異世界陸軍活動記

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平穏 ③

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「行ってきまーす」

 自分の部隊の隊員達に見送られ、笑顔でブンブンと手を振り出発する召喚者・・・の俺

 一人、面白くなさそうな顔のソルセリーを除いて、他の皆はにこやかな顔で俺を見送ってくれた。

「うちの隊長を頼みます」

「おう、任せとけライカ、無事に帰還するからな、召喚者がいればそれも余裕だろうがな」

 各地を転々としていた元フレックス隊所属のライカは、結構顔が広いらしく、ジャック小隊の隊員の一人に話しかけていた。
 話しかけられた隊員もかなりの上機嫌、他のジャック小隊の隊員達も機嫌がいいと言うか、多少興奮状態にある
 それもそのはず、ジャック小隊にとって待望の召喚者の入隊(一時的)になるからだ。



 ◇◆


「ハヤト、俺の部隊に入らないか?」

「いいよ」

「はぇっ!?」
 俺の即答に驚くジャック小隊長

 ジャック小隊は全員で15人在籍しており、小隊長であるジャックと、各7人ずつの2分隊で形成されている
 危険と言われる大陸西部の緩衝地帯に間引きには、それくらいの人数がいないと危険とれるため、小隊規模の行動となる
 そのジャック小隊は、定期的に緩衝地帯に入り魔物の間引きを行っていた。
 
「お、おい、いいのか?」

「別にいいよ、間引きについて行けばいいんでしょ?」
 部隊を解散してジャック小隊に合流しろ、と言っている訳では無いのはもちろん知っている、それは軍が決める事であって、俺達の様な一般兵が決められる事ではない、ジャックが言っているのは「ちょっと手伝わない?」ぐらいの感覚だろう

「そうだ! いいのか? 本当だな!?」

「行くのは俺一人でしょ?」

「おう! お前1人でいい」

「ならタクティアに一応相談してよ、俺の名前の付いている部隊だけど俺の部隊じゃないんだよ、タクティアが仕切っている様な感じだし」

 ・・・・・

 ・・・・・

「なら私もついて行くわ」
 
 たまたまそこにいたウチのの部隊のお姫様、裏の「首領」こと、ソルセリーの有り難くないお言葉

 ジャック小隊長と、所属する分隊長二人がタクティアに相談しに来たのだけれど、ソルセリーがいきなりそんな事を言いだした。
 さも当たり前のような事だと言わんばかりのソルセリーに、俺も一瞬声が出なかった。

 召喚者を借りに行ったら、ついでに破壊の一族も付いてきた事に、ジャック小隊長と分隊長2人は一瞬色めき立つ
 破壊の一族の部隊に入れることは、軍人にとっては最高の名誉であり憧れでもある、一時とはいえソルセリーの加入は、ジャック小隊にとって最高の時間となるだろう

 しかし

「駄目です」
 タクティアの一言で一刀両断される

 ソルセリーはゆっくりとタクティアの方に顔を向け
「何故駄目なのかしら?」
 これまたゆっくりと言葉を発した。

 これはソルセリーの首領モードに入った証拠だ。首領モードに入ると誰もが怖がり、話しかけられなくなる
 こんな時はエクレールが何とかして、なだめてくれるのだけれど、成功例は極めて低い

 いつもはソルセリーの首領モード+駄々っ子攻撃に負け、いつもは根負けするタクティアだったが‥‥

「それはソルセリー、貴女が一番よく理解しているでしょう?」
 今回のタクティアは一歩も引かない、いつもニコニコ機嫌がよろしいタクティアが、なんと! 真顔だ。
 笑顔の欠片も見せず、あまり他人には見せない冷たい表情でソルセリーを見つめている

 内心ドキドキしている俺と、オロオロしているジャック小隊の3人

 暫く無言でお互いに見つめ合っていたが
「ふぅ‥‥分かったわ」
 目を閉じ、軽くため息をついたソルセリーはそのままどこかへ行ってしまった。



 ◆◇◆


 そんな経緯があって今に至る、同行をタクティアによって拒否されたソルセリーは、不機嫌では無いものの、ずっとつまらなそうな顔をしていた。

 それはさておき、ジャック小隊の面々はかなりの上機嫌で緩衝地帯に入って行く、そして俺もかなりの上機嫌だ。

 それもそのはず、隊列が何と! 召喚者を守るための隊列になっている
 つまり俺が隊列の中心となり、守られる立場にあるという事だ。いつも鉄砲玉みたいな扱いを受けていたので、軽く感動を覚える

 そうだよ、召喚者ってのは本来こうあるべきなんだ。

 ジャック小隊には残念ながら『癒し』を使える者はいないが、『探知』が出来る隊員もいるし、『洗浄』が使える者もいる、何から何まで俺がしていた本来の部隊とは違い、俺がする事と言ったら、本来の召喚者の仕事をするだけ、なんと素晴らしい事か!

 小隊長のジャックが、俺から少し離れた後ろに付き、俺の前には『探知』が出来る物が歩いている、そして俺を守る様に両脇には兵士が存在している
 
 ジャック小隊は皆笑顔でいるし、もちろん俺も例外ではない
 


 ‥‥‥それに少しだけ懐かしい感じがする

 

  暫く進んでいると俺の左手にいた兵士に
「ハヤト隊長殿?」

「なに? あっ、隊長殿は要らないよハヤトって呼んでよ、今はこの部隊の一隊員だからさ」

「はい」

「それで何かな?」

「あの‥‥何故泣いておられるのですか?」

「えっ?」
 その時、左肩に頬から何かがポトリと落ちた。目元を拭って見ると手には確かに濡れた後があった。
「あ、あれ?」





 ・・・・

 ・・・・

「行きましたね」

「ああ、なんだか嬉しそうだったなハヤトは」

 ハヤトを見送る隊員達は、まるで遠足に向かうのと同じくらい笑顔のハヤトを、自分の子供か兄弟を見送る様に温かい目で見送っていた。

「ふふふ、召喚者扱いされるのが余程嬉しいのだろう、私の弟が学校の行事で出かける時はいつもああだった」

「俺の子供もそうだな、家族でどこかに行く時は興奮して、出発するまで落ち着きが無くてな、化粧の時間が長い妻に、『化粧なんかしても変わらないよ』とか言ってせかしてたな、言われるたびに妻はムッとしていたけど」

「ではハヤト隊長も行った事ですし、我々は我々の仕事をしましょうか、6日後には帰ってくるでしょうから」

 残された隊員達はこの町の防衛にあたる、防衛と言っても他にもこの町を守る部隊はいるし、何より、ジャック小隊が間引きながら北上する為、魔物は殆ど来ない。
 自分達が出る幕はまずないだろうが、防衛の為配置に着く事になった。


 ◆◇
 

 ドン!

 昼食時、スープの入った大きな鍋がテーブルの上に置かれる、一応この町を守る部隊には多少の余裕があるので、部隊ごとに交代で昼食を取っていた。

 そして、目の前に置かれた少量の肉と野菜の入った鍋が一つ、調理当番のソルセリーが作ってくれた物だ。
 ソルセリーは隊員達全員の皿にスープを取り分けてくれた後‥‥‥そのまま自分の席に着いた。
 
 鍋の横には保存食用のパナンが入った皿が無造作に置いてある、隊員達はお互いに顔を見合わせ、心の中で嘆息する
 今日の朝食まではしっかりした食事を作ってくれたのに、ハヤトがいなくなった瞬間からこれだった。
 これが後5日もか‥‥と思いつつ隊員達が一斉に食事を取る

「あの、ソルセリー?」
 遠慮がちにタクティアが話しかける

「何かしら?」

「その‥‥私のスープに具が一切入っていないんですが‥」
 タクティアのスープにだけ、本当に一切の具が入っていなかった。その事についてソルセリーに聞こうとしたのだが‥‥

「そう、運が悪かったわね」
 で、終わった。

「そうかもしれませんね‥‥‥」
 半ば諦めたタクティアは、一日でも早くハヤトが帰ってくることを祈るばかりだった。



 ◆◇


 6日後の昼過ぎ

「ハヤト隊長! お帰りなさい!」

「お、おうただいま」
 タクティアの熱烈な歓迎に戸惑い、困惑するハヤト

 ライカはハヤトの帰還を喜びながらも、顔見知りの兵士に声を掛ける
「どうだった? ウチの隊長は、中々のものだったろう?」

「ああ、やっぱり召喚者は凄いな、召喚獣よりもあの魔法と言うか、魔力の多さに驚かされるよ、
 一度危ない場面があってな、出来たばかりの魔物の集落があったんだよ、出来たばかりと言ってもかなりの魔物の数でな、あの時お前の部隊の隊長がいなかったら‥‥ちょっと危なかったんじゃないかなと思う」

 ライカはその言葉に自分の事でもないのに、顔が少しにやけてしまう、やっぱり自分の所属する部隊の人間が活躍するのはとても嬉しい事だ。

「でもな‥‥‥」
 兵士はライカに顔を寄せ
「お前のトコの隊長はいつもああなのか?」
 小声でそう聞いてきた。

「ん?」



 ・・・・

 ・・・・

 ジャック小隊について行ったハヤトが無事に帰還し、今日ハヤトは体の疲れを取るために宿舎に戻って行った。
 夕食は一緒に取るそうで、ソルセリーは今から夕食の支度を始めている、6日ぶりにまともな物が食べられそうだ。
 ハヤト隊は今日と明日引き続き町の防衛任務になる、そして今ここにいるのは、ハヤトとソルセリーを抜かした残りの隊員になる

「それで、魔物の集落を潰したのですが、知り合いの兵士がたまたま隊長の方を見たところ、まだ息がある魔物の体を少しずつ切り刻むように刀で突き刺していたそうなんです
 普段は機嫌がよく笑顔でいる事が多かったそうなんですが、魔物を殺す時だけ表情が抜け落ちて、まるで恨みでもあるかのようだったと‥‥
 ただ自分も思い出してみると、故郷のコンセで発生した魔物の集落を潰した時に、既に死んでいる魔物を蹴飛ばしたりしている所を見ているんですよね」

 ハヤトと6日間行動を共にしていたジャック小隊の半数が、ハヤトのそのような行動を目撃していると言っていた。魔物に対して必要以上に攻撃を加えると

「そう言われるとそうかもしれんな、深部を通過していた時はそれどころではなかったが、深部を抜けて緩衝地帯に入って多少余裕が出て来た時に、もう死んでいる魔物に魔法を使っていたな」

「なるほど‥‥気のせいかと思っていましたが」

「タクティアもなにかあったのか?」

「ええ、ハヤト隊長と二人で行動していた時期に、倒した魔物を踏んずけて言った事があったんですよね、あれは今思うとわざとだったんでしょうね」

 少し考え込む一同だったが

「それでも特には問題が無かったのだろう? 別に良いではないか、隊長がおかしくなった訳でもないのに、それで他には何か問題でもあったのか?」
 エクレールが些細な事では無いと主張、他は何かあったかライカに問う

「後はその辺に生えている草を炒めて食べていたとかですね、それは普段からしている事なので問題ないと言っておきましたが」

「また雑草を食ってたのかハヤトは」

「ベルフ、野草と言わないと隊長がまた怒るとおもうぞ」

「ははは、でもそのほかは特には変わった事は無かったと言ってました。隊長がいなかったら怪我人が出て、早めに帰還しなければならなかったかも、とも言っていましたし、最終的にはお前のとこの隊長をクレとも言われましたよ」

「まあ何にせよ無事に帰って来てよかったよ」

「そうですね、私も久しぶりにまともな物が食べられそうですし‥‥」

「ああ、タクティアも災難だったな」

「ええ、全くです‥‥‥‥」


 
 夕食時

「あれ? 今日って誰かの誕生日?」
 ハヤトがそう思う位、豪勢な夕食になった。



 ◆◇

 俺が緩衝地帯での間引きを終え、帰ってきた翌日、本当は休んでも良かったのだが、やっぱり自分の所属する部隊の側にいると落ち着くので、皆がいる場所で今回の間引きで多少使った武器防具の手入れをしていた。
 多少使ったとはいえ、どこかに不具合がある訳ではない、しかし、こうして毎日手入れをすることで長持ちするし、意外な場所に破損がある場合もあるので日々の手入れは大事だ。

「ちょっといいかしら隊長」
 昨日から機嫌のよろしいソルセリーは、今日もよろしいようだ。世界が平和だと感じる
「もしよかったら私の武器も見てもらいたいんだけど」

「ソルセリーも自分で手入れとかしているんでしょ?」

「そうだけど、私は使う側で作る側ではないし、自分で武器防具を作ることの出来る隊長の方が私よりも詳しいと思うわ」

「なら別にいいよ、大したことは出来ないけどね、貸してみて」

「ええ」
 腰に付けている折り畳み式の槍を手渡される

 ソルセリーの武器を初めて見せてもらう、『収納』が持てないソルセリーは武器をこうして腰にいつも身に着けていた。

「へぇ~」
 手に取り見るとその武器の出来栄え感嘆する、ソルセリーの武器は長さが120センチで、それを4つに折りたたむ事が出来る、蝶番のような金具で曲げる事が出来るのだが、俺はそれがあると使う時に邪魔になるのではないかと思っていた。
 しかし、その蝶番の部分には『保護』が付与されており、蝶番の部分を握って攻撃しても邪魔にならないようになっていた。
 そしてこの槍には切断面に『重力』も付与され、折りたたんだ状態から伸ばして使用する時に、切断面が『重力』によってピタリとくっつき、使用中にバラバラにならないようになっている

「どうかしら?」

「これ凄いよ、どこで手に入れたの?」

「軍から貰った物だけど」

「へえーいいなぁー、とても参考になるねこの槍、ぱっと見やっぱり俺は手入れとかは、ソルセリーがやっている以上の事は難しいね」

「そうなの?」

「うん、例えばこの槍の芯の部分、柄の部分から多分穂先の手前ぐらいまで魔鉱石が流し込んであるんだと思う」

 槍を折り曲げた時、断面の中心に鉛筆の芯のように魔鉱石が流し込んである

「俺にはこんな事が出来ないし、多分挑戦しても途中で流し込んだ魔鉱石が途切れると思う、そうすると穂先にまで魔力が流れないで途切れると思うんだよね、たかが一つの部品30センチの長さだけど、魔鉱石って溶かしても上手く流れないんだよ。
 ほら、俺の刀を見ると分かると思うけど、俺にはコレが出来ないから、刀身の表面を掘って塗るように流し込んでているでしょ?」

「そうね‥‥」

「多分、穂先のギリギリまで魔鉱石が流し込んであるんだと思う」
 槍の状態にし、魔力を流し込んでみると確かに穂先の方から強い力を感じる

「これは突く事だけに特化した武器だね、穂先の丁度先から強い力を感じるから、振り回して使用する事は考えて作られていないのは確かだよ」

「そうなのね‥‥初めて知ったわ‥‥」
 俺から返してもらった自分の槍をしげしげと見つめている

「隊長、自分の武器も少し見てもらいたいのですが、少しぐらつくんです」

「いいよ、大して出来ないけども」
 ライカもついでに見てもらいたいと言って来た。ライカの刀は何となくよく切れるなとは思っていたので、技術を盗んで参考にさせてもらおう

 ぱっと見手入れは良くされていると思う、柄の部分が少し緩いくらいかな?
 刀身を柄から一度外し、再度入れ直す

「へぇーそうやって外すんですね」
 ライカは初めて見たようだった。刀一本で兵士をやっているライカなのでそれくらいは知っているとは思ったけど

 刀身と柄を抑える金具が少し減っている様だったので、俺の予備の金具と交換し大きさを調整し完了する

 柄が緩いのを直し終わり、今一度ライカの刀を観察してみる
「ライカはこれ、どこで買ったの? 軍の支給品じゃないでしょ?」

「はい、ポージュの紹介で知り合いの方に頼んでもらったんです、ある程度の手入れなら出来るんですが、その方にいつもお願いしているので、あまり詳しいやり方を知らなくて」

「なんか、変なんだよねこの刀身、普通じゃないって言うか」
 一言でいったら、『脆そう』

「はい、何でも魔鉱石も一緒に溶かしてちりばめているとか」

「‥‥えっ!? そんな事をしたら耐久性が落ちるでしょ?」
 魔鉱石は本来とても脆く、金属に混ざってしまうとかなり脆くなる。
 だから、魔鉱石が含まれている金属は一旦『分離』魔法を使い、剥がさなければならない、それが鍛冶の常識だった。

「普通はそうらしいのですが、自分の体質上こっちの方がいいらしいんです」

「なに、体質って?」

「通常は手や体を通して物に魔力を通すみたいなんですが、自分の場合、触った物に直接魔力を通すことが出来るらしいんです、自分もよく分からないんですが」

「‥‥? それって一緒の事でしょ?」

「私もそう思うわ、ライカは何を言っているの?」

「えっと‥‥あー‥‥うーん」
 ライカは説明に困ってしまった。本当に自分でも分からないようで、それ以降も要領の得ない答えがライカから帰ってきたが、俺の解釈したことによると
 
 俺達が通常魔力を物に通す時、手から配線みたいなのが伸び、物に魔力を供給する、だがライカの場合は配線無して、物に魔力を供給できる

 という事にしておいた。ライカの場合直接物に魔力を供給できるので、魔鉱石と一緒に金属を溶かし、それで刀を作った方がいいらしいと無理やり納得した。
 どの道、ライカの刀を作った人は物凄い刀鍛冶なんだろう

 何となく納得した俺と、全く納得していないソルセリー、ソルセリーはもういいやと諦めて聞くのを止めたようだ。

「それで隊長、実は隊長の武器に前から少し興味がありまして、少し触らせてもらえないでしょうか?」

「それくらいならいいよ、はい」

 受け取ったライカは少しうれしそうだ
「流しても?」

 魔力ですね
「どうぞ」

「では失礼して‥‥」
 ライカが魔力を通すと

 ブオン!!

「うわっ!」
 俺の通常使っている雷雲の形からは、遠く離れたまるで‥‥‥形の悪い大きなメイスの様な形になった。
 驚いたたライカは直ぐに魔力を切る
「び、びっくりしたぁー」

 ライカはそう言うが、一番びっくりしたのは俺と、同じく雷雲を触ったことのがるソルセリーだろう、俺はあんな形になる様に作った覚えはないし、あんな形には出来ない、それはソルセリーも同じ事
 二人とも声を出せないでいる

「‥‥つ、柄の部分に流すようにしたらどうかな?」
 今見た物に動揺して声が裏返ってしまう

「なるほど、ではこうですね?」
 今度は柄の部分に魔力を流したライカは、俺がいつも出している様な見事な和包丁の形になった。

「これは‥‥凄いですね」
 俺とソルセリーから少し離れ、周りに人がいない事を確認したあと、雷雲をヒュンヒュンと物凄い音を出しながら振り回す
 
 俺はあんな音出せない‥‥‥

 一通り雷雲を振るった後
「ありがとうございました。隊長の刀もかなりの物だと分かって満足です、自分も同じものが一本欲しいくらいですよ」
 俺の雷雲を返してくるライカ

「ライカ‥‥魔力的に疲れてないの?」

「そう言われると何となく疲れた感じがしますね‥‥結構消費が大きいんですね、コレを常に振るっている隊長はやっぱりかなりの魔力量の持ち主だったんですね」
 
 関心はしているが、ライカの顔はけろっとしていた。ベルフは途中で止めたと言うのに

 ライカが魔法は使えないが、結構魔力保有量が高い事がわかった。
 
 
 ◆◇

 約3年半の駐留の任務が終わりが近づき、今度は前線に配属されようとしている

 この後、ひと月ほど休暇を貰える手はずにはなっているが、後でこの3年半を思い出した時、ハヤト隊として一番平穏で、幸せな日々だと振り返る事になるだろう。
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