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なぜ凛は死のうとしたのか
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十二月二十四日、イブの夜をひかえた昼休み。
幼馴染であり同僚でもある遠田夏美に呼び出され、凛と夏美はオフィス近くのカフェで昼食を取り、食後のコーヒーを飲んでいた。
すると突然、夏美がはらはらと涙を流し始めたので凛は慌てふためいた。
「どうしたの?大丈夫?」
椅子から腰を浮かせ、ポケットのハンカチを取り出して夏美に差し出した。夏美はハンカチを受け取って握り締めると、堰を切ったように話し始めた。
「拓斗と、別れて欲しいの」
「え?」
驚きで硬直し、目の淵を真っ赤にしている夏美の顔から視線を動かすことができない。
「ごめんね。私、拓斗が凛と私に二股かけていること、ずっと凛には言えなかった」
「二股?」
目の前のテーブルが斜めに傾いた気がしたが、それは凛を突然襲っためまいだった。あまりの驚きに、まっすぐに座っていることができなかった。
「今朝起きた時、ベッドの中で拓斗が、凛よりも私のほうを好きになっちゃったって言いだしたの・・・もう私、どうしたらいいかわからない」
すすり泣きが、声をあげる号泣に代わった。
「今朝起きた時ベッドの中で拓斗が・・・」という言葉が、頭の中にこだました。
凛は動揺しているにもかかわらず、周囲の心配の目のほうが気になって、テーブル越しに腕を伸ばして夏美の背中を撫でた。
「ごめんね凛。こんな風になったのは全部私が悪いの」
夏美は周囲の目も気にせずに声を出して泣いている。この涙に、凛は弱いのだ。
幼馴染であり同僚でもある遠田夏美に呼び出され、凛と夏美はオフィス近くのカフェで昼食を取り、食後のコーヒーを飲んでいた。
すると突然、夏美がはらはらと涙を流し始めたので凛は慌てふためいた。
「どうしたの?大丈夫?」
椅子から腰を浮かせ、ポケットのハンカチを取り出して夏美に差し出した。夏美はハンカチを受け取って握り締めると、堰を切ったように話し始めた。
「拓斗と、別れて欲しいの」
「え?」
驚きで硬直し、目の淵を真っ赤にしている夏美の顔から視線を動かすことができない。
「ごめんね。私、拓斗が凛と私に二股かけていること、ずっと凛には言えなかった」
「二股?」
目の前のテーブルが斜めに傾いた気がしたが、それは凛を突然襲っためまいだった。あまりの驚きに、まっすぐに座っていることができなかった。
「今朝起きた時、ベッドの中で拓斗が、凛よりも私のほうを好きになっちゃったって言いだしたの・・・もう私、どうしたらいいかわからない」
すすり泣きが、声をあげる号泣に代わった。
「今朝起きた時ベッドの中で拓斗が・・・」という言葉が、頭の中にこだました。
凛は動揺しているにもかかわらず、周囲の心配の目のほうが気になって、テーブル越しに腕を伸ばして夏美の背中を撫でた。
「ごめんね凛。こんな風になったのは全部私が悪いの」
夏美は周囲の目も気にせずに声を出して泣いている。この涙に、凛は弱いのだ。
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