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始まりの章

繊維の勉強⑴

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 カナリアがこれで分かったのは、植物繊維が二種類、動物繊維が三種類という所までだ。
 現実世界の「綿」に似た素材は、こちらでは「メンモドキ」というらしい。綿花のように花開き、中の綿わたを取るのだが、開いた瞬間に取るのが一番状態がいいとの事。それだけなら簡単だが、実はこの「メンモドキ」、花開く時に状態異常の花粉を撒くのだ。つまり、いい状態で収穫するためには「状態異常」に強くならなくてはならない。採取クエストはそんなにあるわけではないらしい。
 現実世界の「麻」に似た素材は、「アサミタイ」という植物だ。茎から繊維がとれ、あまったものは燃料となり、実は薬として使う場合と油として使う場合もあるらしい。このあたりも現実世界と一緒だというが、それ以外が問題なのだ。生育が早く、茎を切ったり、実を取ったりするとすぐさまそれを補うように成長する。その成長の早さで他者を串刺しにすることもあるというのが、かなり怖いものだ。

 この二つが植物繊維だが、これのどこが「植物繊維」だと言いたくなっていた。

 ……が、そのあと聞いた動物繊維でかなり度肝を抜かれる羽目になった。
「カナリア。……スパイダーシルクのクエストは初期からあったはずだぞ」
 途中から入ってきたジャッジが呆れたように言う。
「……だっ、だって蜘蛛ですよ!? 誰が好んでやりたいと思うんですかっ!!」
 そう、動物繊維の一つはスパイダーシルク。これ自体が大まかに分けると二つに分かれる。一つは初心者クエストでもでてくる、比較的大人しいシルクスパイダーを捕らえるか、殺すかして糸を紡ぎだすものだ。もう一つが上級クエストになり、こちらはかなり好戦的なシルクスパイダーだ。上級クエストの方がやはり、品質的にも上だが採取できるLVがかなり上になってきてしまう。安価で手に入るほうが、需要も多いのが事実だという。
「よく見ると可愛いと言っていた知り合いが……」
「そんなこと知りません! 蜘蛛を可愛いと思えるのが不思議ですっ!!」
 ジャッジの言葉にとっさにカナリアは返した。
「マスター。女性にあのゲテモノを可愛いと思わせるのは無理です。カナリア嬢、あなたのスキルのためです。我慢してください」
「うううう~~~」
 カナリアとしては、確かにシルクに似た素材を使いたい。それでレース編をしたい。蜘蛛を捕らえに行くのが少しばかり辛い。
「ミ・レディ。迷っているところ申し訳ありませんが、他の動物繊維の話をしたいのですが……」
「あ、お願いします!」
 何とか頭を切り替えることに成功したカナリアが、次なる繊維の話を聞くことにした。
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