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第1章

第37話

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 午後からの予定が昨日までと変わっているため、昼前には帰宅したので、今日の報告会と分配会議は昼食前に行われた。

 多少は揉めるかと思ったのだが、驚くほどアッサリとオレの要望は通り、幸運向上剤の使用と獄蠍尾ごくかつびの護符の所有権が認められた格好だ。
 さらには脚注モノはオレに……という空気が出来上がりつつあるためか、技巧のタリスマンもオレの所有物という形になった。
 もちろん、問題のスクロールも全てオレが使う。
 場の流れに合わせて、苦笑いしながら使って見せたが、いまだに効果らしい効果は出なかった。

 ストレングスクッキーは、衰えた分の体力、筋力を取り戻して貰うのが少しでも早くなれば……という期待から父に。
 父いわく、ココア風味だったらしい。

 パワーチョーカーはパリィアミュレットなどの扱いに準じ、状況に応じて使い回すが、優先使用権は妻に……という形で、一応の決着を見た。
 単に所持するだけでも良いらしいのだが、妻が首に装着すると、元々の容姿が優れているのもあって、とてもサマになっている。
 コレ、男性陣が装着している姿を想像すると、若干キツいものがあるな。

 さて大いに紛糾するかと思われた製パン機の行方だが、これは母のモノに。
 妻も義姉も納得している様子で、これは女性3人の間だけで行われた話し合いによるものなのだが、その間3分と掛かっていない。
 うーん……これは男連中は、立ち入らない方が良いのかもしれない。

 ◆

 昼食を挟んで兄達は13時までにはギガントビートルを倒すべく、いつもより早めに出掛けていった。
 妻の顔が、いつもより覇気に満ちていたのは、やはり製パン機のインパクトが、ことほか大きかったからなのだろうか?
 見送る母や義姉の顔も気のせいか、いつもとは違って見えた。

 今日も、待つ身の辛さを味わう。

 息子や甥っ子達は今日の午前中に、大人達全員に護衛されながら、僅かな外遊びを楽しんだ甲斐が有ってか、早々にお昼寝タイムに突入している。
 テレビも良いニュースよりは、目を覆いたくなるようなニュースばかりだったのもあって、見ていると気持ちがささくれてしまう。
 情報収集を母達に託して、外で鎗の鍛練をすることにした。

 異変が起こる前は、専業の探索者でも無い限り、こうした自主トレは世間の目を気にして、しにくい風潮が有ったものの、今はそんなものまるで気にならない。
 一心不乱に短鎗を操っていると、何かが研ぎ澄まされてくるような感覚がしてくる。

 大いに鎗を振るって汗を流し一息ついていると、遠目にモンスターの出現の兆候を見つけた。
 急いで駆け寄るが、距離的に先制攻撃は出来そうにない。
 まだある程度の距離はあるが、鎗を構えながら足を止め、モンスターの襲来に備える。

 黒い光の中から出てきたのは、今日の午前中に散々ドロップアイテムに変えてきた、ゴブリンだった。
 ……弓を手にしたゴブリンだ。
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