133 / 260
輸送任務
しおりを挟む
いやぁ~びっくりしましたよ、たかだか新作のチョコレートで槍を持ちだすとは思っても無かった。
しかも俺の部屋のドアを壊されたし、これには俺もチョコレートをねだりに来たエクレール、そしてチョコレートを出してくれたラグナも動揺どころか少し恐怖を覚えた。
オヤスが独自に研究し、作ったチョコレートの試作品、まあ、ただのドライフルーツの入ったチョコレートなんだけど。
試作品なので包装されてない状態、お得用商品の様に箱に詰められただけの物、中には割れているのもある。
それを同じ部隊だったエクレールにちょっとずつあげていた。すると夜な夜な俺の部屋に来てはねだるようになった。
最初にあげた時に
「隊長、この新作の事は誰にも言わないで欲しい」
なんて言ってきた
「は? なんで?」
「見たらわかるだろう数が少ない、これならすぐになくなってしまう、ライカなんかに知られたらあっという間だ」
「そうだね、でもすぐに販売できるって言ってたし、別にいいんじゃない?」
オヤスは自分が作った新作が売れると確信し、直ぐにでも商品化すると意気込んでいた。
商品化するには工場のラインを調整しなければならないのだが、オヤスの息子で工場長のモランが、人と時間が無いと言って反対、俺がこっちに来るまで決着が付いていなかった。
商品化するとは言っていたが、正直いつになるか疑問だ。
「商品化するって言ってもすぐにではないだろ? だったらいつ商品として世に出るか分からないじゃないか」
「いや‥‥今すぐに販売できるって言ったじゃん」
「すぐに、とはいつだ?」
「いつとは言ってなかったけど‥‥」
「だったらいつかは分からないじゃないか!」
この辺りから語尾が荒くなってくる
「隊長だって無くなってしまったら困るだろう!? これだけしか無いのだぞ!」
「いや、俺は別に食べなくてもいいし」
砂糖漬けのドライフルーツとかきつすぎ
「だったら私一人で食べてもいいんだな!?」
「えっ?」
「頼む! この事は誰にも言わないでくれ! 本当に商品化するまで私だけに食べさせて欲しい!」
「命だけは助けて欲しい」ぐらいのお願いぶりに、ちょっと引きながら了承してしまった。ここまで貪欲な人も珍しい、「だったらこれあげるよ」と、箱ごと渡そうとしたら
「私の『収納』だと溶けてしまうから、隊長の召喚獣の方で持っていて欲しい」
◆
その日以来、毎日のように要求、俺と離れる期間がある場合は、いくらかあらかじめ渡すようになっていた。
それで、昨日の夜は‥‥‥‥
「お、落ち着けソルセリー! べ、別に隠していたわけじゃ無いんだ!」
とは言いながらも、自分の体を使いチョコレートの箱を全力で隠そうとするエクレール
『言っている事とやっている事が違う』の典型的なやつだ。
「皆にも渡そうとしたんだが、ちょっとだけ! ちょっとだけ渡したくない気持ちがあっただけなんだ!」
バリバリバリ!
渡したいのか、それとも渡したくないのか? 渡したくないのだろう、手に持っていた食べかけのチョコレートを一瞬で噛み砕いた。
凄いなこの人、最初に感じた女騎士のイメージが、今は全くと言っていいほど感じない、駄目キャラになっている。
「ほ、ほら、その槍を納めてくれ! ソルセリ―にもあげるから」
箱の中から割れて砕けた、小さいチョコレートを震えながら差し出す
その時俺はどうしていたか?
おっかなくて何も言えなかった、昨日に続き恐ろしい場面に遭遇し、何も言わず日報を付けるふりをしていた。
・・・・
・・・・
「どうだ? ソルセリ―美味しいだろう?」
まるで上司を接待するように、エクレールは立ち回った。
「ラグナ、すまないけどお茶のお代わりを貰えるか?」
俺の召喚獣を勝手に使い、お茶を要求する。
「ささ、もう一つどうだ?」
チョコレートの入った箱は自分の手元に置いておき、その中から一番小さい欠片をソルセリーに渡す。
俺の中ではエクレールの評価はダダ下がりだ。
一方、最初物凄い形相で部屋に入ってきたソルセリーは槍を折り畳み、腰につけ。先程とは違い、まるで借りてきた猫の様に大人しく座り、少しづつ渡されたチョコレートを両手で持ち少しずつ食べていた。
エクレールの問いかけにも、小さな声で「うん」としか返さない。先ほどの怒りは食べた事で落ち着いたのか?
ソルセリ―が落ち着いた様子に安心したのか、それとも完全に話をずらす為なのか? エクレールは別の話を振った
「そういえばソルセリー、隊長に何かお願いがあるとか言って無かったか?」
◆◇
なんて事が昨日の夜あり、俺は今度の休暇の時、ソルセリーと一緒に出掛けることになった。どこに行くかはまだ言われていない。
「それでまず、最初にこの拠点に物資を運ぶんですが━━」
それで今はタクティアと、食料物資の輸送に当たっての打ち合わせをしている。物資の方は召喚獣のラグナの『収納』に全て入れる、ラグナの『収納』は『家』に関係する物だったら大量に入れられるのでせっせと運び入れている、他の隊員や部隊の人員もそれを手伝っている。
「この辺りは攻められている状態なので、敵竜翼機に発見されないよう気を付けて下さい、予定道りの時間にたどり着く様に出来れば、味方竜翼機の護衛を得られますから」
「分かった」
数か所の物資の運搬、中には危険な地域もある。召喚獣のコスモで飛んで行くので地上からの攻撃は心配いらない。
ただし、地上から離れすぎると、場所によっては敵竜翼機に見つかる可能性もある、出来れば地上からあまり離れず飛んで行きたいのだが‥‥
女神サーナに封じられた『探知』、あれが無くなった事が悔やまれる、何で取っていったんですかね? 返してもらえませんか? 駄目ですか?
「━━それと」
一通り説明を受けた後
「ハヤト隊の休暇が決まりました、休日ではなく休暇です」
「マジで!?」
やっと‥‥やっと休暇か、長かったぁ
「他の部隊との調整などもありますので、まだ先になりますが、ちなみに休暇の日は既に決まってます、年をまたいで来年になりますが」
「来年か‥‥とか言っても、『急遽変更』とかなるんだろ?」
「それはありません、決定ですから」
「ほうほう‥‥」
来年になるとはいえ、それは嬉しい
「それでその休暇に関係があるんですが━━」
ん? なにやら不安な方向に行きそうだ
「その休暇中に、以前話した武闘大会があるんです」
ほらね
以前、武闘大会に出場しろと言われた事がある。軍が主催している大会で、剣技の部と、召喚獣の部がある、ハルツールから広く参加者は募集され、一般人でも出場可となっている、
そして軍からも各部門に一人、出場することが決まっていた。
「それに出ろって? 嫌だよめんどくさい、せっかくの休暇なのに」
それでなくても2件のソルセリー案件があるのに、『何か作れ』と『私について来い』がある、正直、何もしないで過ごしたいが。
「なら、出ないということでいいですか?」
「お、おう‥」
なんか、やけにあっさり
「‥‥いいの?」
「はい、代わりの人は一応いますから、ハヤト隊長の後輩で、ポンドラスと言う名前の人ですよ」
「ああ、アイツが出るのか」
俺の代わりに欧米ズのポンドラスが参加になったようだ。
悪いね、変わってもらって、こっちも忙しいんだよ。
「剣技の部にはライカが出る事になってます、休暇と重なって丁度いいですから」
「そ、そう‥‥」
身内が出るのか‥‥となると応援に行かなきゃいけないの? めんどいな~、家で見てますってのは駄目?
「なら、応援に行かないとね」
「そうですね、でも応援に行くなら出場してみては?」
「嫌だ」
「そうですか、‥‥それとですね、今回の大会の主賓なんですが、来年から新しくハルツール代表の一人となる方が、主賓として招待される事になるんです」
「ふーん」
それはどうでもいいよ
「ハヤト隊長とも縁の深い、リテア・ネジェン次期代表です」
!
「っ! リ、リテア様が!!!」
「‥‥‥はい」
リテア・ネジェン・次期タスブランカ代表
俺が以前護衛を務めた見た目10歳程の幼女(実年齢は当時50歳越え)で、俺は軍人という事を隠し、『フェルド・ガーン』という偽名で護衛をした。
リテア様を狙う輩から何とか守る事は出来たが、完ぺきとは言い難い結果だった。
同じ館で働く人たちの多くが死亡し、その事でリテア様も心を痛まれていた。
俺が着用していた装備などは礼式用で、まともに守る事が出来ない物だったし、武器も細身の役に立たない物だった。
あの時まともな装備があれば‥‥とは思うが、今思うのも遅いし、あの時は身を明かす事も出来なかったので、どうしようもないと言えば仕方がない。
「‥そうですか、リテア様が‥‥ならばこのフェルド、リテア様の為に大会に出場しなければなりませんね」
「‥‥‥‥そう言うと思って、軍の枠は一応は2つ取ってありますので‥‥」
タクティアが何やら変な目で見ている気がするのですが‥‥
「流石はタクティアですね、用意周到と言いますか、先をよく見ている」
我が部隊の一番の切れ者、その頭脳にはいつも助けられましたが、今回もそのようです
「えっと‥‥‥ハヤト隊長、今からそれですか?」
「なんのことでしょうか?」
◆◇
リテア様の事は尊敬しています、リテア様以前にネジェン家の事を尊敬しているでしょう、タスブランカを治めるため、代々一族はタスブランカの為に尽くして来た。
困難な時期もあったでしょう、政治的に不安定な時期もあったと思います。それでもその土地のために尽くすネジェン家には賞賛以外の言葉は見つかりません。
そしてリテア様、あの方は10歳の時『生命の契約』をされました。
当時まだ子供で、遊びたい次期だったでしょう、それでも自身の自由を犠牲にしてまで、タスブランカのために尽くそうとするリテア様の姿に、私フェルドも思わず涙が流れそうでした。
そのような理由でリテア様の事を、私は尊敬しています。
それと、このフェルドというもう一人の自分、お姫様に使える騎士というポジションが気に入っているのも事実です、最初は興味がありませんでしたが、やって見ると癖になるものです。
◆◇
「それでは行ってきます、タクティア、後の事は頼みましたよ」
召喚獣ラグナの『収納』に食料の搬入が終了し、輸送任務に赴きます
「ええ、気を付けて下さい」
「うん、私は数日、ここを空けることになりますが、皆もタクティアの言う事をよく聞き任務に励んで下さい、ライカとエクレールもこの部隊にいる時間が長いのですから、よく皆をまとめるように」
「あ、はい‥‥」
「ああ‥‥」
「ソルセリーは癇癪など起こしては駄目ですよ、タクティアにあまり強く当たらないように、いいですね」
「え、ええ‥‥」
「ノースにデディ、タバル、オーバ、マースも、今日、貴方たちはこの後、飛行場の草むしりですが、草むしりも大事な仕事です、決して手を抜かないように」
「「「はぁ‥‥」」」
どうやら皆も私がいない間しっかりやってくれるようです、これで安心して輸送任務に赴く事が出来ます。
「はいよぉ~!」
鐙でコスモの腹を叩くと、コスモは上昇し始めました。
「それでは行ってきます」
軽く手を上げ、私は輸送先に向かいました。
数日隊長としてこの場を空けますが、彼らならしっかりやってくれるでしょう
「さて、物資を待っている人たちの場所に向かいましょうか」
「ヒヒ~ン!」
ハヤトが飛び立ち、残された隊員達は
いち早く困惑から復帰したエクレールが
「‥‥タクティア、あれはなんだ?」
「心の病のようなものでしょうか? ‥‥‥‥前の時よりも悪化してますが」
しかも俺の部屋のドアを壊されたし、これには俺もチョコレートをねだりに来たエクレール、そしてチョコレートを出してくれたラグナも動揺どころか少し恐怖を覚えた。
オヤスが独自に研究し、作ったチョコレートの試作品、まあ、ただのドライフルーツの入ったチョコレートなんだけど。
試作品なので包装されてない状態、お得用商品の様に箱に詰められただけの物、中には割れているのもある。
それを同じ部隊だったエクレールにちょっとずつあげていた。すると夜な夜な俺の部屋に来てはねだるようになった。
最初にあげた時に
「隊長、この新作の事は誰にも言わないで欲しい」
なんて言ってきた
「は? なんで?」
「見たらわかるだろう数が少ない、これならすぐになくなってしまう、ライカなんかに知られたらあっという間だ」
「そうだね、でもすぐに販売できるって言ってたし、別にいいんじゃない?」
オヤスは自分が作った新作が売れると確信し、直ぐにでも商品化すると意気込んでいた。
商品化するには工場のラインを調整しなければならないのだが、オヤスの息子で工場長のモランが、人と時間が無いと言って反対、俺がこっちに来るまで決着が付いていなかった。
商品化するとは言っていたが、正直いつになるか疑問だ。
「商品化するって言ってもすぐにではないだろ? だったらいつ商品として世に出るか分からないじゃないか」
「いや‥‥今すぐに販売できるって言ったじゃん」
「すぐに、とはいつだ?」
「いつとは言ってなかったけど‥‥」
「だったらいつかは分からないじゃないか!」
この辺りから語尾が荒くなってくる
「隊長だって無くなってしまったら困るだろう!? これだけしか無いのだぞ!」
「いや、俺は別に食べなくてもいいし」
砂糖漬けのドライフルーツとかきつすぎ
「だったら私一人で食べてもいいんだな!?」
「えっ?」
「頼む! この事は誰にも言わないでくれ! 本当に商品化するまで私だけに食べさせて欲しい!」
「命だけは助けて欲しい」ぐらいのお願いぶりに、ちょっと引きながら了承してしまった。ここまで貪欲な人も珍しい、「だったらこれあげるよ」と、箱ごと渡そうとしたら
「私の『収納』だと溶けてしまうから、隊長の召喚獣の方で持っていて欲しい」
◆
その日以来、毎日のように要求、俺と離れる期間がある場合は、いくらかあらかじめ渡すようになっていた。
それで、昨日の夜は‥‥‥‥
「お、落ち着けソルセリー! べ、別に隠していたわけじゃ無いんだ!」
とは言いながらも、自分の体を使いチョコレートの箱を全力で隠そうとするエクレール
『言っている事とやっている事が違う』の典型的なやつだ。
「皆にも渡そうとしたんだが、ちょっとだけ! ちょっとだけ渡したくない気持ちがあっただけなんだ!」
バリバリバリ!
渡したいのか、それとも渡したくないのか? 渡したくないのだろう、手に持っていた食べかけのチョコレートを一瞬で噛み砕いた。
凄いなこの人、最初に感じた女騎士のイメージが、今は全くと言っていいほど感じない、駄目キャラになっている。
「ほ、ほら、その槍を納めてくれ! ソルセリ―にもあげるから」
箱の中から割れて砕けた、小さいチョコレートを震えながら差し出す
その時俺はどうしていたか?
おっかなくて何も言えなかった、昨日に続き恐ろしい場面に遭遇し、何も言わず日報を付けるふりをしていた。
・・・・
・・・・
「どうだ? ソルセリ―美味しいだろう?」
まるで上司を接待するように、エクレールは立ち回った。
「ラグナ、すまないけどお茶のお代わりを貰えるか?」
俺の召喚獣を勝手に使い、お茶を要求する。
「ささ、もう一つどうだ?」
チョコレートの入った箱は自分の手元に置いておき、その中から一番小さい欠片をソルセリーに渡す。
俺の中ではエクレールの評価はダダ下がりだ。
一方、最初物凄い形相で部屋に入ってきたソルセリーは槍を折り畳み、腰につけ。先程とは違い、まるで借りてきた猫の様に大人しく座り、少しづつ渡されたチョコレートを両手で持ち少しずつ食べていた。
エクレールの問いかけにも、小さな声で「うん」としか返さない。先ほどの怒りは食べた事で落ち着いたのか?
ソルセリ―が落ち着いた様子に安心したのか、それとも完全に話をずらす為なのか? エクレールは別の話を振った
「そういえばソルセリー、隊長に何かお願いがあるとか言って無かったか?」
◆◇
なんて事が昨日の夜あり、俺は今度の休暇の時、ソルセリーと一緒に出掛けることになった。どこに行くかはまだ言われていない。
「それでまず、最初にこの拠点に物資を運ぶんですが━━」
それで今はタクティアと、食料物資の輸送に当たっての打ち合わせをしている。物資の方は召喚獣のラグナの『収納』に全て入れる、ラグナの『収納』は『家』に関係する物だったら大量に入れられるのでせっせと運び入れている、他の隊員や部隊の人員もそれを手伝っている。
「この辺りは攻められている状態なので、敵竜翼機に発見されないよう気を付けて下さい、予定道りの時間にたどり着く様に出来れば、味方竜翼機の護衛を得られますから」
「分かった」
数か所の物資の運搬、中には危険な地域もある。召喚獣のコスモで飛んで行くので地上からの攻撃は心配いらない。
ただし、地上から離れすぎると、場所によっては敵竜翼機に見つかる可能性もある、出来れば地上からあまり離れず飛んで行きたいのだが‥‥
女神サーナに封じられた『探知』、あれが無くなった事が悔やまれる、何で取っていったんですかね? 返してもらえませんか? 駄目ですか?
「━━それと」
一通り説明を受けた後
「ハヤト隊の休暇が決まりました、休日ではなく休暇です」
「マジで!?」
やっと‥‥やっと休暇か、長かったぁ
「他の部隊との調整などもありますので、まだ先になりますが、ちなみに休暇の日は既に決まってます、年をまたいで来年になりますが」
「来年か‥‥とか言っても、『急遽変更』とかなるんだろ?」
「それはありません、決定ですから」
「ほうほう‥‥」
来年になるとはいえ、それは嬉しい
「それでその休暇に関係があるんですが━━」
ん? なにやら不安な方向に行きそうだ
「その休暇中に、以前話した武闘大会があるんです」
ほらね
以前、武闘大会に出場しろと言われた事がある。軍が主催している大会で、剣技の部と、召喚獣の部がある、ハルツールから広く参加者は募集され、一般人でも出場可となっている、
そして軍からも各部門に一人、出場することが決まっていた。
「それに出ろって? 嫌だよめんどくさい、せっかくの休暇なのに」
それでなくても2件のソルセリー案件があるのに、『何か作れ』と『私について来い』がある、正直、何もしないで過ごしたいが。
「なら、出ないということでいいですか?」
「お、おう‥」
なんか、やけにあっさり
「‥‥いいの?」
「はい、代わりの人は一応いますから、ハヤト隊長の後輩で、ポンドラスと言う名前の人ですよ」
「ああ、アイツが出るのか」
俺の代わりに欧米ズのポンドラスが参加になったようだ。
悪いね、変わってもらって、こっちも忙しいんだよ。
「剣技の部にはライカが出る事になってます、休暇と重なって丁度いいですから」
「そ、そう‥‥」
身内が出るのか‥‥となると応援に行かなきゃいけないの? めんどいな~、家で見てますってのは駄目?
「なら、応援に行かないとね」
「そうですね、でも応援に行くなら出場してみては?」
「嫌だ」
「そうですか、‥‥それとですね、今回の大会の主賓なんですが、来年から新しくハルツール代表の一人となる方が、主賓として招待される事になるんです」
「ふーん」
それはどうでもいいよ
「ハヤト隊長とも縁の深い、リテア・ネジェン次期代表です」
!
「っ! リ、リテア様が!!!」
「‥‥‥はい」
リテア・ネジェン・次期タスブランカ代表
俺が以前護衛を務めた見た目10歳程の幼女(実年齢は当時50歳越え)で、俺は軍人という事を隠し、『フェルド・ガーン』という偽名で護衛をした。
リテア様を狙う輩から何とか守る事は出来たが、完ぺきとは言い難い結果だった。
同じ館で働く人たちの多くが死亡し、その事でリテア様も心を痛まれていた。
俺が着用していた装備などは礼式用で、まともに守る事が出来ない物だったし、武器も細身の役に立たない物だった。
あの時まともな装備があれば‥‥とは思うが、今思うのも遅いし、あの時は身を明かす事も出来なかったので、どうしようもないと言えば仕方がない。
「‥そうですか、リテア様が‥‥ならばこのフェルド、リテア様の為に大会に出場しなければなりませんね」
「‥‥‥‥そう言うと思って、軍の枠は一応は2つ取ってありますので‥‥」
タクティアが何やら変な目で見ている気がするのですが‥‥
「流石はタクティアですね、用意周到と言いますか、先をよく見ている」
我が部隊の一番の切れ者、その頭脳にはいつも助けられましたが、今回もそのようです
「えっと‥‥‥ハヤト隊長、今からそれですか?」
「なんのことでしょうか?」
◆◇
リテア様の事は尊敬しています、リテア様以前にネジェン家の事を尊敬しているでしょう、タスブランカを治めるため、代々一族はタスブランカの為に尽くして来た。
困難な時期もあったでしょう、政治的に不安定な時期もあったと思います。それでもその土地のために尽くすネジェン家には賞賛以外の言葉は見つかりません。
そしてリテア様、あの方は10歳の時『生命の契約』をされました。
当時まだ子供で、遊びたい次期だったでしょう、それでも自身の自由を犠牲にしてまで、タスブランカのために尽くそうとするリテア様の姿に、私フェルドも思わず涙が流れそうでした。
そのような理由でリテア様の事を、私は尊敬しています。
それと、このフェルドというもう一人の自分、お姫様に使える騎士というポジションが気に入っているのも事実です、最初は興味がありませんでしたが、やって見ると癖になるものです。
◆◇
「それでは行ってきます、タクティア、後の事は頼みましたよ」
召喚獣ラグナの『収納』に食料の搬入が終了し、輸送任務に赴きます
「ええ、気を付けて下さい」
「うん、私は数日、ここを空けることになりますが、皆もタクティアの言う事をよく聞き任務に励んで下さい、ライカとエクレールもこの部隊にいる時間が長いのですから、よく皆をまとめるように」
「あ、はい‥‥」
「ああ‥‥」
「ソルセリーは癇癪など起こしては駄目ですよ、タクティアにあまり強く当たらないように、いいですね」
「え、ええ‥‥」
「ノースにデディ、タバル、オーバ、マースも、今日、貴方たちはこの後、飛行場の草むしりですが、草むしりも大事な仕事です、決して手を抜かないように」
「「「はぁ‥‥」」」
どうやら皆も私がいない間しっかりやってくれるようです、これで安心して輸送任務に赴く事が出来ます。
「はいよぉ~!」
鐙でコスモの腹を叩くと、コスモは上昇し始めました。
「それでは行ってきます」
軽く手を上げ、私は輸送先に向かいました。
数日隊長としてこの場を空けますが、彼らならしっかりやってくれるでしょう
「さて、物資を待っている人たちの場所に向かいましょうか」
「ヒヒ~ン!」
ハヤトが飛び立ち、残された隊員達は
いち早く困惑から復帰したエクレールが
「‥‥タクティア、あれはなんだ?」
「心の病のようなものでしょうか? ‥‥‥‥前の時よりも悪化してますが」
0
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる