、誰もがその帰還を喜んだ。ライカも喜んでいたしオーバもそうだった。
 それをロメ攻略中に聞いたオーバは
「あの人が簡単に死ぬわけないだろう」
 と周りにいた兵士達に言った。あまり笑わないオーバだったがその時ばかりはその顔に笑顔を浮かべうっすらと目尻に涙を溜めた程だった。
 それはライカも同じであり、力が抜けたように大きな息を一つ吐いた後かれは笑顔になった

 だが問題はその後の事‥‥

 リクレク大隊は中隊規模で休暇を取る事となり、ラカイも休暇の為にソルセリーの待つ家に戻る事となる。
 ライカはソルセリー家に婿として入っている為、帰るのは当然ソルセリーの家になるがその際ソルセリー家で働く年配のお手伝いさんから━━

「良かったですねぇー、前の隊長様が生きておられて」

「はい、立派な隊長でしたし尊敬できる考え方を持つ人でしたから、自分もそうですがあの人とかかわりの合った兵士達は全員喜んでました」

「そうでしょう、私も前の隊長様がいらした時に随分立派な受け答えをする方だと思ってまして、帰るときにお菓子を一杯持たせたんです、今となっては良い思い出ですが」

「‥‥前にこの家に来たことがあるんですか?」
 ライカにしてみれはそれは初耳だった

「はい、サコナ奥様と出かける為に一度訪れられて━━」

「そ、そうですか」

「そう言えば奥様は生きておられたと聞いた時、前の隊長様から頂いた防具を抱きかかえて静かに涙しておられまし━━あっ、す、すみません」
 
 そこまで言って余計な事を言ってしまったと気づいたお手伝いさんは、そそくさとその場から離れていった

「‥‥はぁ」
 と力なく返事するライカがその場に取り残される

 それ以来、ライカは妻がまだハヤトに未練があるのではないか? 自分は捨てられるのではないかと毎日不安になっていた。
 同時に形的にはハヤトから女性を奪った事になるので、何かしらの報復をハヤトから受けるのではないのだろうかと思っているらしい

 その事についてオーバはライカから相談を受けた事もあった。
 最初は妻であるソルセリーに捨てられるのではないだろうか? だったが、ハヤトがロメ攻略の為にこちらに来ると聞いてからは、何かしらの報復を受けるのでは? と相談されるようになった。
 特にこちらに来ると聞いてから怯えているようにも見えた。そんなライカに対しオーバは

「ハヤト隊長に限ってそれはないだろう」

「その根拠は‥‥」

「隊長には今タクティアの姪の、あの━━」

「コトン」

「そう、そのコトンが側に居るらしいし、『生━━、そっちと上手くやってるんじゃないか? 顔もそこそこ可愛いし胸もデカいし、隊長もあの胸が体にくっつくと急に静かになるだろう?」

 オーバは途中『生命の契約』が過ぎているおばさんなんかよりも、若い女の方がいいだろうと言いそうになったが、何とか踏みとどまった。その夫の前でいう事では無いと

「そうですか‥‥」
 まだ納得せず不安なライカ

「そんなに考え込むな、任務にも影響が出るぞ」

 後は本人が来てからではないとどうしようもないと考えたオーバだった


 そしてその日はやってくる
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