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第1章

第26話

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『筋力向上剤……およそ1割ほど、永続的に腕力が向上する。身体的な見た目に変化は起きない』

『ポテンシャルオーブ……潜在的身体能力の拡大。成長限界に寄与する。効果(小)』

『スクロール(魔)……魔力の扱いについての理解を深める。効果(小)』
 ※ダンジョン探索者協同組合脚注……組合所属の鑑定スキル所持者によって、読みとかれた効果説明文ではあるが、実際例として魔法と呼ばれる技能を習得した例は確認されていない。

『鷹のピアス……装備時に限り視力が向上する。特に事前のピアス穴の開通は不要。装備箇所も問わない』

 鑑定結果を確認するが……正直なところ困惑してしまうようなものも混ざっている。
 見た目からして、そうなのではないかと薄々考えてはいたが、有名なネタアイテムであるスクロールを入手していた。
 発見された当初は大いに騒がれたが、結局のところ、スクロールで魔法を習得したという事例は、この20年に渡り全く無い。
 例えば、某有名動画配信サイトで当時の人気配信者が、集めに集めて100回連続でスクロールを使用したものの、結局のところ魔法習得には至らず、世間を大いに落胆させたものだ。
 彼の姿はあれ以来、ほとんど見ない。

 ピアスもなぁ……オレは視力に問題は全く無いし、家系的な遺伝によるものなのか、父も兄も極めて目が良い。
 妻も裸眼で充分に運転が出来るぐらいだが……オレ達と比較すると若干視力が低いので、とりあえずは妻に持っていて貰うか。
 ただなぁ……そうなると腕力向上剤の行方が不透明になってくる。
 ピアスも腕力向上剤も妻へ……というのは、バランスを欠く気もして、兄達を説得出来るかどうか、少し不安だ。
 じゃあ、眼が悪いハズの、お義姉さん行き?
 それも、この情勢下だと微妙だよなぁ。
 せっかくのマジックアイテムが探索に活かせなくなってしまうわけだし……。
 とりあえず、持ち帰って相談だな。

 ◆

 夕食後、恒例の話し合いの結果。

 腕力向上剤は、無事に妻の手に。
 ポテンシャルオーブ、スクロールは、効果が微妙なのもあってか、発見者であるオレが使用する。
 そして鷹のピアスだが……義姉がオレの知らない間に、眼科でレーシックを受けていたらしく、消去法ながら妻が装着することになった。

 テレビは、もはや沈鬱な気持ちになるだけなので見たくもないが、知らないことが原因で危険に気付かないなどという愚を冒さないためには、見ないわけにもいかないという
 ジレンマに陥っている。
 これまで連絡が途絶していたのか、それとも国内を優先していたのかは知らないが、海外の情報が多くなってきたが……全く無事な国は恐らく存在しない。
 それが分かっただけとも言える。
 特に、世界的に有名な探索者の訃報や、消息不明のニュースには、予想していたことではあるが、どうしても気落ちさせられてしまう。

 明日の行動予定だが、拭いきれない疲れの残っている父は、兄とともに午後の探索機会へ。
 妻は明日は休み。
 父を優先して、どうにかオークと渡り合えるところまで引き上げるのを優先する方針は変わらないということになる。

 オレは第1層の間引きはそこそこに、第2層へ行く予定だ。
 あまり間引きし過ぎると、父の育成の妨げになりかねないので、このあたりは主に兄と相談して方針を定める。

 ちなみに……ポテンシャルオーブ、スクロールともに、使用すると無くなるタイプのアイテムだったのだが、どちらも実感らしい実感は得られなかった。
 いつか、何かしらの効果が出てくれれば良いのだが……。
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