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第2章:商会の始まり

第47話:ギルドからの緊急依頼

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 ギルドの扉を開けた瞬間、普段とは違う異様な空気が漂っているのに気づいた。朝早くからギルド内にはいつもより多くの冒険者が集まり、皆が真剣な顔で小声で話し合っている。

 普段はどこか軽い雰囲気が漂うギルド内だが、今日に限ってはどこか緊張感が満ちていて、ただならぬ事態が起きているのが伝わってくる。

 俺は受付カウンターで忙しそうにしているリリーナのもとへ向かった。彼女もまた、いつもの優しい微笑みを消し去り、深刻な表情で書類を見ていたが、俺が近づくと表情が少し緩み、ほっとしたように息をついた。

「タケルさん、来てくださって良かったです。実は最近、近隣の村々が強力な魔獣『ブラッドベア』の襲撃を受けておりまして、被害が相当深刻なんです」

「なるほど、それで冒険者が集まっているのか。ブラッドベアとはまた厄介な相手だな……」

 リリーナの話を聞き、俺はその名を知っている魔獣の姿が頭をよぎった。ブラッドベアはただの魔獣ではない。強力な腕力と魔力吸収の特性を持ち、傷つけてもすぐに魔力を吸収して回復する厄介な敵だとされている。

 通常の武器では効果が薄く、少しでも判断を誤ると手痛い反撃を食らう可能性が高い。

「はい。この魔獣は非常に強力で、通常の戦法では太刀打ちできません。ギルドでは討伐隊を編成して、Cランク以上の冒険者に参加を呼びかけています。タケルさんもぜひご協力いただけませんか?」

 リリーナの真剣な目を見て、俺もすぐに決心がついた。この場に集まる冒険者たちの期待と、近隣の村々を守るためにも、こうした挑戦には応えなければならない。

「俺も参加するよ。必要な準備について教えてくれ」

 リリーナは少し微笑んで頷いたが、その顔にはまだ緊張が残っている。

「ありがとうございます、タケルさん。ブラッドベアは通常の武器が効きにくいと言われています。魔力を封じる効果を持つ武器か、魔法の効果を持った武器があると有利です。また、防御力の高い装備も揃えていただけると安心かと」

「わかった。魔法の剣と防具を揃えに鍛冶屋へ行ってくるよ。ルナも一緒に参加するから、作戦の内容も頼む」

 俺の隣に控えていたルナも、俺の決意に応えるように力強く頷いた。彼女の鋭い目には、討伐への意欲が確かに宿っている。リリーナもルナを見て、少し安堵した表情を浮かべる。

「タケルさんとルナさんが加わってくれるのはとても心強いです。討伐隊は明日の朝にここで集合して、簡単な作戦説明を行った後に現地へ向かう予定です」

「了解。ありがとう、リリーナ」

 彼女に礼を告げ、俺はギルドを後にして鍛冶屋バルドの店へ向かった。バルドは前に世話になったこともあり、今でも信頼している鍛冶職人だ。彼なら、この討伐に必要な武器を用意してくれるはずだ。

 鍛冶屋に到着すると、店内には金属を打つ音が響き、熱気が伝わってくる。俺が顔を出すと、バルドは作業の手を止め、俺に向かって険しい顔で声をかけてきた。

「おう、タケル。今日は何を探しているんだ?何か大きな仕事でも引き受けたか?」

「ブラッドベアの討伐に参加することになったんだ。魔法の効果を持つ剣と、防御力の高い防具が必要でな」

 バルドは少し驚いた表情を見せたが、すぐに深刻な顔つきに戻り、店の奥から重厚な箱を持ってきた。その中には青く輝く魔法剣と、魔法耐性が付加された頑丈な革製の防具が入っている。

「この剣には強力な魔力が込められていて、対魔獣にはもってこいだ。それからこの防具は、防御力はもちろん、魔法耐性もある。お前のような冒険者にはうってつけだと思う」

 俺は手に取った剣の感触を確かめ、刀身の青い光が揺らめくのを見つめた。魔法が封じられた武器の一撃なら、ブラッドベアの回復力を抑えられるかもしれない。

 防具も軽量ながら耐久性に優れていて、これなら素早く動きながらも体をしっかり守れるだろう。

「これでいこう。値段は張りそうだが、命には代えられないからな」

 俺はバルドに支払いを済ませ、再度礼を述べて店を後にした。討伐に備え、装備が整ったことで自分の中にある覚悟がさらに強固なものとなり、いよいよ気が引き締まる。

 自宅に戻り、装備をしっかり整え、翌日の戦闘に備えて英気を養うことにした。

 翌朝、ギルドに戻ると既に討伐隊に参加する冒険者たちが集まっており、緊張した空気が漂っている。皆、それぞれの準備を終え、互いに挨拶や情報交換をしながら戦闘に備えているようだ。

 俺も装備を確認し、ルナと共に隊列に加わった。

 やがてリリーナが現れ、静かな声で全員に向けて作戦説明を始めた。

「皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます。討伐対象であるブラッドベアは、強力な魔獣であり、魔力を吸収して回復する特性を持っています。通常の武器では効果が薄く、また非常に力強い攻撃を繰り出してきます。ですので、今回は戦闘班と支援班に分かれて連携して戦う作戦を取ります」

 参加者全員が真剣な表情でリリーナの説明に耳を傾ける。彼女は各メンバーの役割を丁寧に割り振り、俺には前衛で敵を引きつけ、索敵役も兼任するよう指示が下された。

「タケルさんには、前衛で敵を引きつけつつ、索敵もお願いしたいと思います。無理は禁物ですが、皆さんが安全に攻撃できるよう、少しでも敵の注意を引いてください」

「了解。ルナと連携して、しっかりサポート役も務めるよ」

 冒険者たちがリリーナの説明に納得し、各自で役割を確認し出発までいったん解散となった。
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