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目的地
しおりを挟む「酷いありさまですね」
目的地のキャンプ地に到着し、タクティアの第一声がそれだった。
目の前にはテントに入り切れなかったのか、シートの上に横たわったり座ったりしている怪我人が沢山いた。
「ハヤト隊長、取りあえず報告に行きましょうか? 今回はハヤト隊長も一緒に来てもらうことになりますよ」
「ああ、分かってる‥‥」
他の隊員には行ってくるの意味を込め、軽く手を上げる
怪我人の間を通り抜け、簡易指令室のテントに向かい、歩を進める。
苦しんでいる者などはいないが、皆虚ろな目をし一点を見つめている者が多い、肢体の欠損ならまだいい方で、顔の一部が欠けている者や肌が焼きただれている者もいる、テントに入れず外にいる人達ですらこうなのに、テントの中に入っている人達は一体どのような状態なのだろうか‥‥
そんな事を考えながら簡易指令室のテントへと入って行った‥‥
「おい、今の奴って‥‥」
「ああ、間違いないグースだ、本当に来たんだ‥‥」
「これでやっと終われるのか」
ハヤトがテントに入った後、怪我をしている兵士たちが静かに騒ぎ出した。
・・・・
・・・・
「申告致しますハヤト隊隊長、ウエタケ・ハヤト 以下5名、本日着任致しました」
「来たか、待っていたよ噂の竜騎士」
俺の目の前には安っぽい小さい椅子に腰を掛ける男、ベルフよりも体が大きく、制服が千切れるのではないか? と思わせるほど筋肉がせり上がっている、元々小さな椅子が更に小さく見える。
この男性が今回のヨルド要塞攻略の指揮官であるラブル中佐、ハヤト隊はこのラブル中佐率いる連隊に編入される事になる。
「取りあえずそこの椅子にでも座れ」
車で座りっぱなしだったので今は立っていたいが、言われた通りに木で出来た丸い椅子に腰かける
「この部隊はお前たちで最後になる、まずは今分かっている事、ヨルド要塞は現在も健在、要塞には手は届かず偵察もままならない、外にいたやつらがその偵察隊の連中だ。
少数で身を隠して近づいても大部隊で接近しても、それ以上の人数で必ず挟撃される、今までの経験から予測して、ヨルド要塞には師団規模の兵がいると思われる」
兵数1万から2万か‥‥
「ただあくまでもこれは予測だ。実際の規模は今の所分かってはいない、数がはっきりしない限りは軍本部からの応援も要請することは出来ない」
現段階ではまだ要塞攻略の目処が立っていない、という事か‥‥
「なのでお前達ハヤト隊には偵察をしてもらいたい、‥‥とは言っても破壊の一族の部隊になるお前達は、一応この連隊に組み込まれてはいるが、連隊とは別枠になる。
深くは入らず偵察もそこそこでいい、なによりサコナ・ソルセリーの安全を優先してもらいたい」
「それだと俺達が来た意味があまりないのでは?」
要するに適当でいいってことだろ?
「いや、いるだけで充分だ、ほかの奴らにはお前たちが来るという事は既に伝えてあるからな」
? よく分かりませんね
「なるほど、分かりました、ではヨルド要塞についての詳しい情報を聴きたいのですが」
タクティアは分かったらしい、流石頭のいい人は違う
「うむ」
そう言ってラブル中佐は手元の魔道具に手をかざす、そうすると机の上に立体的なヨルド要塞付近の地図が浮かび上がる、何故かこれだけ科学っぽい感じがするが、これも一応魔法になる『幻惑』を基本としている
「これがヨルド要塞だ。そして周りの木々が伐採され要塞からの見通しが良くされており、我々の接近にすぐに気づけるようになっている、要塞には竜翼機も配備されている、そして付近には高射砲もあり、我が軍の竜翼機での接近は難しい、敵竜翼機は高射砲の射程範囲から出てくる事は無く、高射砲を叩かない限り空からの接近は難しいと考える、そして‥‥」
ラブル中佐が魔道具を操作すると、赤い点が無数表示された
「これが偵察隊やそれ以前に、要塞を攻略しようとした部隊が敵兵と遭遇した場所だ」
立体的な地図には要塞を囲むように赤い点が現れ、それが大きな輪のように表示される、多少のずれはあるものの、要塞からの距離は大体同じような地点で敵兵との戦闘が発生していた
・・・・・
・・・・・
「俺はやっぱりトンネルを掘ってると思うんだけど」
ラブル中佐との話を終え、俺が土で作った一軒家の中で隊の皆と、話の内容を他の隊員に伝えていた。
「しかし、中佐はそれは無いと言っていましたし‥‥」
俺は大型の探知の魔道具を砦に配置し、敵、つまりハルツール軍が近づいたらトンネルを伝い背後に回り込み、前と後ろで挟む‥‥といった事をしているのではないか? と考えていた。
だがそれはラブル中佐も考えていたらしく、調査をしたが、トンネルの出口が見つからないと言っていた。『潜伏・隠蔽』解除の魔法を使っても見つけられることが出来なかったと
「ならタクティアはどうやって背後に回ったと思う? 『潜伏・隠蔽』を使ってあの森の中をこっそり? 背後に回った敵兵もかなりの数がいたって言っていたから、姿は隠せても音でバレると思うよ、バレないようにするには敵だってかなり大回りしなきゃいけないし」
「ああ、俺とソルセリ―が前に要塞の破壊を目的にした時も、背後にははかなりの数の敵兵がいた、あれだけの数を移動させるとなると流石に‥‥」
ベルフがそう付け足す、ベルフと一緒に攻略に向かったことのあるソルセリーは先ほどから黙ったままだ。
「なら、そちらの可能性もまだあると考えて行動するしかないでしょうね、幸いこの隊にはハヤト隊長がいますから奇襲は防げるとは思うんですが」
「囲まれたら終わりだけどね」
俺一人なら逃げることも出来るけれど‥‥また部隊に配属された事は嬉しいが、もしもの時に自由に動けなくなったのが難しい所だ
「どちらにせよ、この隊はあまり深入りする必要はありませんからね、いるだけでいい部隊ですから気楽にそして安全第一でいきましょう」
「タクティア殿、いるだけでいいとはどういう事でしょうか? ソルセリーがいるからというのは分かりますが、それでは自分達は一体何をしに来たのか? という事になるんですが?」
ライカがそう言うが俺も気になる、ラブル中佐が言っていた事だ。
「理由としては、ハヤト隊長・ソルセリー・ベルフがいる事です、この3人は深部を通過したという実績があります、これは軍どころか一般市民にも伝わっています、深部を通過した程の者達がこの場所にいる‥‥、これだけで連隊の士気が上がります、皆さんも見たでしょう? このキャンプ地にいる兵たちの姿を」
負傷者が多く、皆死んだような目をしていたな‥‥
「度重なる失敗でこの連隊の士気は物凄く低いです、そこにその3人が所属する部隊が到着するとどうなるか? それにソルセリーがいる事でこの任務は大詰めを迎えていると錯覚するし、ハヤト隊長は色々な意味で世界中で有名ですから」
「ねぇねぇタクティア、色々ってどういう事?」
「ですから、我々はこの場所にいるだけで軍に貢献出来ているのです」
「ねぇねぇタクティア」
駄目だ、タクティアは話し出すと自分に酔う所があるから、こっちの話を聞こうともしない
「それで今回の偵察任務で使用する、軍の隊列を発表します」
タクティアは一枚の紙を机の上に広げる
隊の面倒事は全てタクティアに任せていたので、この隊列もタクティアが考えることになっていた。ただ、そういう事はちょっと位は相談してほしかったんだけど‥‥、まあいい、俺も始めて見るこの部隊の隊列、何だか学校の席順を決めるみたいでちょっとワクワクしている
‥‥んー
「タクティア」
「何でしょう?」
「俺、召喚者なんだけど?」
「ええ、皆知ってます」
ご存知ですよと言った感じでニッコリほほ笑んでくる
「召喚者って守られる立場だと思うんだよね」
「普通はそうですね」
「ならさ‥‥何で俺が先頭なの?」
タクティアが広げた隊列の書かれた紙には、ソルセリーが中心になっている、その左手にタクティア、ほんの少しだけ離れ下がった場所にベルフ。
ソルセリーの右手にはエクレール、ほんの少し離れ下がった場所にライカとなっている
で、何故かそこそこ離れた先頭には俺の名前があった、ものすごい極端な二等辺三角形の形になっている
「普通はこうだろ」
タクティアが書いた隊列の横に、俺が考えていた隊列を書き加える
先頭はライカその後ろに俺、ライカは魔法が使えないので俺がサポートに回るのと、探知の担当が俺なのでその位置になる、真ん中は絶対死守のソルセリーと戦闘には不向きのタクティア、その二人を挟むように少し離れた場所にベルフとエクレールがいる。
「ほら! これが正解だろ?」
「ふふふ、ハヤト隊長はまだこういった所がまだまだですね、やっぱり私がいないとダメなようです」
こ、こいつムカつくぅ!
タクティアの「やれやれ」と言った態度に腹が立つ
「いいですか? エクレールは回復魔法が使えます」
「それはもちろん知ってる」
「以前深部を通った時にソルセリーは怪我をしましたね? その時たまたま敵の捕虜が回復魔法が使えたから良かったものの、もし居なかったらどうするつもりでしたか?」
「そ、それは」
「指の損傷は大目に見るとして、目の負傷は致命的です、たまたまそれだけで済んだと言っていいのでしょうか、もしかしたら仕方が無かったと言ってもいいかもしれませんが、ソルセリーは国にとって、そして軍にとっても重要な存在です、ここにいる連隊の兵士の命全てよりもソルセリーの命の方が重いんです。
となると、もしもソルセリーが怪我をした時の為に回復役は重要になります、なのでこの部隊での重要な人物となると1番がソルセリー、2番がエクレールとなります、その他は誰も大して重要ではありません」
「待ってタクティア! ソルセリーとエクレールの事は分かったけど俺は? 俺は召喚者だよ! だったら3番目に大事なんじゃないの?」
「あはは」と、タクティアは笑う
あはは、じゃないよ
「隊の資料や報告などは、全て私がしていますからハヤト隊長は知らないでしょうが、軍ではハヤト隊長は召喚者では登録されていませんよ」
「‥‥へ?」
「隊員には記号が割り振られています、見るだけでその人がどんな能力を持っているかが分かるようにですね。
何か特殊な能力だったり役職だったりすると付けられるんですが、ベルフとライカは無印、まぁ大半の兵士が無印です、そして回復魔法が使えるエクレールには専用の記号が付きます、ソルセリーはもちろんの事、私にもあります参謀を示す記号ですね、
召喚者にも2種類あります、召喚隊所属かもしくは先行隊所属かの記号なんですが、ハヤト隊長にはその記号がありません、別の記号が付いています」
「それって‥‥?」
「『その他』です」
「「ぷっ!」」
ベルフとライカが吹き出す
「初めてですよ軍で『その他』の記号が使われたのは、それに『その他』の記号が無いものだから新しく作ったんですよ」
タクティアは隊員の記号が書かれてある紙を見せてくれた、ベルフとライカには何も付いていない、そしてソルセリー、エクレールとタクティアにはそれ専用の記号が付いていた、で、俺の名前についていた記号が
「良く出来ました‥‥」
「「「 ぶはっ!! 」」」
ベルフとライカ、それにエクレールまでもが腹を抱え声を出し笑い転げる
俺はその記号を知っている、初等部に居た時、絵や簡単な文章を書けると、先生からよくできましたの印を押してもらえる、俺もよく押してもらっていた。
「一応それは仮なんですけどね、あまりにもハヤト隊長の活躍が凄かったんで取りあえずという事でそれになったんですよ、私もそれを最初見た時は笑ってしまいました、あはははは」
俺の名前の所にだけ良く出来ましたの記号がある、しかも手書きで大きくでかでかと、その記号自体魔道具に登録されていないのだろう、‥‥それがあることで俺の名前だけ凄くアホっぽく見える
「「あはははははhhhh」」
「ぐぬぬぬぬぬ‥‥」
何だか笑われている事に無性にに悔しくなってきた
「皆、もうよしなさい、タクティアももうからかうのは止めなさい、隊長がもう泣きそうよ」
そう言ってソルセリーが俺の目元をハンカチで拭いてくれた
「べ、別に泣いてなんかいないし‥‥」
「あはは、すみませんでしたハヤト隊長、こんなのは初めての事だったのでつい」
タクティアがへらへらした顔で謝ってくる
こいつには後で仕返ししてやろう
他の3人も「メンゴメンゴ」と謝ってきた、そんな時、1体だけ俺の作った家の中に配置していたノームが俺の袖を引っ張る、他の2体は家の外で待機させている
「どうした?」
ノームは玄関を指さしている
「お客さん?」
キャンプ地にいてお客さんて言い方はどうかと思ったけど、この今いる場所がまんま家なので何となく本当の家にいるような感覚になってしまう
この土で作った家は防音もしっかりしており、外から呼びかけても中まで聞こえてこない、なのでノームを配置していた。
「どちら様ですかー?」
と、家にいるような感覚で扉を開けてしまう、外には男性兵士が一人立っていた
「すまないが、この建物の事で話が‥‥、その目はどうかしたのか?」
「別に泣いてなんかいませんから!」
「そ、そうか‥‥まあいい、この建物の事で協力して欲しい」
「協力?」
「テントに入り切れない怪我人が外にまで溢れている、野ざらしには出来ないのでこの‥‥土で出来た建物を譲ってほしいんだ」
譲ってほしいと言って来た、でもそれは出来ない
「それは駄目です、もう部屋のドアには隊員の名前まで付いていますから」
そう、部屋割りはもう決まっている、そこは譲れない
「あ…いや、しかしだな」
「新しい物でいいなら幾らでも建てますけど? 何棟必要ですか?」
「本当か!‥‥いやしかし幾らでもと言っても怪我人の数が多すぎるからな‥‥」
「いや大丈夫です、取りあえずラブル中佐の所に行って建設許可をもらいましょうか」
ちなみにこの家は建設許可など取ってはいない
「建設可能な場所を確保してから間取りを決めましょう、ちょっと中佐の所に行ってくるね、皆はもう休んでもいいから」
家の中にいる隊員にそう告げ中佐の所に向かうため家を出た。
残された隊員達は
「ハヤトは『何棟』って言ってたか?」
「間違いなく言ったわね」
「私はこの家を一瞬で建てたのだって驚いているのだが‥‥小さな砦は何度か見たが」
「自分は村に作ってもらった壁を見ているからそんなには驚かないけど‥‥」
「まだ日は落ちる時間では無いですが、今日はもう休みましょうか?」
他の者も頷き各部屋に移動して行く、『照明』が使えるタクティア以外は、『照明』付与された魔道具を手に各部屋に入って行った。
◇◆◇
「建設許可が出たし作りますか」
取りあえず「ガワ」だけを作る、2階建てで長いアパートの様な物を『土』魔法で作り出し、そのまま『硬化』を掛け固める
「えっ!?」
一瞬で現れた建物に、一緒にいた男性兵士は驚く、ウチの隊員達はもう驚かなくなった。「へぇー」ぐらいの感覚になってしまったので、この男性兵士のリアクションにはちょっとだけ嬉しい
「間取りはどうしますか?」
「へ! 間取り? あ、ああ、そうだな、このままでも‥‥いや、出来るんだったら個室を作ってもらえるか? 同じ場所に一緒に居ると負傷兵達も落ち着かないだろうから」
「分かりました」
だだっ広い空間に柱しかなかった場所に壁を立てる
「じゃあ後は内装を作っていきましょうか」
「ええ‥‥」
個室にはドアは無し、その代わりに布で仕切りを付けるこれは診察の時に便利だから、窓は引き戸にする、ガラスを作りたいがまだそこまで俺も作ることが出来ない、ちなみに俺が泊まる事になる家は窓が無い、虫とか入られると嫌だし。
あとはベッドとその横にサイドテーブルを配置し、花瓶も備え付けた。その他諸々必要な物を相談して作り病棟が一棟完成した。
「ありがとう! これでテントに入れなかった者達が外にいる事が無くなったよ」
とは言ってもまだこの部屋数だと足りない
「そうですね、あと2棟ほど立てれば大丈夫でしょう」
「ん? あ?」
間取りは全て覚えたし後は同じのを作るだけ
「なら次、行きましょうか」
「お、おいちょっと待て、大丈夫なのか魔力の方は?」
「ええ、余裕はありますから」
「そうか‥‥」
深部を抜けてから何故だか魔力量が上がった気がする、自分でもどのくらいかは分からないが確かに上がった、一回魔力が枯渇したせいだろうか? だとすると死にそうになってから急回復すると、パワーアップする戦闘民族みたいだけど‥‥深くは考えない。
外に出て建設可能な予定地に、今建てたものと全く同じものを2棟建てる、この辺りから周りの人が騒ぎ出した、急に建物が3棟も出来たせいで
「すげぇー」とか、「うわぁぁぁ」とか驚きの声が聞こえてくる、周りの人達が称賛の言葉を俺に掛けてくるが、そうすると俺も調子に乗ってしまう、ヨイショされるとやる気を出す俺は考えた。
何故テントが足りなくなるのか? 医療用テントが足りなくなるのは分かる、ただ普通のテント、これは兵士たちが自身の『収納』に入れて置き保管している、しかしそのテントを『収納』している兵士が戦死し、遺体が回収出来なくなると自ずとテントは足りなくなってくる
なら、兵士の宿舎も作ればいいじゃない、兵士の宿舎も作る事にした、もっと褒めてもらいたいのと、自身の魔力の限界を知っておきたい
ので
「兵士の宿舎を作りたいのですが許可をお願いします」
「‥‥ああ、別に構わんが‥‥さっき怪我人用の建物を建てるとか言って無かったか?」
ラブル中佐に許可を貰いに来た
「それは完成したので、それと人工魔石をいくつか貰いたいんですが」
「構わない、必要な分を申告して持っていくといい」
「ありがとうございます」
許可を貰った俺は指令室から退出した
人工魔石も手に入れ建設可能な場所に移動する、最前線では宿舎自体が無い全てテントになっている、そして至る所にテントが等間隔で並んでいる、もし宿舎を建てる場合は緊急時の為に平屋がいいとされてはいるが、それでは面白くない、なので立てる建物は5階建てのエレベーター付きにする、そのための人工魔石、まず手始めに立ち退きから始める。
テントを一つ一つ周り
「宿舎を立てたいので、移動をお願いします」
と、声を掛けて回る。テントの中で睡眠を取っている人はめんどくさそうにしていたけど、仕方ないと了承して場所を開けてくれた。
「ああ、他の場所に移動はしなくてもいいですよ、直ぐ終わりますから」
部屋はテントよりは多少広めで、ベッドと少しの棚があればいいだろう、引き戸の窓も付けようか、両側に階段と中央にエレベータ、そして緊急脱出用のポールも作ろう
イメージを固め、その場所に出現させる、まずは1棟
「どうぞ終わりましたので好きな部屋を取って下さい、後はエレベータを作って終わりですから」
さっきまでテントの中で寝ていた人達は口を開けたまま動こうとはしない、一方俺が病棟を立てたのを既に見ていた人達は、やんややんやの喝采だった。
そして『重力』を付与した魔石をエレベーターにはめて完成した。
一度頭にイメージが入ってしまったら後は簡単だった。次々に宿舎を立てていき、丁度100棟を建て終わるころに、少しだけ眩暈がしたので今日はここまでする
「明日は指令室も作ろうか‥‥壁も作ってみるかな?」
全員に部屋を割り当てられることが出来たのと、皆に褒めて貰えたので俺は心の底から満足する事が出来た。
その日は心地の良い疲労感の中、ぐっすりと眠りにつく‥‥‥
次の日
「町が出来てる‥‥」
ハヤト隊で一番早起きのエクレールが、ハヤト隊が寝泊まりする家のドアを開けたまま呟いた。
3日後
本来偵察が目的ではないが、少しでも軍の為にと偵察に出ていたイズサ隊が数日ぶりに最終キャンプ地に戻ってきた。
イズサ隊長は敵軍がトンネルを使い背後に回っていると判断し、偵察隊が敵と遭遇する地点よりも、もっと後方を調査し、トンネルの出口を探していた。
しかし何の成果も出せないままこの日キャンプ地に戻ることを決定、その部隊には召喚者のポージュとアルフレッドも含まれていた。
「何の成果も出せないまま帰還か‥‥へこむな‥‥」
成果も出せず、疲労だけが溜まった重い足取りで、キャンプ地に足を向けるイズサ隊長
「そんなに気負う事なんかありゃしないさ、無い物はしょうがないだろ?」
この中で最も年長者のポージュがイズサ隊長を慰める
「そうだぞイズサ隊長、もうじき凄いのが来るからな、そいつが来たらもう要塞は落ちたものだ」
アルフレッドが心配するなと言わんばかりに笑う
「破壊の一族だろ? だけどもう2度も失敗してるし、どうにかなるとは思わないぞ」
そんな時先頭を進んでいたイズサ隊隊員の一人が足を止める
「隊長! 前を!」
その一言で他の隊員達が武器を構える、その先頭の隊員が指を指した先には、木々の隙間から巨大な塔の姿が見えていた、ここからでも分かる巨大な塔だった
「あそこはキャンプ地がある場所‥‥何だあれは‥みんな周囲の警戒を怠るなよ」
「「「 おう! 」」」
イズサ隊長以下他の隊員が身構える中、どこかで見たような、見覚えのある塔を見たポージュとアルフレッドは
『ああ、来たんだな』
心の中で思った。
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