街がまるごと異世界転移

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第一章 島が異世界転移

選抜試験④

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「最後は、面接になります。第一グループから順に行っていきますが、終了次第本日の試験は終了となりますので、帰宅いただいて結構です。」

どうやら、合格発表は後日市役所で行うようで、受験者は指定された日時に合否の確認と、合格者は簡単な説明を受けるそうだ。

「さぁ、最後は面接だ!高校受験以来だけど、しっかりやろうぜ!!」

「千歳こそしっかりとな!一番緊張していたんだから、どもったりしないようにな!」

「そうそう、しっかりとね!」

俺がメンバーに声をかけたら、斗真と香里奈から逆にくぎを刺された。鈴花は、苦笑いしているや。
解体後で面接だから、皆のテンションを少しでも上げようかと思ったけど、必要なかったかな?

日よけのためか、周りから見られないようにするためか、ブルーシートが壁として張ってあるテントにパーティー毎に入って面接するようだ。
それ以外の人たちは、中の様子がわからないように、少し離れたところで待つように説明を受けた。別に列を作って並ぶ必要もないけど、そんなにバラけずに順番待ちする感じになった。こんなところは、皆日本人だよな。

すぐ後ろでは、陸上部メンバーで唯一救護班に行ってた人が戻ってきて、列に加わっている。残念だけど結果は、結構マイナスだろうなぁ~。
パーティー毎に雑談をして待っていると5分弱くらいで前のパーティーがテントを出て行って、そのまま運動公園から出て行った。あの人たちは、もう試験終了ってことか。合格なのか不合格なのか…。

「よし、んじゃ行くか!」

声をかけて、目配せして立ち上がると、4人で面接会場のテントに入った。

----------

「はい、そちらのイスに掛けてください。」

面接官は男女4人で、一人はなんと柊さんだ!おっと、今はビジネスライクにいかないとな!
四人そろって面接官の前に立っていたが、声をかけられたので、対面に置いてあるパイプイスに座った。

「それでは、『冒険者』になりたいという志望の動機をそちらの方から順番に答えてください。」

試験官の中年女性が、鈴花の方を見て答えを促す。

「はい、私が『冒険者』になりたいと考えたのは、この世界にきて光魔法に適性があり…。」

前もって、聞かれるだろうという内容を軽く練習してたが、志望動機や目標とするもの、さらに、電気も水道もない不便だと思われる異世界での暮らしについての意見や、自分たちが生活していけるかなど、定型的な受け答えに終始していたため、自分たちもスラスラと答えて行った。

試験官も、順番に異なる人が質問していたが、ふと、柊さんがこちらを見て質問をしてきた。

「仮に現地で『冒険者』をしている時に、この島がモンスターの大軍から襲われそう。あるいは、襲われているという情報が手に入ったとしたら、島に戻りますか?どのように行動するのか、誰か一人答えてください。」

「それは…」

さっきまで、全員がどう思うかということを順番に質問されていたし、誰か一人答えてということは、全員の総意となるのか?

「それは、メンバーで相談して答えて良いのですか?」

自分が聞こうと思った内容を斗真が聞いていた。

「いや、答えるのは誰でも良いですが、一人だけ相談せずに答えてみてください。」

「はい、…わかりました。」

少し考えるような感じで斗真はわかったと返事したが、そのまま質問には答えなかった。
そして誰も何も答えない沈黙が数秒過ぎた。こういう沈黙は、何か気まずい…。
自分だったら、帰りたい。でも、帰っても島の人の力になれるほど強くなれているかわからない。横に座るパーティーメンバーを思えば、皆家族がいる島に戻りたいという考えはあるだろう。だけど、モンスターの大軍だと、行っても無駄死にするかもしれない。それなら、現地で『冒険者』していた方が良いのかも…でも。

「僕は、島に戻りたいと思うだろうし、手段を探して戻ろうとすると思います。」

気がついたら、沈黙が気まずいなんて事を考えず、思ったことを答えていた。少し間をおいて、柊さんがさらに質問を続ける。

「モンスターの大軍だと、無駄死にすることになるかもしれないよ?それでもかい?」

「それでもです。」

「…それは、パーティーメンバーが反対したら君ひとりでも行くということだよね?」

「いや、皆そろって行くと思います。」

「ん?パーティーメンバーに相談していないのだろう?どうして、そろって行くということになると思うのかい?」

「それは、皆家族がいるし、反対する理由もないだろうし、何より自分が行きたいと思っているからです。」

「それは、君の考えだよね?
パーティーメンバーは、家族がいても自分が死ぬかもしれないところに行くかわからないし、君のわがままに付き合わないかもしれないだろう?」

「いや、長い付き合いの友達もそうでない友達もいますが、自分が行くと判断して、それが誤っている選択だったら、力づくで止められると思うし、実際に気絶でもさせないと自分は止まらないと思います。
メンバーも偶数だし、多数決なんて言葉もあるけど、強く願っている仲間がいるなら、実現させようと皆同じ方向を向かって行けると信じています。」

自信を持って、そう言い切ると、横に座る三人とも前を見てうなずいていた。それを見た別の面接官の男性が納得したように話す。

「なるほど、君のわがままという事にはならいようだね。日本にいれば、そこまで熱くなる若者もいないだろうけど、その姿勢は個人的には好ましいと思います。」

柊さん以外の残りの二人の面接官も、目配せしてうなずいている。

「フー。…それでは、君たちへの面接はこれで終わりになります。試験の結果は、合格発表の際に確認に来てください。では、退出して下さい。お疲れ様でした。」

柊さんは軽く息を吐いて、面接の終了を告げたので、僕らはあいさつをしてテントを後にした。

----------

「あーー、何だか思ったこと俺が言っちゃったけど、よかったのかな?」

テントを出て、運動公園から出ていく最中に、さっきの面接の最後の質問に、自分だけが答えた事がだんだん不安になって、三人に聞いてみた。

「さっきの受け答えは、悪くなかったよ!」

鈴花がにこやかに答えてくれる。香里奈も同じなのか同意してくれる。

「そうね。ちょっと突っ走る感じがしないでもなかったけど、実際に間違った判断だったら、私たちが止めてあげれば良いしね!」

「そーだね。というわけで、メンバー内でのステータスは、一番微妙だけど、千歳がこのパーティーのリーダーって事で良いかな?」

と、斗真がどさくさに紛れて俺をリーダーにしようとしてくる。

「え!リーダーは斗真じゃないのか?色々と器用にこなせるし、頼りになるじゃん!」

皆、誰が一番頼りになるかと言ったら絶対斗真って言いそうなのに、何でおれ?間違った判断とかしてやらかしそうな気がするんだけど…。何かアゲられると不安になるよ。

「私も、千歳が良いと思うな!」

「私も同じ意見!」

すると、香里奈と鈴花も俺がリーダーというのに賛成してきた。何これ、さっきの面接に対するイジメ?イジメなの?

「ほらっ!皆千歳って言っているだろ?」

「えっ!マジで?俺、皆を導いたり引っ張って行ったりできないと思うけど…。」

「それは私もそう思うわ!」

「うんうん」

いやいや、そこはリーダーにすんなら、「そんなことないよ」って言うとこなんじゃないか?
なんか、学級委員押し付けられてる展開みたいな感じなのかコレ?

「わからないかな?言葉で言わないとわかんないかな~?
皆、それなりに親しいけど、いざって時の行動力とか判断は千歳が良いと思うよ!俺がやると、損得とか利益とかを判断して、後悔することになりかねないし。その点、千歳なら任せられる。」

「そうそう、それに任せて間違っていたら、ぶん殴って気絶させてでも止めれば良いんだしね!」

「ねー!」

いや、「ねー!」って鈴花さんもそんな楽しそうに気絶させるのを同意しなくても…。なりたいわけでも、なって嬉しいわけでもないけど、何かちょっとウレシイ。

「…ほんとに俺がリーダーで良いの?」

「おー」

「おー」

「おー」

君たち良い上に揃えてくるね。まぁ、セリフを言うタイミングは合わせずバラバラなところがワザとっぽいが。

「なにその一体感のある返事。事前に俺がリーダーって決まってたの?」

「いやいや、仲の良いメンバーが、仲良く行動してるだけじゃん!」

「そうそう!!」

こういう時の斗真と香里奈の笑顔は、なんか嘘くさい。が、まぁ誰かがやるんだし、間違ってる時は皆が止めてくれるって言っているんだから良いか!

「わかった、後で愚痴いうなよ!んじゃ、一応俺がリーダーな!」

「一応じゃなくてリーダーね!」

「リーダーよろしく~」

「よろしく~」

全く。ハメられた感じがしないでもないけど、それでもしたってくれるのは、まんざらでもない気がするな。
よーし、あとは選抜試験の結果が合格していれば言う事なしだな!!
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