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026.ダンジョン経営はギブアンドテイクです。

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(ボスを倒せない人が入ることも考えないといけないのか……)

 現在40000コリアを加算して107400コリア。
 初期資金を一日で越えたのだから、正直ダンジョンコンソールはチートなんじゃないかと感じた。

(まぁ使い方も大事だし、お金も入ってくれる人から貰ってるようなものだけれど)

 だからといって一方的な関係ではない。

 ギブアンドテイク。

 それが最も近い関係になる言葉だと思う。

 ダンジョンに戻るとまだ30人程の人々が並んでいたが、コンソールを操作して入口を閉じると、不平不満を漏らすことなく散っていった。

(一組2000コリアと考えると勿体ないような気もするなぁ)

 しかし、それを言っていればキリがない。
 人はひっきりなしにやってくるのだから。

 不平不満を漏らさないのは、僕がダンジョンから出るのを認識できないようにしているのと同じような性質なのか、単純にダンジョンが変わることに対する期待からなのかは分からない。

 それでも、スムーズにいくのは助かるし、評価に影響したりもしないのでありがたくこの仕様を受け入れることにした。

 中に入っている人を強制排出することは出来ないので、待つ事5分。
 ダンジョンから出てきた二人に思わず声を上げそうになる。

「ッッ!?」

 頬に深い傷を持ち、漆黒の鎧を装備した剛戦士といった感じの男の人と、切れ長の目が特徴的で紫色を基調とした鎧の上にローブを着こんだ女の人。

「物足りねぇな」

「ふん。あんたはいつでもどこいってもそう言ってんじゃないの」

「あん? おめぇはスライムを眺めすぎなんだよ!」

「スライム可愛かったからついね。まぁいいわ。とりあえず、依頼を遂行させましょう」

 そんな会話を交わしながら二人は街の喧騒へと消えていった。

(今の状況だと僕たちには気付けないようになってるのかな)

 二人は気付いていないのか、気付いていない振りをしているのか、どうでもいいと思っているのか分からないが、僕の横を通りながらも見向きもすることはなかった。
 他の街の人は僕に視線を向けてきていることから、見えない状態ではないはずだ。
 中に入っていた人が出るときだけ見えないのか。

(それとも……)

 本当に道端に落ちている石ころ程の興味も湧かなかったか?

 二人が放つ気配というかは、ド素人の僕が見ても異質と思えるもの。
 装備も街ゆく人々のものより遥かにグレードが髙そうだった。
 以前ぶつかった白銀の髪をなびかせる女性。
 その人が一番近いといえるだろうか。

「ピュイ、今の二人どう思う……?」

 別に気にすることもないのかもしれない。
 僕にとってはダンジョンに入る人はお客さんのようなもの。
 それでも、なんとなく二人の会話と様相が頭に残ってしまう。

「今の二人はおそらくピュイじゃ勝てないのです! それ以外は分からないのです!」

 僕はピュイの実力はまるで知らない。
 今のとこ分かってるのは尻尾の先に光を灯せることくらいだ。

 それでもなんとなくだけど、キャルアとは同等以上くらいの力を備えているような気がする。
 それがこの世界でいかほどの物かは分からない。

(もしそんなピュイが勝てないという力が僕たちに牙を剥いてきたら)

 そう考えると背筋がゾクリと震え、わずかに鳥肌が立った。
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