8 / 37
シュウへの報復3
しおりを挟むPvPはシュウの負けで終わった。
そんなシュウをその場にいた全員が嘲笑う。
――臆病者――と。
「くそっ」
「俺、かなり手加減したんだけどね。魔法の使い方は『TabTapS!』と違うからさ。得意な魔法もあえて使わなかったんだけどね」
さらりとイッセンが追い討ちをかけてきた。
<イッセン、弱い者虐めは君らしくないよ>
自動翻訳が作動して、近くにいた別の男がたしなめていた。
<俺がしたのはただの報復。俺の大事な妹分を傷つけたやつだから>
<それは失礼。だが、「安楽椅子」の中でする必要はあったのかな?>
<あった。そうしないとこいつは臆病で逃げるから>
それだけ言うと、イッセンは厨房の中へ入っていった。
<おや、ジャッジさんとジャスティスさんですか。お二人が揃うところを見るのは久方ぶりです>
「まぁな。ちょいっと嫌がらせとばあさんに嬉しい伝言を持ってきた」
<あなたも彼に嫌がらせをするつもりですか?>
「俺はこいつの無知を見て楽しむ。それが嫌がらせ」
<では、マープルさんへの伝言とは?>
「!!」
「陰険策士様が言ってたが、ホントに無知なんだな。お前は。この店はあいつの母方の祖父母がβ版の頃に作った店。そして今でも続くプレイヤーの憩いの場」
時間がモノを言う、それだけではないとジャッジは言う。
「皆、じいさんやばあさんの人柄に惹かれてこの店に立ち寄るんだ。ばあさんに変わりはないか、ログインしない理由をばあさんの身内が何か知ってないか、その為だよ」
「だからこその殿堂入りとポアロさんが亡くなった時に運営会社を通じて何人ものプレイヤーがその死を悼んだ」
ジャッジの言葉に繋げるようにジャスティスが言う。
<だからこそ、このゲームで初めての殿堂入りを果たした。それ以前からここはたくさんのプレイヤーが集う場所だったが、尚更集まるようになったね>
「ま、これが人徳だな。俺には無理」
あっさりとジャッジが言う。
「あらあら、ジャッジ君はうれしいことを言ってくれるのね」
見た目は二十代のエルフの女性が話に入ってきた。
「事実。現実でもかなり近所づきあいがあるってあいつが言ってたぞ。近所とお裾分けし合ってるくらいだって」
「あら、あの子だってうちに来るときにご近所さんから色々もらってくるんだけど。うちに持ってってくれって言われるらしいけど、本当はあの子に渡したいからなのよ」
「そのあたりはじいさんとばあさんのおかげだって言ってたぞ」
<日本人は謙虚だと言うが、そこまでいくとただの嫌味だ>
「ルーファス、安心しろ。俺はわざとだ。あいつは自己評価が低いからどうしてもそういう言い方しか出来ない」
<それは失礼。マープルさんも謙虚になりすぎないでください>
「そうね。……当たり前のことを当たり前にやって、他人に評価してもらっただけよ」
しれっとマープルが言い、厨房に戻るが、他の面子からの威圧が半端なかった。
日付が変わりそうになるくらいの時間に、やっと友人は来た。
「いつまで待たせる……」
「シュウ、今日は最初からこの時間じゃないと俺は無理だって言ったよな?」
「なっ!?」
「あの時それを無視したのはお前だろ? この店にお前を連れてきてくれって言ったのは確かに先輩だけど、俺はお前を信じてたつもりだった」
「どういう意味だ!?」
「誘ったのは俺だけど、互いに時間が合わなきゃ無理なんだよ。だから時間を合わせようとしたのに、お前は俺の予定を無視した。
悪いけど、他にもこの店には同じ大学のやつらがいるから、事の顛末は大学内にも伝わると思う。俺はお前に二度と関わりたくないから、大学辞めるし」
ざわりと周囲がまたざわついた。
「お前の自己中なやり方にはもううんざりだ」
それだけ言ってジュークは店をあとにしていた。
そして、ジュークの言葉どおり大学内に「我が侭、短気、卑怯者」というレッテルを貼られ噂されることになった。
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
けもみみ幼女、始めました。
暁月りあ
ファンタジー
サービス終了となったVRMMOの中で目覚めたエテルネル。けもみみ幼女となった彼女はサービス終了から100年後の世界で生きることを決意する。カンストプレイヤーが自由気ままにかつての友人達と再開したり、悪人を倒したり、学園に通ったりなんかしちゃう。自由気ままな異世界物語。
*旧作「だってけもみみだもの!!」 内容は序盤から変わっております。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
運極さんが通る
スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。
そして、今日、新作『Live Online』が発売された。
主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
迷い込んだ先で獣人公爵の愛玩動物になりました(R18)
るーろ
恋愛
気がついたら知らない場所にた早川なつほ。異世界人として捕えられ愛玩動物として売られるところを公爵家のエレナ・メルストに買われた。
エレナは兄であるノアへのプレゼンとして_
発情/甘々?/若干無理矢理/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる