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死神の力

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「死神が迎えに来て、人が死ぬのでは?」

凛が問うと、岸辺は首を横に振った。

「翼くんがご両親を殺したわけではない。お二人の死は、すでに決まっていた。そこにたまたま、翼くんが割り振られた」

「じゃあ、翼さんの意志で殺したのではないのね?」

岸辺はうなずいた。

「そもそもそんなこと、翼君には無理なんだよ」

「じゃあ、私を助けたのはどうして?」

岸辺はにっこりと笑った。

「君を好きになったから、じゃないのかな」
「それだけのことで?」
「それだけのこと、とかたづけられる感情ではないよ」
岸辺は言うと立ち上がった。

「突然邪魔してすまなかったね。急いであなたと話しがしたかったものだから」

そう言うとお茶を飲み干し、岸辺は立ち上がった。





父と母の死は翼が仕向けたことではなく、すでに決まっていたことだった。ならばどうして初めから翼はそう言ってくれなかったのか。翼の告白を思い返す。

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