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邪悪
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ひよこのスタンプに、【ゆっくり休んでね】と返信をする。
石段を登ると、昼間とは景色が少し違っていた。
ぼろぼろで剥げかかっていた木製の鳥居が、まるで今建てられたもののように朱色に染められていた。
まるで、デキリコの描いた柱の風景画のようにずらりと灯籠と石畳が奥へと続いている。
祠は、夢の中でみたものにそっくりで先程は何故か祠の内部から外を見ていたのだ。
恐る恐る近づいていくと、後ろから呼び止める声がした。
「駄目だよ、これ以上は近づかないで」
小さな男の子の声だった。
振り返るが誰もいない。
「こっちだよ」
見えない小さな手が私の手首を掴む。
振りほどくのが容易なほどの子供の握力だったので、少しぎょっとしたがされるままに引かれる方に歩みを進めた。
祠からは遠ざかっていき、やがて大きな木の影に誘導された。
「お兄さんの方はね。駄目だった」
「え?」
「こっちだよって言ったんだけど、あちらに行ってしまったんだ」
「もしかして、馬場のこと?」 「たぶん、眼鏡をかけたおでこが広いお兄さんだよ」
恐らく馬場にちがいない。
「あっちって?」
「神様の世界」
「神様?」
「間違って祀られた神様。邪悪なんだ」
男の子の声は真剣そのものだ。
「見つかったら連れていかれるから、僕らは隠れてるんだ」
「僕らってことは、他にもいるの?」
「うん。みんな見つからないように隠れてる」
「私は隠れられないから、見つかっちゃうかな」
大人はきっと、隠れることは難しいだろう。
「神様だけじゃなく、蛙にも気を付けてね。僕はいくね」
「蛙って?」
と呼びかけるが、そこには何の気配もしなかった。
身の危険を感じたのだろうか。
私は、出来るだけ遠くから祠を注意深く観察した。
石段を登ると、昼間とは景色が少し違っていた。
ぼろぼろで剥げかかっていた木製の鳥居が、まるで今建てられたもののように朱色に染められていた。
まるで、デキリコの描いた柱の風景画のようにずらりと灯籠と石畳が奥へと続いている。
祠は、夢の中でみたものにそっくりで先程は何故か祠の内部から外を見ていたのだ。
恐る恐る近づいていくと、後ろから呼び止める声がした。
「駄目だよ、これ以上は近づかないで」
小さな男の子の声だった。
振り返るが誰もいない。
「こっちだよ」
見えない小さな手が私の手首を掴む。
振りほどくのが容易なほどの子供の握力だったので、少しぎょっとしたがされるままに引かれる方に歩みを進めた。
祠からは遠ざかっていき、やがて大きな木の影に誘導された。
「お兄さんの方はね。駄目だった」
「え?」
「こっちだよって言ったんだけど、あちらに行ってしまったんだ」
「もしかして、馬場のこと?」 「たぶん、眼鏡をかけたおでこが広いお兄さんだよ」
恐らく馬場にちがいない。
「あっちって?」
「神様の世界」
「神様?」
「間違って祀られた神様。邪悪なんだ」
男の子の声は真剣そのものだ。
「見つかったら連れていかれるから、僕らは隠れてるんだ」
「僕らってことは、他にもいるの?」
「うん。みんな見つからないように隠れてる」
「私は隠れられないから、見つかっちゃうかな」
大人はきっと、隠れることは難しいだろう。
「神様だけじゃなく、蛙にも気を付けてね。僕はいくね」
「蛙って?」
と呼びかけるが、そこには何の気配もしなかった。
身の危険を感じたのだろうか。
私は、出来るだけ遠くから祠を注意深く観察した。
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