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少女探偵・小林声はプールサイドを走らない

第14話

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 社会科室で見立て殺人があったあの日から、美里みさとふみは学校を休んでいた。あれから明日でちょうど一週間になる。

 猟奇的な死体を見てしまったことも確かにショックだったが、一番こたえたのは犯人がふみ香にも悪意を向けていたことだ。しかも、犯人はふみ香が心を許していたクラスメイトだった。

 あの日から、ふみ香は学校に行くことが怖くて堪らなくなってしまっていた。

 ふみ香が自分の部屋のベッドで横になっていると、スマホに着信がある。白旗しらはた誠士郎せいしろうからだ。

「…………」

 無視するつもりだったのだが、机の上でスマホは何時までも震えている。しつこい。あまりにもしつこい。

「……もしもし」
 最後は根負けしてふみ香は電話に出た。

「おるんやったらさっさと出んかい、ワレェェェェ!!」

 ふみ香は電話に出たことを即刻後悔した。

「……白旗先輩、何の用です?」

「『何の用です?』ちゃうわ!! あれから何の連絡も寄越さんと学校にも来ィひんし、LINEラインも未読無視やし!! どんだけ心配した思っとんねん!!」

「…………」

 ガツンと頭を殴られたような気がした。
 ふみ香が現実逃避している間にも、現実にはふみ香のことを想ってくれている人がいたのだ。

 そのことを失念して、ふみ香は自分勝手に自分の殻の中に閉じ籠もっていた。

「……ごめんなさい。何も連絡しなかったことは、その、謝ります」

「美里、お前明日は学校来るよな?」

「……え? 何です突然?」

「返事はハイかイエスや。大体お前、この間の事件で小林こばやしに助けて貰っておいてまだ礼も言ってないやろ?」

 ――小林こえ
 社会科室で起きた見立て殺人で、ふみ香の窮地を救ってくれた恩人だ。
 確かにあのとき、ふみ香は気絶して、気が付いたときには保健室に運ばれていた。それから小林には会っていない。

「……うッ、それは白旗先輩とは関係ないでしょう」

「いいや、関係大ありや!! 我が宿命のライヴァルとして、助手の受けた恩はきちんと礼をせな気が済まへんのや!!」

「……何時から私が白旗先輩の助手に?」

「やかましいッ!! 何でもええから、一回ツラ見せに来い言うてんねん!! 明日の朝7時に部室に集合やからな!! 一秒でも遅れたら承知せんからのォ!!」

 白旗はそう言って一方的に通話を切った。
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