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フレンド

初のオリジナル魔法

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「経験値稼ぎのために、とりあえず失敗しないダウン魔法はかけてね」
「はい」
「あとはこっちで排除する。蜘蛛は生け捕りで」
「カナリア。これにスリープ三回で魔法かけといてくれ」
 ジャスティスが言えば、ジャッジがいきなりカナリアに頼んできた。
「ディッチさん。Mポーションは多めにある?」
「ある。……なるほど」
「とりあえず百個ほどかけてくれ。必要に応じてまた頼むから」
「え!?」
「この銃弾にスリープをかけると、麻酔弾になるんだ。麻酔弾があると、シルクスパイダーの捕獲率があがる」
「わ……分かりました!!」
 急いで魔法を使おうとするカナリアを、全員が止めてきた。
「急がなくていいから。ゆっくりで」
「は……はいっ」
 ゆっくりと言われても、どうしても焦ってしまいそうになる。
「ってか、この子装備紙じゃねぇか! ジャッジとディッチ、二人揃って何やってんだよ」
 唐突にディスカスが叫んだ。
「いや、俺クエスト誘うの今日初めてだし」
「……忘れてた」
「忘れてたじゃないだろうが! どうりでカナリアのHPの減りが早すぎると思った」
 ジャスティスまでもがジャッジを責めている。
「んと、このLVの装備は……」
 カナリアが必死に魔法を唱える脇で、ジャスティスが自分の荷物を漁っていた。
「やべ。男物しかない」
「依頼もの?」
「いや。依頼ついでに作ったオークション出品用。これよりはましな感じだな」
「ないよりはいいだろ。支払いはジャッジにさせることにして、カナリア君に渡せ」
「そのつもり」
 必死に魔法を使っているカナリアは、この会話に混ざれなかった。混ざっていたら、絶対に自分で金を払うと言っていた。
「エンチャントをもう少しかけとく。ディッチさん、防御魔法のエンチャントよろしく」
「おうよ。さすがにこの紙じゃ、俺もこの先怖いわ」
「どんな縛りプレイだよ。ったく」
「すまん」
 何故かジャッジが謝っていた。

「お……終わりました」
「サンキュ。お。丁度いい出来だ」
 ある程度の個数を見たジャッジがそう言って笑った。
「これだけ使ってると、一つ新しい魔法が出来てるはずだ。悪いがそれを保存しててくれ」
「え?」
 ディッチの言葉にカナリアは不思議そうに頭を傾げた。
「ジャッジが丁度いい出来と言ってただろ? ってことはシルクスパイダーを生け捕りにするのに便利な麻酔弾が出来たって事だ。だと、その威力の魔法を記憶させておいた方がいい。だと一回のタップで使えるようになるから、時間短縮になる」
 魔法使用履歴から検索をかけていけばいいと言われたものの、その履歴をどうやって見れるかが分からない。少しばかりうなっていると、ディスカスが指で教えてくれた。
「ありがとうございます」
「お前ら、甘すぎ」
「時間が無い」
「ディス、お前。まさかこのクエ、タイムアタックも目論んでるのか?」
「当たり前だろう。ボスのところまで早く行けばプラチナが出現する鉱脈が見つかる可能性が高いんだ」
 プラチナ、と聞いてカナリアも顔をあげた。
「プラチナ鉱脈を見たいなら、早く済ませようか」
 呆れたようにディッチが呟き、すぐさま「安らぎの眠り」という魔法を登録した。

 これがカナリアオリジナル、初の魔法となった。


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魔法職に関してはジャッジは詳しくありません。なので、魔法もカナリアが使う方法を黙ってみていました。
本来であればオリジナル魔法を作るというクエストもあります。
ただしこれは一定条件を満たさないと出て来ません。ジャッジは魔法をほとんど使わないのででませんし、カナリアも諸事情があって出ない仕様になっています。
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