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12月25日夜 復讐はクリスマスの夜に
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「今日は鳥居ホテルにお泊りと聞いてますが」
「行くぞ」
死神の長い指が、凛の白い指と絡み合う。手を引かれてエレベーターを降り、エントランスの車寄せで待っていたタクシーに乗り込んだ。
鳥居ホテルはお台場の海に面した場所に立つ新しい話題の高級ホテルで、窓からレインボーブリッジが見えるデラックスルームは予約が取れないという噂のスポットだった。
ロビーはマホガニーを基調として照明を落としたシックな内装で、まるでオーセンティックバーのような落ち着いた雰囲気だ。コンシェルジュも丁寧で上品な対応で、都会の喧騒の中で心休まる空間が演出された素晴らしいホテルだと凛は思った。
広いロビーの意匠を凝らした内装を、ため息をつきながらうっとりと見まわしていた凛は、ふとチェックインカウンターに立つ見慣れた姿に目を止めた。
「拓斗」
死神は凛の視線を追って拓斗を見定め、足早に近づいていく。凛は慌てて死神のあとを追った。
チェックインを終えたらしい拓斗が振り返ると同時に、死神は目の前に立ちはだかった。
拓斗より頭一つ大きい死神は拓斗を見下ろすようにして名刺を差し出した。
「お前は向こうに行っていろ」
肩越しに睨まれ、突き放された凛は、逃げるようにしてロビー中央のクリスマスツリーの下に立った。
死神は表情を変えず拓斗に何か話している。拓斗の方は正反対に、みるみる顔面を蒼白にし、きょろきょろと視線を泳がせながら死神の言葉にうなずいたり首を横に振ったりしている。その後、拓斗は小走りにどこかに消え、しばらくすると封筒を持って死神の元に戻った。
「行くぞ」
死神の長い指が、凛の白い指と絡み合う。手を引かれてエレベーターを降り、エントランスの車寄せで待っていたタクシーに乗り込んだ。
鳥居ホテルはお台場の海に面した場所に立つ新しい話題の高級ホテルで、窓からレインボーブリッジが見えるデラックスルームは予約が取れないという噂のスポットだった。
ロビーはマホガニーを基調として照明を落としたシックな内装で、まるでオーセンティックバーのような落ち着いた雰囲気だ。コンシェルジュも丁寧で上品な対応で、都会の喧騒の中で心休まる空間が演出された素晴らしいホテルだと凛は思った。
広いロビーの意匠を凝らした内装を、ため息をつきながらうっとりと見まわしていた凛は、ふとチェックインカウンターに立つ見慣れた姿に目を止めた。
「拓斗」
死神は凛の視線を追って拓斗を見定め、足早に近づいていく。凛は慌てて死神のあとを追った。
チェックインを終えたらしい拓斗が振り返ると同時に、死神は目の前に立ちはだかった。
拓斗より頭一つ大きい死神は拓斗を見下ろすようにして名刺を差し出した。
「お前は向こうに行っていろ」
肩越しに睨まれ、突き放された凛は、逃げるようにしてロビー中央のクリスマスツリーの下に立った。
死神は表情を変えず拓斗に何か話している。拓斗の方は正反対に、みるみる顔面を蒼白にし、きょろきょろと視線を泳がせながら死神の言葉にうなずいたり首を横に振ったりしている。その後、拓斗は小走りにどこかに消え、しばらくすると封筒を持って死神の元に戻った。
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