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第二章
act.18 僕と若葉が初詣に行った話<前編>
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新年も明けて四日目、今日は金曜日。家に帰省していた兄は昨夜大学院へと戻り、朝から父親は初出勤だといって仕事に行き、徐々にお正月モードも終わろうとしていた。
ここ最近の兄は、帰省してもすぐに二~三日で大学院へと帰るようになっていた。学部生の時はもう少し長く家にいたのだけれど、去年院生になってから更に研究が忙しくなったという。「いま培養してる新しいバチルスちゃんが心配だから帰るよ。この前のバチルスちゃんは何かの手違いで全滅しちゃったからさ……」、などと真剣な表情で語る兄を見て僕は理系に進むのをやめようかと思いはじめ、その進路相談には母親も真顔で同意をしてくれた。
そんなことはさておき、今日は正月の四日目で僕の学校が始まるのは七日の月曜日から。もう少し正月気分を味わいたい僕は、いつものようにリビングで寝転がりながらテレビを見ようと思ったのだった。
ソファに座りテレビのスイッチを入れる。床に落ちていたクッションを足で拾いあげ、さあ寝転んで至福の時を迎えようとしたその瞬間。――玄関のインターフォンがピンポンと鳴った。これは面倒くさい予感がプンプンと匂う。
「あら、誰かしら」などと母親が言って玄関に向かうけれど、こんな時に来るやつは僕の知る限り一人しかいない。「母さん、出なくていいから」などと言えるはずもなく、僕は虚しく母親の後ろ姿を見送った。
△
「若葉ちゃん、お土産なんていいのに……、いつも貰ってばっかりで」
「いつも同じもので飽きちゃうかな、って思ったんだけど。でもやっぱりこれが一番美味しいし!」
若葉がお土産だといって持ってきたのは冷凍の『ずんだ餅』。カズがいた頃からずっと貰っている仙台土産だった。
初めてカズからずんだ餅を貰った時、僕にはあのみどり色の物体が不気味に思えた。そんな第一印象は最悪だったずんだ餅だけれど、カズに急かされて嫌々ながらも口に入れた瞬間、世の中にこんな美味しい餅があったのかと驚いたものだ。
『な、綾彦。これ美味いだろ』、そう言ってカズが得意げな表情をしていたっけ、と僕が回想をしていると、頭の上から若葉が声を掛けてくる。
「ねえ綾兄、どうせ今日もヒマなんでしょ?」
「どうせ、ってなんだよ。俺いまから忙しいんだけど、なに」
「はあ! 綾兄なに言ってんの? 見るからにヒマそうにしてるじゃん、どんな用事があるっていうの?」
不機嫌そうに少し頬を膨らませた若葉は、腕組みをしながら僕を見下ろしていた。今日の僕に用事なんて無いことを予想していながら、どんな用事かと困らせるようなことを言う。
「そうだな、そろそろ正月も明けたし、今日はガッツリ勉強を……」
「嘘つきっ!」
たとえ本当に嘘でも、そのウソを最後まで言わせてもらえないまま、僕は若葉に嘘つき呼ばわりされる。
「綾兄、いまからここで寝転がってテレビ見ようとしてただけだよね、そんなのだったら初詣に行こうよ。去年も行ったでしょ!」
やっぱり若葉の目的は初詣か……。確か若葉と行った去年の初詣は、北からの季節風が強くて身体が冷え冷えになった。高校の合格祈願に行ったのにあやうく風邪をひきかけたことを思い出す。
外を見る限り今年はそこまで風が強そうではないものの、ソファでごろ寝を捨てて初詣をするほどの願い事も、――いまのところは無い。
「若葉だって昨日仙台から帰ってきたばかりで疲れてるだろ、今日くらいゆっくり休養した方がいいんじゃないか? 悪いこと言わないから今日は休んどけよ」
「なにそれ、全然心がこもってない! わたしは疲れてないし、お正月の間ずっと家でゴロゴロしてた綾兄の方が不健康だからね。ねえおばさん、綾兄はずっと家でゴロゴロしてたんでしょ? わかってるもん」
こいつ、年末から仙台に行っていたのに、どうして僕が正月のあいだ家から出なかったことを知ってるんだ。エスパーかよ。
「綾彦、若葉ちゃんに貰ったずんだ餅はあなたが半分以上食べるんでしょ? ゴロゴロしてないで初詣に行ったら?」
ついには僕の母親を味方に引き込んだ若葉。フフン、どうだ、と言わんばかりに片方の唇をゆがめてニヤリと笑う。
「わかった、わかった、わかりました。初詣に行くよ、行かせてもらいます……。はあ……」
僕はわざと大きなため息をついて立ち上がり、洗面所へと向かった。後ろの方から追い打ちをかけるように若葉が叫ぶ。
「綾兄、その寝グセもちゃんと直して! それからもちろん歯は磨いたんだよね?」
「へいへい、わかったよ……」
――若葉よ、おまえは小姑か。
△
若葉による衣装チェックを終えた僕は、冬晴れの冷んやりとした空の下に引っ張り出された。
「で、若葉。初詣はどこに行くつもりなんだ?」
「そんなこと言って! 例えばわたしが成田山に行きたいとか言っても、どうせ綾兄は『遠い』とか『混んでる』とか言って却下するんでしょ」
ジトッとした目で若葉が僕を見上げる。さすがに付き合いが長いというべきか、僕のことをよく知っている。
「ああ、さすがに成田山とか無理無理。昔家族で行ったけど、すごい人混みだから。そうだな、近場でいいなら鎌ヶ谷大仏とかじゃダメか?」
「綾兄……、それ本気で言ってんの? 信じられない! ねえ本気? 冗談だよね」
鎌ヶ谷市には『鎌ヶ谷大仏』と呼ばれる仏像がある。最寄りの駅名も鎌ヶ谷大仏駅だし、鎌ヶ谷大仏交番も存在する。近くのコンビニの名前も鎌ヶ谷大仏店だ。
――ところが、その大仏様。すぐ目の前の道を歩いても、半数以上の人は大仏に気づかずに通り過ぎてしまう存在感の無さ。つまり、とても小さな大仏様、それが鎌ヶ谷大仏なのだ。もちろん初詣に行く人もいるだろうけれど、おそらくごく少数。
「じょ、冗談に決まってるだろ。ああ、そうだなあ……、道野辺八幡宮……だと、近すぎて不満そうな顔だな、若葉」
どうやら若葉は家から歩いて行ける程度のお宮さんだと、とてもご不満のご様子。ギロッとした目で僕を睨む。
「ねえ綾兄、去年行ったところに連れて行ってよ。そこそこ賑やかだったし、そんなに遠くもないし」
「船橋大神宮か? そうだな、今日はもう四日だからそこまで混んでないかもなあ、じゃあそうするか」
船橋にある船橋大神宮は通称で、本当の名前は意富比神社。こんなの初見では絶対に読めない。
ここからだと電車と徒歩で合わせて三十分程度。適当な遠さだし、三ヶ日が終わって人混みも嫌になるほどじゃないだろう。確か去年若葉と行ったのは一月の五日だったような気がするし、そこに決めた。
△
駅で切符を買って自動改札を通る。この改札は今まで何度となく若葉と通ったけれど、あと三ヶ月も経つと若葉も大人料金。隣でピヨピヨと子ども料金のチャイムが鳴ることも無くなる。それを思うとちょっと寂しいような、今までが長かったような、複雑で不思議な気持ちになった。
「そうだ綾兄、これもお土産! わたしが選んだんだよ、これあげる」
電車の座席に座ると、隣の若葉がポケットからなにやら小袋を取り出した。封を開けて中身を見てみると、入っていたのは携帯のストラップ。それもやけにカッコよくデフォルメされた独眼竜政宗の携帯ストラップが、僕の方を隻眼で睨んでいた。
細面の精悍な顔つき、金色に輝く兜の三日月、洋風がかった甲冑に太刀を握る手。どこからどう見ても某有名戦国ゲームのキャラクターそのものだ。
「ありがとう若葉……。えっと、これって」
「ん? 携帯ストラップだけど? 綾兄、携帯にストラップつけて無かったでしょ、すごくカッコいいから仙台で買ってきたんだ! つけてみてよ!」
僕はそのすごくカッコいい政宗のストラップを、言われる通りに自分の携帯電話につけてみた。
――これは、いわゆる歴女の携帯みたいになったじゃないか。政宗って茶髪だったのか?
そんな言葉をグッと抑えて、僕は手のひらの携帯をもう一度見つめる。精悍な隻眼の政宗と目が合う。
「どう? 気に入ってくれた?」
「うん、ありがとう。これで俺の携帯だってすぐに分かるようになったよ……」
無邪気な笑顔を見せる若葉に、僕はそう返事するより他は無かった。
そんな独眼竜政宗のストラップ。
後日、兜の三日月の部分がポケットに引っかかって何度も携帯を落としそうになっても、若葉に貰った手前、取って外すわけにはいかなかった。
ここ最近の兄は、帰省してもすぐに二~三日で大学院へと帰るようになっていた。学部生の時はもう少し長く家にいたのだけれど、去年院生になってから更に研究が忙しくなったという。「いま培養してる新しいバチルスちゃんが心配だから帰るよ。この前のバチルスちゃんは何かの手違いで全滅しちゃったからさ……」、などと真剣な表情で語る兄を見て僕は理系に進むのをやめようかと思いはじめ、その進路相談には母親も真顔で同意をしてくれた。
そんなことはさておき、今日は正月の四日目で僕の学校が始まるのは七日の月曜日から。もう少し正月気分を味わいたい僕は、いつものようにリビングで寝転がりながらテレビを見ようと思ったのだった。
ソファに座りテレビのスイッチを入れる。床に落ちていたクッションを足で拾いあげ、さあ寝転んで至福の時を迎えようとしたその瞬間。――玄関のインターフォンがピンポンと鳴った。これは面倒くさい予感がプンプンと匂う。
「あら、誰かしら」などと母親が言って玄関に向かうけれど、こんな時に来るやつは僕の知る限り一人しかいない。「母さん、出なくていいから」などと言えるはずもなく、僕は虚しく母親の後ろ姿を見送った。
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「若葉ちゃん、お土産なんていいのに……、いつも貰ってばっかりで」
「いつも同じもので飽きちゃうかな、って思ったんだけど。でもやっぱりこれが一番美味しいし!」
若葉がお土産だといって持ってきたのは冷凍の『ずんだ餅』。カズがいた頃からずっと貰っている仙台土産だった。
初めてカズからずんだ餅を貰った時、僕にはあのみどり色の物体が不気味に思えた。そんな第一印象は最悪だったずんだ餅だけれど、カズに急かされて嫌々ながらも口に入れた瞬間、世の中にこんな美味しい餅があったのかと驚いたものだ。
『な、綾彦。これ美味いだろ』、そう言ってカズが得意げな表情をしていたっけ、と僕が回想をしていると、頭の上から若葉が声を掛けてくる。
「ねえ綾兄、どうせ今日もヒマなんでしょ?」
「どうせ、ってなんだよ。俺いまから忙しいんだけど、なに」
「はあ! 綾兄なに言ってんの? 見るからにヒマそうにしてるじゃん、どんな用事があるっていうの?」
不機嫌そうに少し頬を膨らませた若葉は、腕組みをしながら僕を見下ろしていた。今日の僕に用事なんて無いことを予想していながら、どんな用事かと困らせるようなことを言う。
「そうだな、そろそろ正月も明けたし、今日はガッツリ勉強を……」
「嘘つきっ!」
たとえ本当に嘘でも、そのウソを最後まで言わせてもらえないまま、僕は若葉に嘘つき呼ばわりされる。
「綾兄、いまからここで寝転がってテレビ見ようとしてただけだよね、そんなのだったら初詣に行こうよ。去年も行ったでしょ!」
やっぱり若葉の目的は初詣か……。確か若葉と行った去年の初詣は、北からの季節風が強くて身体が冷え冷えになった。高校の合格祈願に行ったのにあやうく風邪をひきかけたことを思い出す。
外を見る限り今年はそこまで風が強そうではないものの、ソファでごろ寝を捨てて初詣をするほどの願い事も、――いまのところは無い。
「若葉だって昨日仙台から帰ってきたばかりで疲れてるだろ、今日くらいゆっくり休養した方がいいんじゃないか? 悪いこと言わないから今日は休んどけよ」
「なにそれ、全然心がこもってない! わたしは疲れてないし、お正月の間ずっと家でゴロゴロしてた綾兄の方が不健康だからね。ねえおばさん、綾兄はずっと家でゴロゴロしてたんでしょ? わかってるもん」
こいつ、年末から仙台に行っていたのに、どうして僕が正月のあいだ家から出なかったことを知ってるんだ。エスパーかよ。
「綾彦、若葉ちゃんに貰ったずんだ餅はあなたが半分以上食べるんでしょ? ゴロゴロしてないで初詣に行ったら?」
ついには僕の母親を味方に引き込んだ若葉。フフン、どうだ、と言わんばかりに片方の唇をゆがめてニヤリと笑う。
「わかった、わかった、わかりました。初詣に行くよ、行かせてもらいます……。はあ……」
僕はわざと大きなため息をついて立ち上がり、洗面所へと向かった。後ろの方から追い打ちをかけるように若葉が叫ぶ。
「綾兄、その寝グセもちゃんと直して! それからもちろん歯は磨いたんだよね?」
「へいへい、わかったよ……」
――若葉よ、おまえは小姑か。
△
若葉による衣装チェックを終えた僕は、冬晴れの冷んやりとした空の下に引っ張り出された。
「で、若葉。初詣はどこに行くつもりなんだ?」
「そんなこと言って! 例えばわたしが成田山に行きたいとか言っても、どうせ綾兄は『遠い』とか『混んでる』とか言って却下するんでしょ」
ジトッとした目で若葉が僕を見上げる。さすがに付き合いが長いというべきか、僕のことをよく知っている。
「ああ、さすがに成田山とか無理無理。昔家族で行ったけど、すごい人混みだから。そうだな、近場でいいなら鎌ヶ谷大仏とかじゃダメか?」
「綾兄……、それ本気で言ってんの? 信じられない! ねえ本気? 冗談だよね」
鎌ヶ谷市には『鎌ヶ谷大仏』と呼ばれる仏像がある。最寄りの駅名も鎌ヶ谷大仏駅だし、鎌ヶ谷大仏交番も存在する。近くのコンビニの名前も鎌ヶ谷大仏店だ。
――ところが、その大仏様。すぐ目の前の道を歩いても、半数以上の人は大仏に気づかずに通り過ぎてしまう存在感の無さ。つまり、とても小さな大仏様、それが鎌ヶ谷大仏なのだ。もちろん初詣に行く人もいるだろうけれど、おそらくごく少数。
「じょ、冗談に決まってるだろ。ああ、そうだなあ……、道野辺八幡宮……だと、近すぎて不満そうな顔だな、若葉」
どうやら若葉は家から歩いて行ける程度のお宮さんだと、とてもご不満のご様子。ギロッとした目で僕を睨む。
「ねえ綾兄、去年行ったところに連れて行ってよ。そこそこ賑やかだったし、そんなに遠くもないし」
「船橋大神宮か? そうだな、今日はもう四日だからそこまで混んでないかもなあ、じゃあそうするか」
船橋にある船橋大神宮は通称で、本当の名前は意富比神社。こんなの初見では絶対に読めない。
ここからだと電車と徒歩で合わせて三十分程度。適当な遠さだし、三ヶ日が終わって人混みも嫌になるほどじゃないだろう。確か去年若葉と行ったのは一月の五日だったような気がするし、そこに決めた。
△
駅で切符を買って自動改札を通る。この改札は今まで何度となく若葉と通ったけれど、あと三ヶ月も経つと若葉も大人料金。隣でピヨピヨと子ども料金のチャイムが鳴ることも無くなる。それを思うとちょっと寂しいような、今までが長かったような、複雑で不思議な気持ちになった。
「そうだ綾兄、これもお土産! わたしが選んだんだよ、これあげる」
電車の座席に座ると、隣の若葉がポケットからなにやら小袋を取り出した。封を開けて中身を見てみると、入っていたのは携帯のストラップ。それもやけにカッコよくデフォルメされた独眼竜政宗の携帯ストラップが、僕の方を隻眼で睨んでいた。
細面の精悍な顔つき、金色に輝く兜の三日月、洋風がかった甲冑に太刀を握る手。どこからどう見ても某有名戦国ゲームのキャラクターそのものだ。
「ありがとう若葉……。えっと、これって」
「ん? 携帯ストラップだけど? 綾兄、携帯にストラップつけて無かったでしょ、すごくカッコいいから仙台で買ってきたんだ! つけてみてよ!」
僕はそのすごくカッコいい政宗のストラップを、言われる通りに自分の携帯電話につけてみた。
――これは、いわゆる歴女の携帯みたいになったじゃないか。政宗って茶髪だったのか?
そんな言葉をグッと抑えて、僕は手のひらの携帯をもう一度見つめる。精悍な隻眼の政宗と目が合う。
「どう? 気に入ってくれた?」
「うん、ありがとう。これで俺の携帯だってすぐに分かるようになったよ……」
無邪気な笑顔を見せる若葉に、僕はそう返事するより他は無かった。
そんな独眼竜政宗のストラップ。
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