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第2章:商会の始まり

第50話:勝利と余波

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 ブラッドベア討伐の余韻に浸る中、俺たちは息を整えつつ、仲間たちと勝利の実感を噛みしめていた。森の中、静寂が戻り、ほんのわずか前までの激戦が嘘のようだ。

 肩を並べて戦った仲間たちは皆、疲労の色を浮かべながらも、勝利を分かち合うように安堵の表情を浮かべている。

 俺はすぐ隣で荒い息を吐くルナに目を向け、戦いの中でもしっかりと役目を果たしてくれた彼女の頭を優しく撫でた。

「よくやったな、ルナ。お前のおかげでここまで戦えたよ」

 ルナは誇らしげに尾を振り、目を細めて俺を見上げてくれる。その瞳に浮かぶ静かな自信と信頼に、俺も自然と笑顔がこぼれる。この瞬間、彼女とは言葉では語り尽くせない絆が確かに存在していると実感する。

 やがて、戦いの熱気も徐々に冷め、俺たちは討伐を終えた証としてブラッドベアの毛皮や爪、角を持ち帰るための準備を始めた。

 大勢の力を借りて討伐した証を手にすることで、どれだけの努力と仲間の協力があって勝利を掴めたかを感じる。重たい戦利品を手にしながら、森を後にして街に戻る道のりをゆっくりと歩き始めた。

 街に戻り、ギルドの大きな扉を押し開けると、内部はいつもよりも賑やかだった。俺たちの討伐の知らせが既に届いていたのだろう、リリーナが受付で待ち構えていた。

 その瞳には安堵と驚き、そして少しの誇らしげな輝きが浮かんでいる。

「タケルさん、皆さん、本当にお疲れさまでした。無事に戻られて、そして見事な討伐……素晴らしい活躍です!」

 リリーナの声が響くと、ギルドに集まっていた冒険者たちがこちらに視線を向け、すぐに口々に称賛の声が上がり始めた。気恥ずかしい気持ちが少し湧きつつも、俺も軽く手を振って挨拶を返す。

「ありがとう、リリーナ。全員が力を合わせたおかげでなんとか倒すことができたよ」

 リリーナは満足げに頷き、討伐報告書をまとめるための書類を広げながら、俺たち一人一人の顔を見つめて感謝の言葉を重ねた。そして、書類を一通りまとめたあと、彼女はふっと微笑みを浮かべ、視線を俺に向けて言った。

「今回のブラッドベア討伐は、ギルドにとっても非常に意義深いものでした。討伐隊全員に大きな貢献をいただきましたが、特にタケルさん、あなたの成長ぶりには驚かされました」

 リリーナの言葉を聞きながら、俺はふと自分の成長を振り返る。数ヶ月前の自分では到底歯が立たなかったはずの敵に立ち向かい、今ではこうして勝利を手にすることができた。

 ギルドの人々、仲間、そしてルナのおかげで確実に力をつけてきたことを実感する。

 リリーナは続けて、ゆっくりとした口調でギルドの決定を伝えてくれた。

「タケルさん、これを機に、ギルドとしてあなたをBランクに昇格させる推薦を行います」

 その言葉を聞いた瞬間、思わず驚きに目を見開いてしまった。討伐隊の仲間たちも一斉に拍手を送り、祝福の言葉をかけてくれる。俺は一瞬、嬉しさと驚きで言葉を失ったが、心の底から喜びが湧き上がってくるのを感じた。

「Bランク……か。本当に……ありがとう、リリーナ」

 ルナも俺のそばで満足げに尾を振り、顔を上げて鳴き声を上げている。彼女もこの瞬間がどれほど大切なものかを理解しているようで、その瞳には確かな喜びが映っていた。

 数日後、ギルドでは小規模ながら俺のための表彰式が開かれた。冒険者たちが集まる広間の一角で、リリーナやギルドの役員たちが一列に並び、俺を前にして正式にBランク昇格を発表してくれることとなった。

「タケルさん、今回の討伐での活躍を称え、あなたのBランク昇格をここに正式に決定します。今後もあなたの成長とさらなる活躍を期待しています」

 リリーナが微笑みながら発表すると、再び仲間たちが拍手を送ってくれた。思えば、ここまで来るのに多くの困難があり、それを支えてくれた仲間や先輩冒険者たちがたくさんいた。

 俺はその感謝の気持ちを胸にしっかりと抱きしめながら、改めて頭を下げて感謝を伝えた。

「ここまで支えてくれた皆さんに心から感謝します。そして、これからもこの成長を続け、ギルドの一員として恥じないよう全力で挑んでいきます」

 その言葉に、リリーナも頷き、役員たちも満足げに微笑んでくれた。ルナも同じ気持ちなのか、堂々とした表情で俺の隣に立ち、まるで自分も誇らしげにこの場に参加しているかのようだった。

 表彰式が終わり、俺とルナは改めてギルドを後にして、今後の目標について話しながら帰路についた。夕日が街並みを黄金色に染める中で、俺はルナに向かって静かに語りかけた。

「Bランクか。ここまで来るのにたくさんの経験を積んだけど、これからはもっと大きな挑戦が待ってるだろうな」

 ルナはその言葉に応えるように、尻尾を振りながら元気に吠えた。彼女も新しい冒険に胸を膨らませているのだろう。その姿に、俺は新たな意欲を湧かせ、心から彼女と共に冒険を続けていく決意を新たにした。

「よし、ルナ。これからも二人で最高の冒険をしような」

 その言葉に、ルナは力強く頷き、さらに大きな吠え声で応えてくれた。
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