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故郷への帰還 ②
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「見張りご苦労様です」
全身黒ずくめの鎧を身に着け、野営場所の外に視線を送るその人型の召喚獣。左手には自信の首を持ち右手に持つ大剣は地に刺し立っていた。
後ろから話しかけたので左手に持つ顔までは見えない、北の方角を注視したまま微動だにしないその召喚獣の表情はどのようなもだろう、もし正面から話しかけたとしても重装甲用のアタッチメントを付けている為、どちらにしろ表情もその心情も伺い知れない
「‥‥‥」
「深部の魔物も夜になると大人しくなるんですね、ここ一カ月でそれを学びましたよ、でも昨日の夜は散々でしたが」
「‥‥‥」
うーん‥‥無視ですか、以前のデュラ子だったら返事してくれたんですが
デュラハンの片割れであるデュラ子は、話しかけられたら誰にでも分け隔てなく接していた。とは言っても首が離れてその首を脇に抱えている異様な姿は人々に恐怖を覚えさせるため、話しかける人はごく少数である。
召喚主のウエタケ・ハヤト以外でよくデュラ子に話しかけていたのは、タクティアとエクレールであった。
タクティアはよくハヤトと一緒に食事をしていたため、その度に出てくるデュラ子ともよく会話をし、仲は良いはずだった
どうしましょうか? やっぱり怒っているんでしょうね私の事を。ハヤト隊長に死んでくれと言った時、もちろんその中に居たんでしょうから聞いていないはずが無いですよね
一向に話をしてくれないデュラ子に対し、それなら‥‥とこっちも無言で後ろに佇む、ハヤトの召喚獣はどれもハヤトに性格が似ている。
だからこのまま後ろで待っていれば━━
「‥‥‥軍師殿も休まれた方がいい」
しばし間が開き、短いため息を付いた後、デュラ子はようやく口を開いてくれた
やっぱりね
「そうしたいのですが、こちらもやる事が色々ありまして」
「そうか、なら早く済ませて休むがよい、私も見張りがあるからな」
召喚主であるハヤトもやりたくない仕事があった時、よく駄々をこねる時が多々あったが、それでもタクティアが笑顔で黙っていると渋々了承してくれていた。
そのあたりは契約した召喚主にそっくりだった
「ええ、ですので直ぐに済ませたいと思います。それで‥‥‥ハヤト隊長は今どこですか?」
「‥‥私は知らない」
デュラハンがいるという事は、召喚主であるハヤトが居て当たり前。だがしかしデュラハンが現れてからもその姿は見当たらなかった。
本当に来てくれたのか? と思ったが、それはまずありえないと考える。もし生きていたとしてもハルツール軍がマシェルモビア側の緩衝地帯を抜けるまで一月掛かっている。ハヤトが生きて逃げたとしてもそれなら自分達が今ここにいる理由が分からない。
緩衝地帯にいる200万のマシェルモビア兵にもう囲まれていただろう。
ハヤトが死んでいるから自分達はここにいるのだ。なのにデュラハンはここに現れた
それに今のデュラハンは━━
「そうですか‥‥‥、コトン‥‥コトンが召喚獣を呼び出せないと言っているのですが、心当たりはありませんか?」
「‥‥‥そこまで聞いてくるという事は既に知っているのだろう軍師殿?」
「やはり‥‥」
「だから私は旧主がどうなったかを知らない」
姪のコトンは自身が契約を果たした召喚獣を一切呼び出せなくなっている、魔法は使えるのに召喚獣だけは呼び出せない。
同じような条件下にいる人物を私は知っている
『破壊の一族』サコナ・ソルセリー
太古の昔、女神によって直接魔法陣を体に埋め込まれたと言われている一族の末裔、最後の一人。この世界で唯一の魔法『消滅』を使える人物。
だが、それと引き換えにその他すべての魔法が契約出来ない体になっている
多分‥‥いや、間違いなくコトンがソルセリーと同じく、契約した召喚獣が呼び出せなくなったのは、あの時ハヤト隊長から貰った指輪が原因だろう。
要するに‥‥体に魔法陣をを埋め込まれた‥‥‥と
そんな事がただの人間に出来るものなのだろうか? グラースオルグという特異な存在を持っているにしても、女神にしか出来ないとされている魔法陣の設置。しかもそれを人の中に。
確かにあの時、デュラ子からコトンへと魔法陣が移動した。そしてその後コトンは召喚獣を呼び出せなくなったし、デュラ子はハヤト隊長の事を旧主、コトンの事を主と呼び出した
ハヤト隊長、本当にあなたはいったい‥‥‥
「最後に一ついいでしょうか?」
デュラ子は返事をしなかったがそのまま続ける
「ハヤト隊長は一体何ですか?」
「それは何者か? という質問だろうか、私が知るのは軍師殿と同じだ。この星とは別の星から来た人間、ただそれだけだ。‥‥‥もう遅い、軍師殿ももう休む事だ」
「そうですね、いい加減休む事とします。━━そうだ、コトンにはデュラハンがコトンの召喚獣になった事を言わないでおきましょう。契約した召喚獣も疲れているから呼び出せないだけだと説明しておきましょうか」
「それがいいだろう、私がこの場にいるという事を主は旧主がまだ生きていると思うだろう、ハルツールに戻るまでは旧主には伏せておこう。
戻ったら軍師殿の口から話すがいい、せいぜい自分の姪に嫌われる事だ」
「はは‥‥そうですね、私が言い出した事ですから、仕方ないですね‥‥それでは私は休むとします」
振り返り、休むためにテントに移動しようとした時
「私も軍師殿を恨んでいるぞ」
デュラ子からそう伝えられる、その後小さな声で
「最後まで主と共に戦いたかった‥‥‥」
その声を拾いながらテントに足を進める
自分の考えは間違っていたのだろうか? あの時ソルセリーを残すべきだったのだろうか? ハヤト隊長を残し、そしてソルセリーの方を生かすのは違っていたか?
『無事にソルセリーをハルツールに帰還させよ』
という最後の命令すら守れなかった
私は‥‥‥間違っていたのでしょうか?
風一つない夜、魔物を寄せ付けないために灯りを付けず、真っ暗な中に無数のテントが乱雑に立ててある。星明りを頼りに自分のテントに移動する
この足元の見ずらい夜道のように、私の心も不安という闇夜をさまよっている様だった。もし風の一つでも吹けばその心も少しは軽くなるだろうに
◆◇◆◇◆◇
大陸深部に入り11カ月が過ぎた
あの後、幸運にもあの巨大なワームに出会うことも無かったが、それでも他の魔物との戦いが続き、その度に兵士達が傷つき倒れていった。
強力な召喚獣であるデュラ子がいても尚、圧倒的な数には勝てず我々は158人まで数を減らした。その中で海軍兵は68人生存。
68人も海軍兵がいたので食料には今日まで困らなかった。食料は全て出発時に海軍兵に持たせており、人数以上の余裕があった為だった。
だがそれもいつまで続くかは分からない、夜に活動を止める魔物と合わせ夜に仮眠を取り、朝日が昇る前に出発する。そして昼は魔物と戦いながら進路を南へと急ぐ。
体力的に余裕があった場合は夜にも移動する事が度々あった
今日の夜に無事だった仲間も、もしかしたら明日の夜にはいなくなっているかもしれない、そう思いながらまるで希望が見えない、明日が見えない道なき道をひたすら歩く
ただ北に向かって‥‥‥
故郷に戻るという事すらもう誰の頭にも無いだろう。今日という日を早く終わらせたい、終わって欲しいとういただそれだけの考え
誰もが生きる希望を持てなくなっていた時
「どうしました? 何故止まったのでしょうか」
隊列の先頭が停止した為、後ろが次々と止まる事となった。どうやら停止したのはデュラハンの背に乗り先行していたコトンが帰ってきた事が原因らしいが‥‥‥
デュラハンとコトン、この召喚獣と召喚主は元々魔法陣を介して契約していないのが原因なのか、それとも、元々他人の召喚獣だったせいだろうか? どうやら繋がりが薄いらしくデュラハンはあまりコトンと離れると存在が希薄になる。
なのでデュラハンはコトンを無理やりハン子の背に乗せ移動や戦闘を行っていた。
最初コトンは背中が痛い、お尻が痛いと言っていたが、流石に長い事乗っていたせいか今では慣れてしまったようだった。
コトンにはとんだ災難だが、今この場で一番安全な場所としたらそれはデュラハンの側以外にない。私からしてみたら姪が危険な目に遭う確率が減るのはとても喜ばしいことだった
そのデュラハンと共にするコトンが召喚者の持つ杖を高く上げ大きく振るう。何か問題が‥‥と気を張るが━━
「抜けました! 深部を、大陸深部を抜けました!」
大きな声で叫んでいた
「「「 ━━━!!! 」」」
一斉に歓声が上がる
一生続くのではないかと思われた大陸深部横断、しかも大陸でもっとも強い魔物の生息する西側、その深部を11カ月掛け、11カ月も駆け抜け、遂に横断した━━
◆◇
それから半月、ハルツール側の緩衝地帯を抜け本国に戻る際に、要塞都市ヒューブスから魔物の間引きに出ていた部隊と合流する事が出来た。
不思議な事に、それまで全く機能していなかった通信装置だったが、合流したとたん通信可能になった
「あれ? 貴方はハヤトのトコの━━」
間引きをしていた部隊はジャック小隊であり、それは以前ハヤト小隊がまだ分隊であった時、ヒューブスに駐留していた事があった。その時からヒューブスにいた部隊であり、私とも面識があった
「お久しぶりですねジャック小隊長、申し訳ないのですが今のハルツールの状況を教えて欲しいのですが」
「あっ、はい了解しました。こっちもどうしてあなた達がここにいるのか不思議なのですが、‥‥何故海軍兵まで、━━っと、おい! 本部に連絡を入れろ」
ジャック小隊に自分達がいない間の状況を聞いたところ、どうやらこの作戦に参加したもの全てが行方不明とされていたらしく、陸軍海軍とも上層部は口を閉ざし、一般兵士は状況自体が掴めていなかったようだ。
マシェルモビア側からも何も音沙汰なく、謎の行方不明事件として処理されていたらしい。そもそも今作戦自体が秘密裏に行われていたため、上層部にもその事を知らされていない者がいる事だろう
私達が深部を通過して来た事をすぐさま軍本部に連絡される事になる、そしてまだ深部を通過中の兵士がいるかもしれないという事も
軍は直ぐにハルツールの緩衝地帯と深部のギリギリの場所、そこに中型の竜翼機で資材と人材を運び森を切り開いて基地を建設。そこに竜翼機を配置しまだ深部を通過中の兵士の捜索に当たった‥‥‥
◆◇◆
「さてと‥‥尻尾切りは誰にさせようかの」
ハルツール首相であるゴルジア・サト、は頭を悩ませていた。いや、悩んでいるふりをしていた。
ゴルジアにとっては些細な事である、誰にその責任を取らせるか、目の前の資料から最も必要としない者選ぶだけ
「クォーモリにしようかの‥‥目を掛けてやっていたのに最近は少し調子に乗っておるからの」
少しだけ人より頭の大きい軍人、ヴァンギエル族の血が入っているその軍人の写真を見て呟く
「よし、こいつじゃな、あとは‥‥これとこれ、それとこいつ」
写真が付いている資料を机の前に弾く、それをゴルジアの秘書が一枚一枚丁寧に机から拾った
ゴルジアは深く椅子に座り直し、そのまま椅子を回転させ外を見つめ━━
「消しておけ」
◆◇◆
月日は経ち
今日この日、ハルツールでは大きな葬儀が行われる事になる。
3万人以上が犠牲となった今作戦、情報がマシェルモビア側に筒抜けであり、作戦を実行した者達にはその責任が圧し掛かる、そしてその際に発覚したのがマシェルモビア側に情報を流した者達がいたという事だった。
出てくる出てくるその証拠や資料、情報を流した者達は全員逃亡を図ったため捕えようとしたが、捕えることが出来ないくらい暴れ、捕えようとした者を傷つけたため裁判に掛けることなくその場で処刑された。
その処刑された中には私と仲の良かった同僚の名もあった
余りにも多い命が奪われた今作戦、葬儀は国葬として扱われた。
死者が多すぎたのと、遺体が殆ど無いため棺ではなくプレートに彫られた名前だけがそこにあった。
3万人以上の名前が黒い大理石に彫られその場にあった
葬儀となった会場では至る所で泣く声が聞こえる、生き残った者総勢312人と、亡くなった者の親族など‥‥‥
その中には元ハヤト小隊の隊員達も数人含まれている、無事に生きて帰って来れた者達。竜翼機の空からの捜索でその生存が確認され救助され今ここにいる。
姪のコトンはその生き残ったハヤト小隊の隊員達と一緒に居るが、同じ小隊であった私はその中には入れなかった。
私がハヤト隊長を死地に追いやった事は小隊の皆が知っている。コトンはその事を知った時から私とは話をしなくなった。目も合わせようとしない
本当にこれでよかったのか‥‥私はやはり間違えたのでしょうか
何度も自問自答する、どこから間違いだったのかと
「どう思いますか‥‥ハヤト隊長」
私の目の先には数体しかない棺の中でひときわ高い場所にある二つの棺、その一つに向けられる
その内の一つには当人がいつも首に下げていたというペンダントが棺の上にあった。
海軍所属の竜翼機パイロット『バール・エリネル』
マシェルモビア側からこの葬儀に合わせるように送られてきた情報、そこには単機で我が国の旗艦に特攻しその後情報の伝達が出来ず作戦に大きく支障をきたす事となったと。
本来であればもっと多くのハルツールの船が沈んでいたとされていた。
その勇敢な行動に対しマシェルモビア海軍はかのパイロットに敬意を示すと
会話で国をまとめたハルツールと違い、マシェルモビアは武力により領土を広げた。彼らののやり方は敵国で有名な人物、もしくは強いとされた人物を捕えると拷問して殺し、見るに堪えない姿にして相手国に送り返す。
そうする事で我々に歯向かうとこうなると相手国の士気を落とすやり方をしていた。
だが武力で強くなった国故に、真に強きものには敬意を示し旗艦に特攻をしたバール・エリネルのように敬意を示す事がある。
もしそれが遺体だった場合、奇麗に処理を施され、まるで生きているかのような姿で棺に入れられ、更に棺の上にはマシェルモビアの国旗が掛けられた状態で送られてくる、ということが今までもあったとされている
そしてもう一つの棺の上には、ハヤト隊の隊員だったら誰もが見覚えのある大剣の剣先が置かれていた。マシェルモビア側からマシェルモビアの国旗を使い、奇麗に包装されて送られてきたそうだ。
そして
単騎でマシェルモビア6万の兵士と戦い、2万人以上の我が軍の兵士を討ち取った。その戦いぶりはまさに竜騎士だったと‥‥‥
マシェルモビア陸軍は勇猛果敢であったかの兵士に敬意を示す
ハヤト小隊隊長、『ウエタケ・ハヤト』の名がそこにあった
そしてこの日、ハルツール政府とハルツール軍双方から二人の功績を称え決められた事がある
ウエタケ・ハヤト
バール・エリネル
この両名に『竜騎士』の称号が正式に与えられる事となった
全身黒ずくめの鎧を身に着け、野営場所の外に視線を送るその人型の召喚獣。左手には自信の首を持ち右手に持つ大剣は地に刺し立っていた。
後ろから話しかけたので左手に持つ顔までは見えない、北の方角を注視したまま微動だにしないその召喚獣の表情はどのようなもだろう、もし正面から話しかけたとしても重装甲用のアタッチメントを付けている為、どちらにしろ表情もその心情も伺い知れない
「‥‥‥」
「深部の魔物も夜になると大人しくなるんですね、ここ一カ月でそれを学びましたよ、でも昨日の夜は散々でしたが」
「‥‥‥」
うーん‥‥無視ですか、以前のデュラ子だったら返事してくれたんですが
デュラハンの片割れであるデュラ子は、話しかけられたら誰にでも分け隔てなく接していた。とは言っても首が離れてその首を脇に抱えている異様な姿は人々に恐怖を覚えさせるため、話しかける人はごく少数である。
召喚主のウエタケ・ハヤト以外でよくデュラ子に話しかけていたのは、タクティアとエクレールであった。
タクティアはよくハヤトと一緒に食事をしていたため、その度に出てくるデュラ子ともよく会話をし、仲は良いはずだった
どうしましょうか? やっぱり怒っているんでしょうね私の事を。ハヤト隊長に死んでくれと言った時、もちろんその中に居たんでしょうから聞いていないはずが無いですよね
一向に話をしてくれないデュラ子に対し、それなら‥‥とこっちも無言で後ろに佇む、ハヤトの召喚獣はどれもハヤトに性格が似ている。
だからこのまま後ろで待っていれば━━
「‥‥‥軍師殿も休まれた方がいい」
しばし間が開き、短いため息を付いた後、デュラ子はようやく口を開いてくれた
やっぱりね
「そうしたいのですが、こちらもやる事が色々ありまして」
「そうか、なら早く済ませて休むがよい、私も見張りがあるからな」
召喚主であるハヤトもやりたくない仕事があった時、よく駄々をこねる時が多々あったが、それでもタクティアが笑顔で黙っていると渋々了承してくれていた。
そのあたりは契約した召喚主にそっくりだった
「ええ、ですので直ぐに済ませたいと思います。それで‥‥‥ハヤト隊長は今どこですか?」
「‥‥私は知らない」
デュラハンがいるという事は、召喚主であるハヤトが居て当たり前。だがしかしデュラハンが現れてからもその姿は見当たらなかった。
本当に来てくれたのか? と思ったが、それはまずありえないと考える。もし生きていたとしてもハルツール軍がマシェルモビア側の緩衝地帯を抜けるまで一月掛かっている。ハヤトが生きて逃げたとしてもそれなら自分達が今ここにいる理由が分からない。
緩衝地帯にいる200万のマシェルモビア兵にもう囲まれていただろう。
ハヤトが死んでいるから自分達はここにいるのだ。なのにデュラハンはここに現れた
それに今のデュラハンは━━
「そうですか‥‥‥、コトン‥‥コトンが召喚獣を呼び出せないと言っているのですが、心当たりはありませんか?」
「‥‥‥そこまで聞いてくるという事は既に知っているのだろう軍師殿?」
「やはり‥‥」
「だから私は旧主がどうなったかを知らない」
姪のコトンは自身が契約を果たした召喚獣を一切呼び出せなくなっている、魔法は使えるのに召喚獣だけは呼び出せない。
同じような条件下にいる人物を私は知っている
『破壊の一族』サコナ・ソルセリー
太古の昔、女神によって直接魔法陣を体に埋め込まれたと言われている一族の末裔、最後の一人。この世界で唯一の魔法『消滅』を使える人物。
だが、それと引き換えにその他すべての魔法が契約出来ない体になっている
多分‥‥いや、間違いなくコトンがソルセリーと同じく、契約した召喚獣が呼び出せなくなったのは、あの時ハヤト隊長から貰った指輪が原因だろう。
要するに‥‥体に魔法陣をを埋め込まれた‥‥‥と
そんな事がただの人間に出来るものなのだろうか? グラースオルグという特異な存在を持っているにしても、女神にしか出来ないとされている魔法陣の設置。しかもそれを人の中に。
確かにあの時、デュラ子からコトンへと魔法陣が移動した。そしてその後コトンは召喚獣を呼び出せなくなったし、デュラ子はハヤト隊長の事を旧主、コトンの事を主と呼び出した
ハヤト隊長、本当にあなたはいったい‥‥‥
「最後に一ついいでしょうか?」
デュラ子は返事をしなかったがそのまま続ける
「ハヤト隊長は一体何ですか?」
「それは何者か? という質問だろうか、私が知るのは軍師殿と同じだ。この星とは別の星から来た人間、ただそれだけだ。‥‥‥もう遅い、軍師殿ももう休む事だ」
「そうですね、いい加減休む事とします。━━そうだ、コトンにはデュラハンがコトンの召喚獣になった事を言わないでおきましょう。契約した召喚獣も疲れているから呼び出せないだけだと説明しておきましょうか」
「それがいいだろう、私がこの場にいるという事を主は旧主がまだ生きていると思うだろう、ハルツールに戻るまでは旧主には伏せておこう。
戻ったら軍師殿の口から話すがいい、せいぜい自分の姪に嫌われる事だ」
「はは‥‥そうですね、私が言い出した事ですから、仕方ないですね‥‥それでは私は休むとします」
振り返り、休むためにテントに移動しようとした時
「私も軍師殿を恨んでいるぞ」
デュラ子からそう伝えられる、その後小さな声で
「最後まで主と共に戦いたかった‥‥‥」
その声を拾いながらテントに足を進める
自分の考えは間違っていたのだろうか? あの時ソルセリーを残すべきだったのだろうか? ハヤト隊長を残し、そしてソルセリーの方を生かすのは違っていたか?
『無事にソルセリーをハルツールに帰還させよ』
という最後の命令すら守れなかった
私は‥‥‥間違っていたのでしょうか?
風一つない夜、魔物を寄せ付けないために灯りを付けず、真っ暗な中に無数のテントが乱雑に立ててある。星明りを頼りに自分のテントに移動する
この足元の見ずらい夜道のように、私の心も不安という闇夜をさまよっている様だった。もし風の一つでも吹けばその心も少しは軽くなるだろうに
◆◇◆◇◆◇
大陸深部に入り11カ月が過ぎた
あの後、幸運にもあの巨大なワームに出会うことも無かったが、それでも他の魔物との戦いが続き、その度に兵士達が傷つき倒れていった。
強力な召喚獣であるデュラ子がいても尚、圧倒的な数には勝てず我々は158人まで数を減らした。その中で海軍兵は68人生存。
68人も海軍兵がいたので食料には今日まで困らなかった。食料は全て出発時に海軍兵に持たせており、人数以上の余裕があった為だった。
だがそれもいつまで続くかは分からない、夜に活動を止める魔物と合わせ夜に仮眠を取り、朝日が昇る前に出発する。そして昼は魔物と戦いながら進路を南へと急ぐ。
体力的に余裕があった場合は夜にも移動する事が度々あった
今日の夜に無事だった仲間も、もしかしたら明日の夜にはいなくなっているかもしれない、そう思いながらまるで希望が見えない、明日が見えない道なき道をひたすら歩く
ただ北に向かって‥‥‥
故郷に戻るという事すらもう誰の頭にも無いだろう。今日という日を早く終わらせたい、終わって欲しいとういただそれだけの考え
誰もが生きる希望を持てなくなっていた時
「どうしました? 何故止まったのでしょうか」
隊列の先頭が停止した為、後ろが次々と止まる事となった。どうやら停止したのはデュラハンの背に乗り先行していたコトンが帰ってきた事が原因らしいが‥‥‥
デュラハンとコトン、この召喚獣と召喚主は元々魔法陣を介して契約していないのが原因なのか、それとも、元々他人の召喚獣だったせいだろうか? どうやら繋がりが薄いらしくデュラハンはあまりコトンと離れると存在が希薄になる。
なのでデュラハンはコトンを無理やりハン子の背に乗せ移動や戦闘を行っていた。
最初コトンは背中が痛い、お尻が痛いと言っていたが、流石に長い事乗っていたせいか今では慣れてしまったようだった。
コトンにはとんだ災難だが、今この場で一番安全な場所としたらそれはデュラハンの側以外にない。私からしてみたら姪が危険な目に遭う確率が減るのはとても喜ばしいことだった
そのデュラハンと共にするコトンが召喚者の持つ杖を高く上げ大きく振るう。何か問題が‥‥と気を張るが━━
「抜けました! 深部を、大陸深部を抜けました!」
大きな声で叫んでいた
「「「 ━━━!!! 」」」
一斉に歓声が上がる
一生続くのではないかと思われた大陸深部横断、しかも大陸でもっとも強い魔物の生息する西側、その深部を11カ月掛け、11カ月も駆け抜け、遂に横断した━━
◆◇
それから半月、ハルツール側の緩衝地帯を抜け本国に戻る際に、要塞都市ヒューブスから魔物の間引きに出ていた部隊と合流する事が出来た。
不思議な事に、それまで全く機能していなかった通信装置だったが、合流したとたん通信可能になった
「あれ? 貴方はハヤトのトコの━━」
間引きをしていた部隊はジャック小隊であり、それは以前ハヤト小隊がまだ分隊であった時、ヒューブスに駐留していた事があった。その時からヒューブスにいた部隊であり、私とも面識があった
「お久しぶりですねジャック小隊長、申し訳ないのですが今のハルツールの状況を教えて欲しいのですが」
「あっ、はい了解しました。こっちもどうしてあなた達がここにいるのか不思議なのですが、‥‥何故海軍兵まで、━━っと、おい! 本部に連絡を入れろ」
ジャック小隊に自分達がいない間の状況を聞いたところ、どうやらこの作戦に参加したもの全てが行方不明とされていたらしく、陸軍海軍とも上層部は口を閉ざし、一般兵士は状況自体が掴めていなかったようだ。
マシェルモビア側からも何も音沙汰なく、謎の行方不明事件として処理されていたらしい。そもそも今作戦自体が秘密裏に行われていたため、上層部にもその事を知らされていない者がいる事だろう
私達が深部を通過して来た事をすぐさま軍本部に連絡される事になる、そしてまだ深部を通過中の兵士がいるかもしれないという事も
軍は直ぐにハルツールの緩衝地帯と深部のギリギリの場所、そこに中型の竜翼機で資材と人材を運び森を切り開いて基地を建設。そこに竜翼機を配置しまだ深部を通過中の兵士の捜索に当たった‥‥‥
◆◇◆
「さてと‥‥尻尾切りは誰にさせようかの」
ハルツール首相であるゴルジア・サト、は頭を悩ませていた。いや、悩んでいるふりをしていた。
ゴルジアにとっては些細な事である、誰にその責任を取らせるか、目の前の資料から最も必要としない者選ぶだけ
「クォーモリにしようかの‥‥目を掛けてやっていたのに最近は少し調子に乗っておるからの」
少しだけ人より頭の大きい軍人、ヴァンギエル族の血が入っているその軍人の写真を見て呟く
「よし、こいつじゃな、あとは‥‥これとこれ、それとこいつ」
写真が付いている資料を机の前に弾く、それをゴルジアの秘書が一枚一枚丁寧に机から拾った
ゴルジアは深く椅子に座り直し、そのまま椅子を回転させ外を見つめ━━
「消しておけ」
◆◇◆
月日は経ち
今日この日、ハルツールでは大きな葬儀が行われる事になる。
3万人以上が犠牲となった今作戦、情報がマシェルモビア側に筒抜けであり、作戦を実行した者達にはその責任が圧し掛かる、そしてその際に発覚したのがマシェルモビア側に情報を流した者達がいたという事だった。
出てくる出てくるその証拠や資料、情報を流した者達は全員逃亡を図ったため捕えようとしたが、捕えることが出来ないくらい暴れ、捕えようとした者を傷つけたため裁判に掛けることなくその場で処刑された。
その処刑された中には私と仲の良かった同僚の名もあった
余りにも多い命が奪われた今作戦、葬儀は国葬として扱われた。
死者が多すぎたのと、遺体が殆ど無いため棺ではなくプレートに彫られた名前だけがそこにあった。
3万人以上の名前が黒い大理石に彫られその場にあった
葬儀となった会場では至る所で泣く声が聞こえる、生き残った者総勢312人と、亡くなった者の親族など‥‥‥
その中には元ハヤト小隊の隊員達も数人含まれている、無事に生きて帰って来れた者達。竜翼機の空からの捜索でその生存が確認され救助され今ここにいる。
姪のコトンはその生き残ったハヤト小隊の隊員達と一緒に居るが、同じ小隊であった私はその中には入れなかった。
私がハヤト隊長を死地に追いやった事は小隊の皆が知っている。コトンはその事を知った時から私とは話をしなくなった。目も合わせようとしない
本当にこれでよかったのか‥‥私はやはり間違えたのでしょうか
何度も自問自答する、どこから間違いだったのかと
「どう思いますか‥‥ハヤト隊長」
私の目の先には数体しかない棺の中でひときわ高い場所にある二つの棺、その一つに向けられる
その内の一つには当人がいつも首に下げていたというペンダントが棺の上にあった。
海軍所属の竜翼機パイロット『バール・エリネル』
マシェルモビア側からこの葬儀に合わせるように送られてきた情報、そこには単機で我が国の旗艦に特攻しその後情報の伝達が出来ず作戦に大きく支障をきたす事となったと。
本来であればもっと多くのハルツールの船が沈んでいたとされていた。
その勇敢な行動に対しマシェルモビア海軍はかのパイロットに敬意を示すと
会話で国をまとめたハルツールと違い、マシェルモビアは武力により領土を広げた。彼らののやり方は敵国で有名な人物、もしくは強いとされた人物を捕えると拷問して殺し、見るに堪えない姿にして相手国に送り返す。
そうする事で我々に歯向かうとこうなると相手国の士気を落とすやり方をしていた。
だが武力で強くなった国故に、真に強きものには敬意を示し旗艦に特攻をしたバール・エリネルのように敬意を示す事がある。
もしそれが遺体だった場合、奇麗に処理を施され、まるで生きているかのような姿で棺に入れられ、更に棺の上にはマシェルモビアの国旗が掛けられた状態で送られてくる、ということが今までもあったとされている
そしてもう一つの棺の上には、ハヤト隊の隊員だったら誰もが見覚えのある大剣の剣先が置かれていた。マシェルモビア側からマシェルモビアの国旗を使い、奇麗に包装されて送られてきたそうだ。
そして
単騎でマシェルモビア6万の兵士と戦い、2万人以上の我が軍の兵士を討ち取った。その戦いぶりはまさに竜騎士だったと‥‥‥
マシェルモビア陸軍は勇猛果敢であったかの兵士に敬意を示す
ハヤト小隊隊長、『ウエタケ・ハヤト』の名がそこにあった
そしてこの日、ハルツール政府とハルツール軍双方から二人の功績を称え決められた事がある
ウエタケ・ハヤト
バール・エリネル
この両名に『竜騎士』の称号が正式に与えられる事となった
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だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。
日本で私は社畜だった。
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あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。
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