クロノスの子供達

絃屋さん  

文字の大きさ
上 下
41 / 49

嘘から始まる悲劇

しおりを挟む
さきほどより明らかにプックリと膨らんだ下半身を持ち上げて、ゴーフルがベットに這い上がると同時に、強い尿意で開ける事ができなかった病室の扉が開かれた。
「ピピピピピ」
微かではあるが、電子音が聞こえる。
「ごめんなさい、遅くなってしまって」
それはヘスティアとは、別の看護師のようだった。
電子音は、彼女の手に握られた小型の機械から流れている。
「アーシャちゃんのオムツセンサーが鳴っている時に、急にナースコールが入ってしまって」
心底申し訳なさそうに、看護師が言う。
寝たふりをしようとしていたゴーフルにとっては寝耳に水だ。
「ん、あ。僕おねしょしちゃったんでしょうか?」
あくまでも、今起きたという風を装ってそう呟いてみる。
「え、あー、そうみたいね」
看護師の返答の歯切れの悪さが気になる。
「すみません、こんなに遅い時間に」
恥ずかしさを誤魔化そうとするゴーフルの口調は不安定だ。
それを見た看護師は、口許を少し緩めてクスッと笑う。
「ホントにアーシャちゃんは悪い子でちゅね、めっ!」
申し訳なさそうにしていた看護師は、空中でゴーフルのおでこに指を弾き、表情を180℃変える。
その急激な変化に、ゴーフルは嘘を見透かされたのではないかと不安になる。
「このオムツセンサーはね、とっても賢いのよ。外気の湿度と、オムツの中の湿度の変化に反応するだけじゃなくて、患者さんの心拍や血圧などもモニターに送ってくれるの」
看護師は淡々とセンサーの性能について喋る。
「アーシャちゃんに問題です。
センサーが反応した時に、私達が最初になにをすると思う?」
「え……最初に?なんだろう」
ゴーフルはこの急なクイズに戸惑う。
「正解は、部屋の様子をモニターで確認する。でした!」
「!?」
「ふふ、なんでバレてないと思ったのかなぁ。嘘をついて恥ずかしいおもらしが見つかるのを隠したかったのかな?おもらしして怒られるのが怖くてわざと寝たふりをしていたのよね」
「そ、それわ……」
「可愛いなぁ、ちっちゃな子はね。簡単にわかるような嘘をついておもらししてないって言い張るのよね」
「……」
「オムツのおしっこサインは誰がみても黄色になってるのに、僕おもらししてないよぉ~ってね」
「えーと、言おうと思ってたんです。急に看護師さんが入ってきたから……とっさに」
「へぇ、とっさにねぇ」
何を言っても、今の状況ではおもらしを誤魔化そうとしている小さな子供と一緒である。
「ふーん、あくまでも違うって言い張るのね。アーシャちゃんは、おもらししちゃった事をママに教えられない悪い子なのね」
「ち、違います」
「ん~?何が違うのかしら。私が担当している、もっと小さい幼児の子でも素直にちーでちゃった!って教えてくれるのに」
「……」
「あらら、今度はお口も効けなくなっちゃったのかしら。アーシャちゃんは、幼児じゃなくてもう乳児ね」
「違います!」
「えー、だって幼児の子でも、おしっこ出ちゃったって教えてくれるのに、アーシャちゃんはできないでしょ?だったら赤ちゃんそのものだわ」
ゴーフルは反論する言葉を失う。
「私はこの病院では小児科を担当しているの。だから、おもらしやおねしょをしたからって、それを咎めたりはしないわ。でもね、自分が悪い事をしたのに『ごめんなさい』できない悪い子にはちゃんと、お仕置きしないとね」
そういうと、看護師は演技とはいえ怒っている表情を見せた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

処理中です...