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第2章:商会の始まり

第42話:イグラッド洞窟に向けて

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 俺は、イグラッド洞窟へのダンジョン探索に備えて、回復アイテムの購入を終え、しっかり準備を整えた。食料に関しては等価交換でいつでも手に入れることができるから、その点は問題ない。

 あとは、探索に必要なポーションや包帯などを揃えるだけだった。

 店を出ると、すでに日が傾き始めていた。家に戻り、明日からの準備を確認しておこう。ルナもいつものように静かに俺の横を歩いている。彼女の存在は、どんな時も心強い。

 自宅に戻ると、カティア、レン、ティナが仕事を終えてリビングでくつろいでいた。俺はリビングに入ると、軽くため息をつきながら座った。

「お疲れ様、タケルさん。今日はどうだった?」

 カティアが微笑んで尋ねる。

「ありがとう。実は、明日からイグラッド洞窟のダンジョン探索に行くことになったんだ。2日ほど家を空けることになる」

 俺の言葉に、皆が驚いたような顔をする。特にティナは心配そうに俺を見つめた。

「大丈夫ですか?ダンジョンって危険じゃないんですか?」

「確かに危険だが、今回の洞窟はCランク冒険者向けの依頼だから、そこまで大きなリスクはないはずだ。それにルナもいるし、しっかり準備して挑むつもりだ」

 レンも真剣な表情で頷き、続けて言った。

「俺がタケルさんの護衛として一緒に行ければよかったが、店を守るのも大事な役割ですからね」

「そうだな、レンがいるから安心して任せられる。カティアもティナも頼むよ。店も商業ギルドとの取引も問題なく進めてくれ」

 カティアがにっこり微笑んで答える。

「もちろん。心配しないで、私たちでしっかり対応しておくわ」

 ティナも不安そうな表情を浮かべながらも、力強く頷いた。

「気をつけて、無事に戻ってきてくださいね」

「ありがとう。できるだけ早く戻るつもりだから、無理はしないよ。じゃあ、明日からの準備をしておこう」

 ルナが静かに吠えて、まるで「準備は万全」というかのように応えてくれる。俺も深呼吸をして、明日からの冒険に向けて気を引き締めた。

◇ ◇ ◇ 

 翌朝、早朝の冷たい空気を吸い込みながら、俺とルナは自宅を出発した。太陽がまだ昇りきっていない薄明かりの中、街はまだ静かだ。俺は昨日確認したイグラッド洞窟の地図を再度頭の中で復習しつつ、冒険者ギルドへと向かっていた。

「今日からいよいよダンジョン探索だな、ルナ」

 ルナは俺の言葉に軽く尾を振り、足取りも軽やかだ。俺たちはギルドの前に着くと、門が開いているのを確認して中に入った。受付に立っていたのはリリーナだ。彼女は俺の姿を見てすぐに気づき、笑顔で迎えてくれる。

「タケルさん、おはようございます。準備は整いましたか?」

「おはよう。完璧に整ったよ。ルナも調子がいいし、万全だ」

 俺がそう言うと、リリーナは頷いて、机の上に広げていた書類に視線を戻した。

「今日はイグラッド洞窟ですね。タケルさんがこれまでこなしてきた討伐依頼よりも長期間の探索になると思いますが、ダンジョン内は未知の要素が多いですから、くれぐれも気をつけてください」

「わかってる。無理はしないし、ルナもいるから問題ないさ」

 俺が軽く笑うと、リリーナはもう一度微笑み返してから手渡してくれたのは、今回の依頼書だ。

「これが正式な依頼書です。報酬は、ダンジョン内で収集した鉱石や宝石の価値によって変動しますが、最低でも500クラウンの保証があります」

「了解。今回はちょっとした冒険だな」

 俺は依頼書をバッグにしまい、ルナに目配せして出発の合図をした。リリーナは最後にもう一度俺を見送りながら声をかける。

「気をつけてくださいね!帰ってきたら報告をお待ちしています」

「ありがとう。また無事に戻ったらな」

 ギルドを後にして、俺とルナはイグラッド洞窟へ向かう。途中で自然の風景が広がり、次第に道が険しくなってくる。洞窟に近づくにつれ、周囲の景色も変わり、木々が密集し始めた。

 ルナは鋭い感覚で周囲を警戒しながらも、軽快な足取りで俺に付いてくる。

 洞窟の入り口に着いたとき、俺は一息ついて周囲を確認する。入り口は想像していたよりも大きく、そこから冷たい風が流れ出ていた。周囲にはほかの冒険者の姿はない。どうやら先行者はいないようだ。

「ここがイグラッド洞窟か…」

 俺は洞窟の暗闇をじっと見つめ、少し緊張感が高まるのを感じた。しかし、ルナの存在が俺に安心感を与えてくれる。

「よし、行くぞ、ルナ」

 ルナが前足で軽く地面を叩き、まるで「準備はできてる」と言わんばかりの仕草を見せる。俺たちは洞窟の中へと足を踏み入れた。
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