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向かうはローレス領
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さて何を話そうかと思案して、裏ダンジョンを話す上で有名なギミックが真っ先に思い浮かんだ。ダンジョン調査や攻略は、普通に地上でモンスターと戦うのとは、考え方が全く違う。
ただ出くわしたモンスターを倒せばいいという考えでは、ダンジョンは攻略できないのだ。それをどうやってギィリに分かってもらうか。
「分かりました。そうですね、裏ダンジョンで有名なギミックのひとつ、<縛りギミック>についてお話しましょうか」
「それは私も皇都を出発する前に城の資料庫で読んだわ。魔法やスキルの類が一切が使えなくなるギミックね」
ギィリの話にその通りだと頷いた。今から話そうとしている裏ダンジョンはゴルリア国のダンジョンだが、ダンジョン攻略経験が少ないギィリにギミックを説明するのに、最も適したギミックだと言えた。
「そうです。しかし、このギミックは反対のパターンもあるのです」
「反対って?魔法やスキルしか使えなくなるってこと?」
今度はレースウィックが首をかしげて尋ねてきたが、着眼点は正しい。
事前に帝国側からダンジョンへ向かう人選は聞いていた。帝国側から出す3名のうちギィリを除いた残り2名は任せたので俺 が物申すことはないのだが、
(まさか、普通のダンジョンにすら入ったことのないレースウィックを選ぶとは思ってなかったな。てっきりギィリ自身がダンジョン経験が少ないって言っていたから、てっきりダンジョン経験豊富なやつを選ぶと思ってたのに)
しかし、対応は素早いし、なにより思考に柔軟性がある。経験がないから思い込みに縛られない。
若いからこその発想力に改めて気づかされた。
「当たりです。さすがレースウィックさんですね。着眼点がしっかりしている。ゴルリア国の裏ダンジョンは地下1階から5階のフロアで<縛りギミック>が発動しているんですが、毎階フロアごとにランダムに<縛りギミック>が入れ替わるんです」
ストレートに褒められて嬉しかったのか、レースウィックは頬をほんのり赤らめ恥ずかしそうに俯いた。
「地下1階は魔法とスキルが一切使えず、剣や矢などの物理攻撃しかモンスターに通じない。かと言って、地下2階に進めば、反対に剣や矢の物理攻撃は一切通じず、魔法とスキル攻撃しか届かない。階を降りるごとにどちらの<縛りギミック>が発動するのか不明で、ランダムなんです」
まさにギミックというのに相応しい<縛りプレイ>だ。剣や矢などの物理攻撃特化してはいけないし、魔法やスキル攻撃特化してもいけない。PTの構成が鍵になる。
(俺なら物理攻撃も魔法攻撃も両方いけるから<縛りプレイ>くらい問題ないけど、普通の冒険者PTならしっかり対策しておかないと最悪全滅だ)
だが俺はこの程度の<縛りギミック>なら簡単な方だと思っている。
攻撃が何も通じないわけではない。俺のように物理攻撃も魔法攻撃も両方いける者であれば、何も難しくないからだ。俺ではなく、剣魔両方いけるフィリフェルノ一人でも攻略できるだろう。
しかし、ダンジョンギミックを攻略する上で重要なのは、攻撃が通用するかどうかではない。
次にそれを説明しようとしたとき、ギィリは瞳を細め、小さく唸った。
「仮に縛りギミックが発動しても、今回のPTであれば対処できるけれど、…………、なるほど、私たちはまずそのギミックがどういったものか気づいて、攻略方法を考えつかなければいけないのね。アンフェルディス殿たちからギミックの種類を聞いたり、本からの知識だけでは通用しないパターンがでてくるかもしれないわ」
そういうからには、皇都でかなりの量のダンジョンに関する本をギィリは読んだのだろうと察せられた。
(俺が今回のダンジョン調査で、ギィリの実力を測るって発破かけちゃったもんなー。それで出来る限りダンジョンの情報を事前に得ようとしたってことか)
しかも本を読んで知識を得るだけでなく、<攻略方法を自分たちで考える>という思考にギィリ自らたどり着いたことに、内心ギィリの評価を上げる。知識はあくまで知識だ。その知識をどう生かすかで知恵になる。
「ええ、そこが新しく出現したダンジョンでは一番重要になります。ギミックはダンジョンごとに様々です。すでにギミックの攻略方法が分かっていれば対処しようがありますが、全く情報がなければ、自分たちで攻略を考えなければいけません。皆さんの強さは疑う必要はありませんが、実際ダンジョンに入れば、モンスターはもちろん、ダンジョン内の通路におかしな点はないかとか、そういった注意力も必要になります」
それこそが『攻略』の鍵になる。
モンスターの動き、攻撃の種類、周囲の変化、全てに神経を張り巡らせて、攻略の糸口を自ら探し考える。他のダンジョンのギミック情報も大事だが、最も大事なのは攻略を自ら考えるという思考力だ。
「攻略を自分たちで考える姿勢が大事ということなのね。レイを疑っていたわけではないけれど、私の考えが全くなっていなかったことに気づかされたわ。まさか他のダンジョン情報を聞こうとして、ダンジョン攻略の姿勢を説かれるなんて。ありがとう」
「えー?ギィリ様ならどんなギミックが来ても簡単に看破できると思いますよー?」
「その自惚れが敵ということよ。知識は活用できなければ意味はないわ」
ギィリと俺が何について話しているのか、レースウィックは足をぶらぶらさせながら理解半分といった感じで納得していない様子だったが、ギィリがそれ以上何も言わないのであれば、俺が口出す必要はないだろう。
(上手く話しをまとめられたけど、他の裏ダンジョンのギミックについてギルド受付に過ぎない俺が詳しく解説したら、それはそれでおかしすぎるからな。冒険者たちから聞いた話ってのも胡散臭くなるし、うまいこと<攻略のための思考>に話をもっていけてよかったぜ………)
ゴルリア国の裏ダンジョンの<縛りギミック>は有名だから、ギミック内容を説明しても問題はない。
けれど、自分が説明することなく<攻略のための思考>にギィリ自ら考え至った。これは良い意味で評価されるべき点だ。
無事に今回のダンジョンの調査が終わって皇都で報告を聞くときに、少し他のダンジョンギミックについてギィリに話してもいいかもしれない。その知識もギィリであれば知恵として活用してくれるだろう。
ただ出くわしたモンスターを倒せばいいという考えでは、ダンジョンは攻略できないのだ。それをどうやってギィリに分かってもらうか。
「分かりました。そうですね、裏ダンジョンで有名なギミックのひとつ、<縛りギミック>についてお話しましょうか」
「それは私も皇都を出発する前に城の資料庫で読んだわ。魔法やスキルの類が一切が使えなくなるギミックね」
ギィリの話にその通りだと頷いた。今から話そうとしている裏ダンジョンはゴルリア国のダンジョンだが、ダンジョン攻略経験が少ないギィリにギミックを説明するのに、最も適したギミックだと言えた。
「そうです。しかし、このギミックは反対のパターンもあるのです」
「反対って?魔法やスキルしか使えなくなるってこと?」
今度はレースウィックが首をかしげて尋ねてきたが、着眼点は正しい。
事前に帝国側からダンジョンへ向かう人選は聞いていた。帝国側から出す3名のうちギィリを除いた残り2名は任せたので俺 が物申すことはないのだが、
(まさか、普通のダンジョンにすら入ったことのないレースウィックを選ぶとは思ってなかったな。てっきりギィリ自身がダンジョン経験が少ないって言っていたから、てっきりダンジョン経験豊富なやつを選ぶと思ってたのに)
しかし、対応は素早いし、なにより思考に柔軟性がある。経験がないから思い込みに縛られない。
若いからこその発想力に改めて気づかされた。
「当たりです。さすがレースウィックさんですね。着眼点がしっかりしている。ゴルリア国の裏ダンジョンは地下1階から5階のフロアで<縛りギミック>が発動しているんですが、毎階フロアごとにランダムに<縛りギミック>が入れ替わるんです」
ストレートに褒められて嬉しかったのか、レースウィックは頬をほんのり赤らめ恥ずかしそうに俯いた。
「地下1階は魔法とスキルが一切使えず、剣や矢などの物理攻撃しかモンスターに通じない。かと言って、地下2階に進めば、反対に剣や矢の物理攻撃は一切通じず、魔法とスキル攻撃しか届かない。階を降りるごとにどちらの<縛りギミック>が発動するのか不明で、ランダムなんです」
まさにギミックというのに相応しい<縛りプレイ>だ。剣や矢などの物理攻撃特化してはいけないし、魔法やスキル攻撃特化してもいけない。PTの構成が鍵になる。
(俺なら物理攻撃も魔法攻撃も両方いけるから<縛りプレイ>くらい問題ないけど、普通の冒険者PTならしっかり対策しておかないと最悪全滅だ)
だが俺はこの程度の<縛りギミック>なら簡単な方だと思っている。
攻撃が何も通じないわけではない。俺のように物理攻撃も魔法攻撃も両方いける者であれば、何も難しくないからだ。俺ではなく、剣魔両方いけるフィリフェルノ一人でも攻略できるだろう。
しかし、ダンジョンギミックを攻略する上で重要なのは、攻撃が通用するかどうかではない。
次にそれを説明しようとしたとき、ギィリは瞳を細め、小さく唸った。
「仮に縛りギミックが発動しても、今回のPTであれば対処できるけれど、…………、なるほど、私たちはまずそのギミックがどういったものか気づいて、攻略方法を考えつかなければいけないのね。アンフェルディス殿たちからギミックの種類を聞いたり、本からの知識だけでは通用しないパターンがでてくるかもしれないわ」
そういうからには、皇都でかなりの量のダンジョンに関する本をギィリは読んだのだろうと察せられた。
(俺が今回のダンジョン調査で、ギィリの実力を測るって発破かけちゃったもんなー。それで出来る限りダンジョンの情報を事前に得ようとしたってことか)
しかも本を読んで知識を得るだけでなく、<攻略方法を自分たちで考える>という思考にギィリ自らたどり着いたことに、内心ギィリの評価を上げる。知識はあくまで知識だ。その知識をどう生かすかで知恵になる。
「ええ、そこが新しく出現したダンジョンでは一番重要になります。ギミックはダンジョンごとに様々です。すでにギミックの攻略方法が分かっていれば対処しようがありますが、全く情報がなければ、自分たちで攻略を考えなければいけません。皆さんの強さは疑う必要はありませんが、実際ダンジョンに入れば、モンスターはもちろん、ダンジョン内の通路におかしな点はないかとか、そういった注意力も必要になります」
それこそが『攻略』の鍵になる。
モンスターの動き、攻撃の種類、周囲の変化、全てに神経を張り巡らせて、攻略の糸口を自ら探し考える。他のダンジョンのギミック情報も大事だが、最も大事なのは攻略を自ら考えるという思考力だ。
「攻略を自分たちで考える姿勢が大事ということなのね。レイを疑っていたわけではないけれど、私の考えが全くなっていなかったことに気づかされたわ。まさか他のダンジョン情報を聞こうとして、ダンジョン攻略の姿勢を説かれるなんて。ありがとう」
「えー?ギィリ様ならどんなギミックが来ても簡単に看破できると思いますよー?」
「その自惚れが敵ということよ。知識は活用できなければ意味はないわ」
ギィリと俺が何について話しているのか、レースウィックは足をぶらぶらさせながら理解半分といった感じで納得していない様子だったが、ギィリがそれ以上何も言わないのであれば、俺が口出す必要はないだろう。
(上手く話しをまとめられたけど、他の裏ダンジョンのギミックについてギルド受付に過ぎない俺が詳しく解説したら、それはそれでおかしすぎるからな。冒険者たちから聞いた話ってのも胡散臭くなるし、うまいこと<攻略のための思考>に話をもっていけてよかったぜ………)
ゴルリア国の裏ダンジョンの<縛りギミック>は有名だから、ギミック内容を説明しても問題はない。
けれど、自分が説明することなく<攻略のための思考>にギィリ自ら考え至った。これは良い意味で評価されるべき点だ。
無事に今回のダンジョンの調査が終わって皇都で報告を聞くときに、少し他のダンジョンギミックについてギィリに話してもいいかもしれない。その知識もギィリであれば知恵として活用してくれるだろう。
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