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第1章

第11話

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 さて……先ほどから何度か周辺の見回りには出ているが、一応は念のために周囲に視線を走らせる。

 やはり特には何もおかしな雰囲気を感じない。
 素早く借りた車に乗り込み、エンジンを掛ける。
 何事もなく、最初の目的地であるセルフ式のガソリンスタンドに到着。
 手早く給油を済ませ、次にホームセンターに移動。

 いつもよりは混雑しているが、来店している人々にも、特には混乱している様子などは見られない。
 まずは、キャンプ用品のコーナーから見て回り、電気やガスなどのライフラインが途絶えた際に使えそうなモノを手当たり次第、カゴの中に放り込んでいく。
 次にダンジョン用品コーナーで防具類を主に物色。
 普段、ダンジョンに潜らない父や、女性陣にも防具は必要になるかもしれない。
 他にも農業&園芸のコーナー、工具類や金物類、日用品の中にも使えそうな物が有れば、迷わず購入することにした。
 忘れちゃいけないのが飼い猫用のキャットフードやオヤツ、そして猫砂。
 会計を済ませ、店員立ち会いのもと、購入した商品をライトインベントリーに収納する。
 レジで発行して貰った引き換え券を手に、家から根こそぎ持ってきたポリタンクに、灯油を入れて貰う。
 今はまだ3月だが、いつまでこうした物資が通常価格で販売されるか、分かったものではないのだから。
 車に乗り込み、さぁ、次の買い物を……と思ったのだが、オレはルームミラーに映ったモノに慌てて車を降り、武器を構えた。
 ダンジョンでモンスターを倒した際に、光に包まれるようにしてモンスターが消え去るということは、前にも述べた通りなのだが、今オレの目の前にある光景は、ソレと似た現象の様でいて、趣はかなり異なる。

 地面が黒く発光し、光が収まった瞬間にモンスターが現れていたのだ。

 モンスターの種類としては、どうということも無いジャイアントスパイダー(でっかい蜘蛛)だが、場所が悪い。
 ホームセンターの駐車場の中でも、極めて店舗に近い場所。
 先ほど灯油を入れてくれた初老の男性店員が、いきなりのモンスター出現に驚いたのか(……武器を構えるオレに驚いたのか)腰を抜かして尻もちをついてしまっている。
 ジャイアントスパイダーは生命力こそ高く、非常にしぶといモンスターだが、出現と同時に頭部に短鎗の穂先が突き刺さっては万事休す。
 しばらくもがいた後、次第に動かなくなり、今度は白い光に包まれて消えていく。
 蜘蛛が消え去った後には、古びたハードカバーの洋書が遺されていた。

 今までのダンジョン行では見たことが無かったが、これがいわゆるスキルブックというヤツだろうか?
 誰に咎められるわけでも無いだろうが、手早く本を拾い上げ、再び車に乗り込もうとして、先ほどの店員さんのことが気になり振り向く。

 這うようにして店舗に戻って行くようなので、戦利品をインベントリーに収納し、後を追う。

「もうモンスターは倒しました。武器で驚かせてしまったのなら申し訳ありません」

 深く頭を下げながら謝罪すると……

「えっ!? あ、危ないところをありがとうございます。私は大丈夫です。本日はご来店、誠にありがとうございました」

 まだ混乱している様子ではあったが、とりあえずはホッとしている様にも見えた。
 あちらも平身低頭といったさまで深々とお辞儀されてしまったので、軽く会釈を返し、車に乗り込む。
 そのままオレはスーパーに向かい、駐車場に車を停めてから、ふと思い出した。


 さっきのスキルブック。
 いったい何のスキルなのだろうか?
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