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休暇 ②
しおりを挟む一日経ったら、昨日の心霊体験の恐怖は和らいだ。
というか、無かったことにした、もう教会には行かない、行きたくない。
本当は昨日するべきだった事を今日まとめてしようと思う、まず右手の指の治療、第二第三関節の真ん中まではニョキニョキと生えてきたが、まだ時間がかかりそうだ。
しかしそのおかげで長い休暇を貰えている。
任務が終わりましたよー、とゴルジア首相に連絡をした所
「ではこの後は○○の村の~」
とか言い出したので、手の怪我を理由に休暇を貰った、怪我をしてなかったらまたどこかに行かせられる所だった、危ない危ない。
まずは軍本部の治療施設に足を運ぶ、受付を済ませ
「どうしましたかー?」
「指が無くなりましたー」
のやり取りの後、『癒し』魔法(回復)を掛けてもらう、受付から治療までこの間5分ほど、あっという間に治療が終わり
「治るまで毎日通うように」
と言われ治療施設を出る、ニーアやアルフレッドのように『回復』魔法が使える者もいるが、本職である人の方が治りが速い、骨まで無くなっている分時間はかかるが、3週間ほどで完全に完治するそうだ。
指が無いと鍛冶仕事も出来ないから早めに直しておきたい
続いての用事はコンセの村でポージュに言われたこと、喋る召喚獣で尚且つ、自由に行動するオル&トロスを見てポージュは、たいそう驚き俺にこう言ってきた
「そこまでいったらほとんど人じゃないか」
魔法契約は人でないと出来ない、何故か? 自分という明確な意思があり、魔力を自身で作れるから。
一方魔物は契約出来ない、何故か? 魔物には魔力が無い、外から取り入れることは出来るみたいだが、自分自身で作ることが出来ない、だから魔物は契約が出来ないとされている。
召喚獣はどうか? 召喚獣は魔力はある、これは召喚者と繋がっているからそこから引っ張ってこれる、つまり召喚者からの借りもの。
召喚獣は意思はあるのか? あると言う人もいるが、実際は無いとされている、自分の思う通りには動くことが出来ない、召喚者によって無意識に動きを制限されているから。
自由に動けない=自分の意思が無い、よって「個」として認められないから普通は魔法契約が出来ないとされている、これは召喚獣を研究している人たちから聞いた話。
もちろん例外もある、最初から魔法を獲得している召喚獣達
ヤタの元の姿になる召喚獣ニュンターもそうだ
しかし、その例外を外したとしても、俺の召喚獣は本当に勝手に行動することが多い、『ノーム』は勝手に魔法陣に帰って行くし、
『コスモ』は「ヤレ!」と言ってもやらなかったり‥‥‥つまり意思があるのでは? もしかしたら魔法を最初から持っていない召喚獣達も、新たに魔法を契約出来る条件がそろっているんじゃないか?
何て考えた俺は、ミャマーと一緒に最初に契約した魔法陣がある施設に来ている
「これ許可証です」
ゴルジア印の許可証を受け取った職員の人は
「どうぞお通りください」
とあっさり許可してくれた、ゴルジア印は頼もしい
ここで契約出来るのは全部で6属性の魔法、まずは2匹の柴犬を召喚する
「今日は何だ主人」
「今日の御用は何でしょうかご主人」
用事を言う前から尻尾フリフリの二匹を見て、ほっこりする
「今日はな、魔法契約をしてもらいたい、別に失敗してもいいから魔法陣に魔力を通してもらいたいんだ」
「おう、まかせろ」
「出来たらご褒美をお願いします」
「おう出来たらな、何でもしてやるぞ」
「「ワンワンワン!」」
人語も忘れ、犬語ではしゃぎまくる二匹は、魔法陣に向かって全力で走り出した、しかし、魔法陣に触っても光ることは無かった
「ちゃんと魔力を通しているか?」
「やってるけど、うんともすんとも言わないぞ」
終いには魔法陣を爪でひっかく始末、傷がつくからやめなさい
結局、6つの属性全てがダメだった、がっかりして尻尾を垂れさがらせながら帰って行った。
あの二匹は駄目だったけど、他の召喚獣はどうだろう?同じく言葉を話せる『デュラハン』を召喚、馬に乗ったデュラハンが登場する
「主命によりこのデュラハン参上しました、主よ私も魔法契約をすればよろしいのでしょうか?」
「ん? あ、ああ、そうだけど‥‥何で知っているの?」
「先ほどから聞いておりました」
‥‥聞いてた?
「分かってるなら話早い、やって見てくれるか?」
そう言ってデュラハンにお願いするが、何故だか俺の首は真横に傾いていた
「黒だな」
真っ赤になった首を抱えたまま馬を降り、魔法陣に触れようとするが、途中で止めコチラを振り返った
「主よ、もし契約が成功した暁には、その、私にもご褒美を貰えないでしょうか‥‥?」
モジモジしながら聞いてくるデュラハンに、ちょっとだけドキドキする
「お、おう、出来たらな」
ぱぁぁあ! と、音が出そうなほど明るい顔になり意気揚々と魔法陣に触れる、何故か隣にいた馬の方も何故か触れていた。しかし、結果は同じだった。
しょんぼりした顔で馬に乗らず、歩いて自分の魔法陣の中に帰って行った。
結局、他の召喚獣達(ヤタを除く)も魔法契約は出来なかった。
でもまだ諦めない、契約出来る魔法陣はたくさんある、続いて向かったのは『洗浄』、その次に『分離』、どちらも駄目だった、無理なのかな? と思っていたがそうではなかった。次に向かった『収納』の魔法陣で
「出来た、契約出来たぞ!」
「やりましたご主人、成功です!」
「おお! そうか、出来たか! それで広さはどうなってる!?」
なんと、契約出来てしまった、あとで召喚獣を研究している施設の人達に教えてあげよう
ごそごそと鼻先や前足で確認していた2匹は
「「 大体このぐらいで、こんな感じ 」」
と報告してくる、大きさ的にはLサイズのピザの箱3つ位だった、しかしそれでも大したものだ、魔石とか入れることが出来るだけでも俺の『収納』の負担がなくなる
「よしよし良くやった!」
荒く二匹を撫でまわし帰還させる、帰って行くとき
「ご褒美がもらえるぞー!」
オルが喜びながら帰って行った
続けてデュラハン、出て来た時には馬から既に降りており、本体の方と馬の方は共にゆっくりと召喚の魔法陣から出てきた。
俺の方を見向きもせず一言
「主よ、行ってまいります」
どこかしら決意を秘めたような、これから戦場に向かうような‥‥そんな風に感じさせるデュラハンの後ろ姿
本体と馬が共に契約の魔法陣の前に立つ、そして互いを見つめ頷き合ったあと、一緒に魔法陣に触れた
何だか気合が入ってるなー、契約出来たら何をご褒美に上げようかな、‥‥パンツ、パンツがいいな、アイツ黒しか持ってなさそうだし、喜ぶだろう、俺も喜ぶかもしれないし
「契約できました!」
「ヒヒーン!」
「マジで? やったか!」
凄い、続けて契約出来た
「容量はどうなってる!」
「今調べます!」
デュラハンは手を突っ込んだり、首を入れてみたりして容量を確認している、首を入れている時、俺もしゃがんでじっくりと確認をした
やっぱりご褒美はパンツにしよう
だた、デュラハンの横で馬の方も確認をしていた
おや? もしかしてもしかして!
「主よ分かりまし‥‥、しゃがんで何をされているのですか?」
「おお、俺も早急に確認したいことがあってな、で? どうだった」
大きさは特大の洋服ダンスほどの大きさがあった、そして、なんと! 馬の方も契約が出来ていて同じくらいの容量がある『収納』を契約出来ていた。
馬も契約が出来たってことは、馬の方にも意思があるってことだよな、一人と一頭でデュラハンって呼んでいたけど、名前を別々にしたほうがいいかな?
馬のあそこに付いているかを確認してみる
無いな
「お前はもしかしてメスなのか?」
「ブルルン」
肯定してるな、なら
「今日から人型の方をデュラ子、馬の方をハン子と呼んでもいいか? 褒美は別にちゃんとあるから」」
適当だけども、こっちの方が分かりやすいから、駄目かな?
「あ、あああ‥‥我らに個別に名前までいただいて‥‥、この名に恥じぬよう精進したします!」
「ブヒヒヒヒーン!」
よかった、両方とも涙を流して喜んでくれている、‥‥でも本当にこの名前でいいの? 俺なら嫌だけど
デュラ子が帰還する時
「ご褒美を‥‥楽しみに待っています」
潤んだ目で言われドキッとした、この子本当に可愛い
そしてハン子が
「ブヒヒン」
と潤んだ目で鳴き、動物も涙を流すんだなと思った
その後、コスモ・ヤタ・ポッポと失敗し、最後にノーム3体、こちらは見事に成功、3体共ハイタッチで喜んでいた、しかも3体別々に契約が出来ていた。
容量は大体俺と一緒、これでかなりの荷物を携帯することが出来ることになる、そのままノーム3体を引きつれ契約の施設を後にし、少し開けた場所に移動する、俺の『収納』のからノームの『収納』へと移す為だ。
「じゃあこれ、そっちに入れてもらえる?」
『収納』から予備の人工魔石を手渡そうとすると
バシッ!
‥‥手を叩かれた。? 落ちた魔石を拾ってもう一度ノームに‥‥
バシッ!
‥‥もう一度‥‥
バシッ!
‥‥‥‥コノヤロオォー!!
魔石を拾いノームを捕まえ無理やり押し込む
「大人しく入れろ!」
ノームは首を横に振り激しく抵抗する、押したり押し返したりを繰り返していると、残りの2体が「もうやめて!」と言わんばかりに俺ニ縋りつく、俺と格闘していたノームは何故か半裸の状態で、両手で胸を隠すようにして体を反らしている。
何で半裸なんだよ
自分で半裸になったノームは、恥ずかしそうに後ろを向きながら服を直している
やめろ、気色悪い
「で? 何で駄目なんだ」
俺の手から魔石を受け取ると、『収納』に入れるような仕草をするが魔石は一向に入って行かない。
「入れようとしている?」
頷く
「入らないのか?」
頷く
「だからさっき俺の手を叩いたのか?」
頷く
‥‥最初からそうすればいいんじゃないの? さっきの一連の小芝居必要だったか?
イラッとしつつも、こいつらはこんな奴らだったと思い出し
「だったら、何だったらいける?」
と言ってみると、自分が肩から掛けている銃を『収納』に入れていた、じゃあ俺の持っている銃はどうだろう? これも入れることが出来た
その後も刀・槍・弓は駄目だけど、ナイフなら問題なし、俺の装備は駄目で、ノーム達の装備は問題なし、あれやこれやで試している内に、ノームに関係ある物なら入れることが出来ることが分かった、それ以外は全て入れることが出来なかった、そして俺も何となくだけど、これは行けそうだな、これは無理そうだなの判断が何となく分かった、召喚者と召喚獣は繋がっているってのと関係があるのだろう
多分他の召喚獣も同じだろうな‥‥
「よくわかった、お前たちの『収納』に入れる中身の方は後々考えよう、もう戻っていいぞ」
とは言って見たが、こいつらは帰る様子もなく、俺の目の前で両手を出して動かなかった
「ん、何? どうした」
3体は何かを期待しているような目でこちらを見ている、もしかしてこいつら
「契約成功のご褒美が欲しいのか?」
コクコクと3体とも首を縦に振る
褒美と言ってもなー、今欲しいのか?
何をやろうか考えていると、そのうちの1体が、何かを飲むような仕草をして来た
飲み物? 酒かな‥‥、でも一度も上げた事ないし味を知っているはずがない、他に何か一度でも飲ませたことがあるのは‥‥! アレかな‥‥
残り半分になったパナンのシロップを渡してみると、飛び跳ねるように受け取り、興奮を体で表現していた、そして意気揚々と戻っていった
「喧嘩しないで仲良くわけろよ~」
・・・・・・
さて、時間も時間だし、契約の魔法陣周りはまた明日にして‥‥
本来昨日行く予定だった場所に行く
この世界の「死」への考えは日本とは違う、もちろん場所が変われば、国が変われば当たり前だけど。
この世界で死んだとき、魂は1年程この世に存在し、1年したら新しい命に生まれ変わると言われている、この時死んだ人が強い怨念、もしくは大きな悔いがあった時はこの世に留まってしまうという
なので、この世界では死んだら葬式はするが、1年間は墓参りをしてはいけないとされている、それは死んだ人がこの世に残した人が悲しんでいる姿を見て「悔い」を感じ、生まれ変わることを躊躇してしまうから。
葬式が終わると体は焼かれ、骨を細かく砕かれ、小指ほどの大きさの小瓶に入れられ、残りの砕かれた骨は本人の縁のある場所に撒かれる。
小瓶に入れられた砕かれた骨は墓に入れられることになる、墓と言っても実際はただの透明な引き出しだ。小物入れ程の引き出しがいくつもあり、その中の一つに入れられる。
墓参りをする時、家族や関係の深かった人は、その小瓶に向かって自分たちの報告などはしない、何故ならその人はもう生まれ変わっているはずだから、なので
「どうか、今世でも幸せになって下さい」
相手の今の幸福を願う
ミラの骨が入っている小瓶を見つめ、カナル隊に居た時の事を考えていた、あの時自分がもう少しうまくやれていれば‥‥と今更言ってももう遅い、それにあの時はあれが限界だった。
今の俺なら完全に対処出来ていたと思う。
思い出さないようにしているが、たまに頭をよぎることがある、そして夜になると思い出す、死んだとは思えないほどのキレイな顔をしたミラの、意外に重い首
そして、あのマシェルモビアの兵士の顔、あの顔を思い出すだけで腹の中に何かが溜まっていく気がする、あの兵士がもう生まれ変わっていたとしたら、もしそれを‥‥見つけたら‥‥、また‥‥この手で、ナンドデモ‥‥‥
自分の目の前が段々と黒く染まっていくような、そんな感覚が視界を覆って行き‥‥
「ここにいたのかー、探したよ」
突然の呼びかけに、我に帰る
ビックリした―、何?
振り返ってみると、この世界では珍しい銀髪でとてもとても可愛い女の子がそこにいた。
誰?
「やぁ、久しぶりだね、お墓参りかい? もう済んだ? ならさ、またあそこに行こうよ」
一度も見たことが無い女の子がそう言ってくる
その時俺はふと、昔の事を思い出した、高校卒業後に、こんな感じで知らない人から電話がかかって来て呼び出された。
その時の俺は思い出せないだけだと思い、もしかしたら小中の同級生かもしれないと思い、たまたま近くにいたので行って見たところ
正体はハンコ屋だった、馴れ馴れしく話をされ、次第にハンコの話に持っていく人だ。
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何て言って来て、値段を聞いた所10万とか20万とかするなんて言われ、断ると、
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な に が またあそこに行こうだ、絶対この人詐欺の人だ、顔は可愛いけど女は中身が重要なんだよ、お前みたいな平気で人を騙す女とは話もしたくない、近寄るないでよ
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「どちら様って、酷いなー、この前会ったばっかりじゃないかぁ、僕だよネクターだよ」
「ふえっ!?」
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「で、でもその姿!」
「ああ、これかい? マシェルがさー、この姿でハヤトに会いに行けって言ってたんだけど、どういう意味があるのか‥‥君、なんか知ってるかい?」
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