無限の成長 ～虐げられし少年、貴族を蹴散らし頂点へ～

第2章：冒険者のはじまり

第18話：新たな地への派遣

　銀級への昇格試験を通過した俺に、新たな挑戦が与えられた。ギルドからの初めての正式な派遣任務だ。目的地は隣街フィルガンの周辺地域で、ここ最近、頻繁にモンスターが出現しているという。

　フィルガンとその周辺の村々では、異変による被害が報告されており、現地の冒険者たちとの協力が必要とされていた。初めて経験する街での任務、他の冒険者との連携、そして未知の環境で自分の力を試す絶好の機会だった。

　ギルドホールで、リリアンが微笑みを浮かべながら召集の理由を説明してくれた。

「アレクシスさん、今回の任務では他の街の冒険者とも協力することになるわ。初めての土地で大変でしょうけど、新しい出会いや経験が、きっと君をより強くしてくれるはずよ。」

　彼女の励ましを胸に、フィルガンへの道を進むことに決めた。心強い仲間であるクリスやサラも同行し、彼らとは過去の試練を共に乗り越えてきた経験から、互いの強みと弱みもよく理解し合っていた。

　共に過ごしてきた時間があるからこそ、少しの目配せや動きで通じ合える仲間だ。

　数日後、街道を抜け、ようやくフィルガンの街並みが視界に入ってきた。古びた石造りの建物が立ち並ぶ街は、外見こそ静かだが、通りには冒険者や商人たちが行き交い、活気に溢れていた。

　到着したギルド支部の入り口には、各地から集まった冒険者たちが集結している。彼らの精悍な顔つきや鋭い視線に、改めて身が引き締まる思いだ。

「アレクシス、君が今回の任務に参加する新米の銀級か？」

　背後から重みのある声が聞こえた。振り向くと、筋骨隆々の体格を持つ男が立っていた。彼の名はレオ。フィルガンで名を馳せる熟練の冒険者で、彼の活躍はこの街にいる誰もが知るほどだ。

　鋭い眼差しが俺を見据え、その奥にはどこか探るような好奇の光が浮かんでいた。

「はい、そうです。今回の任務でしっかり経験を積んでいきたいと思っています」

　俺がそう返すと、レオは満足げに頷き、早速フィルガン周辺で気をつけるべきことを教えてくれた。

「この辺りには、視界が悪い場所に潜む獰猛なグリズムリザードがよく出没する。奴らは鋭い爪での攻撃を得意とし、森の薄暗い場所に潜む習性がある。初めてこの地で戦う冒険者がよく被害に遭っている。油断するなよ」

　レオの言葉に緊張が走るが、ここは未知の環境での戦いを経験するチャンスだ。教えをしっかりと胸に刻み、俺たちはすぐに指定された村へと向かった。

　森を抜け、ようやく討伐指定されたエリアに入る頃、何かがこちらを見張るような気配を感じた。草陰に目を凝らすと、低く唸り声が聞こえ、灰色の鱗に覆われたグリズムリザードが、こちらを睨みつけていた。

　体長は身の丈を超えるほどで、鋭い爪と太い尾が力強く地面に打ちつけられている。

「アレクシス、来るぞ！構えろ！」とクリスが緊張した声で促す。

　息を整え、剣を構え直す。リリアンやレオの指示が頭をよぎる。

「視界が悪い森では油断するな。冷静さを保て」。

　グリズムリザードが唸りを上げ、鋭い爪での一撃をこちらに繰り出す。すかさず避け、クリスと連携して体勢を整えながら反撃の隙を窺った。

「サラ、右側から回り込んで！」

　サラが即座に頷き、隙をつくように回り込み、矢を放つ。矢はリザードの後ろ足に突き刺さり、奴の動きが一瞬鈍る。その瞬間を見逃さず、俺はクリスと共に剣を振りかざし、渾身の力で奴の脇腹に打ち込んだ。

　鋭い金属音が鳴り響き、体の重みが剣を通して感じられるが、何とか一匹を討伐することに成功した。

「やった……！これで一匹片付いたな」

　安堵の息をつきながら、周囲を確認すると、また別の足音が接近してくる。モンスターの存在に次々と対処しながら、俺たちは少しずつだが着実に敵を片付けていった。

　フィルガンでの日々は、ただの討伐任務にとどまらなかった。

　急勾配の山道での戦闘や、湿地帯での行軍、森での罠の扱いなど、その場所ごとに異なる戦術が求められ、現地の冒険者たちから得た知識が重要な糧となっていった。

　森での戦闘を終えたある日、現地の冒険者であるエリオが俺に声をかけてくれた。彼は罠術の達人として知られ、静かに敵を仕留める技術を磨いてきた戦士だった。

「君、なかなかの戦いぶりだったな」

　エリオが少し口元を緩めて話しかけてくれた。俺は彼に礼を言い、フィルガンでの戦闘で得たものの大きさを改めて実感した。

「ありがとうございます。エリオさんたちの戦い方を学べたのは、俺にとって本当に大きな収穫でした」

「そう言ってもらえるのは光栄だ。この土地に慣れるには時間がかかるが、それだけ成長の機会も多いさ」

　経験豊富な冒険者たちから教わることは多く、彼らと共に戦うことで、俺の中で新たな自信が芽生えつつあった。やがて任務が完了する頃、クリスが俺に向かって手を差し出してきた。

「アレクシス、俺たちもまだまだ成長できるさ」

　彼の手を力強く握り返し、笑みを交わす。その手の温かさには、これまで共に戦ってきた苦労や、築かれた信頼が詰まっているように感じた。

「もちろんさ、クリス。次の任務でも共に強くなっていこう」

　こうしてフィルガンでの派遣任務を通じて、俺たちはそれぞれの成長を感じ、次なる試練に向かうための準備を整えることができた。

　この任務で得た経験と絆は、俺たちの糧となり、銀級冒険者としてさらに大きな一歩を踏み出すための礎となった。