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第8話 追放されかけてた令嬢を助ける話3
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「わぁ~……す、すごいです! 本当に手から火が出ます!」
「ええ。正真正銘、お嬢様が初めて覚えた魔法ですよ」
「あはは! すごい!」
あれからしばらくしても、ユミィは自分が魔法を使えたことが余程嬉しいのか、手から出した火の魔法を消すことなく、年相応の子供のようにはしゃぎ回っていた。
それまで悲しそうな目ばかり見ていたが、笑顔ではしゃぎ回る姿はとても可愛らしいものだ。
「それにしても、どうして魔法が……大陸で有名な魔法のお師匠様を何人連れて来ても無理だったのに……」
「先程話した通りですよ。私達のように魔力が普通より多い人間は、通常のやり方では一生経っても魔法が使えるようにはならないんです」
「そ、そうでしたね! うん、そうです!」
そうして、弛緩しきった顔で「えへへ」と笑みを浮かべる彼女に俺は力が抜けてしまう。なんかユミィのノリがあまりにも違い過ぎて驚くが、元々はこんな感じの子なのかもしれない。
浮かれながら足取りを軽くしている彼女を眺めていると、やがてピタッと動きを停めてしまう。
「お嬢様? どうかしましたか?」
俺が常に様子を伺っているから、別に魔法で火傷をしたとかそういう事も無いはずだけど。
突然のことに困惑しつつそう声を掛けると、「コホン……」と声が聞こえてゆっくりとユミィが俺の方へと振り返ってきた。
そして、顔を真っ赤にしながら尊大な態度で俺へと言葉を投げ掛けてくる。
「……す、少しばかりはしゃぎ過ぎましたね。子供ではないのですし、これくらいのことでいちいち喜んでいられません」
「いえ、私もお嬢様もまだ充分に子供ですよ。ですので、お嬢様の喜んでいる姿は自然ですし、見ていて微笑ましいものです」
「わ、私を子供扱いしないで下さい! 私はこれでも『本家』の長女ですよ! 他の者ならいざ知らず、誇り高き『ユーグ家』の『本家』の長女たる私がそのような子供じみた事で一喜一憂するなどあってはなりません!」
いや、今まさに一喜一憂してたけどね。
とはいえ、今それを言うと機嫌を損ねそうだから後で言おう。後で。時間差を付けて。
「そ、それより、この魔法を消す方法を教えて下さい!」
「あぁ、そうでしたね。頭の中でロウソクの火が消えるイメージをしてみて下さい。そっとロウソクの火を息で吹き消すように。ただし、思い切り消すようにイメージしないで下さい。場合によっては、風の魔法が暴発してしまう可能性もありますから」
「え? ろ、ロウソクの火を息で吹き消すように……でも、思い切り消さないように……?」
そう言って、目をつむりながらイメージするユミィだったが―
「きゃあ!?」
「危ない!」
加減が分からなかったのか、火を消すどころか風の魔法が発動してしまい、ユミィの周辺に風が強く舞い始めてしまう。だが、すぐに俺も風の魔法を使ってそれを中和し、相殺したユミィの魔法はゆっくりと勢いを無くしていった。
そして、それを見ていたユミィはペタリと腰を床に付け、驚いた顔で俺の顔を見てきた。
「ご、ごめんなさい、私……」
「まあ、最初はこんなものですよ。実を言うと、僕も最初は森でやった時に木を何本か吹き飛ばしてしまいましたから」
「え……? き、木を何本か吹き飛ばした……?」
「はい。私の場合、師匠が居たわけでありませんので。独学でやっていると、加減というのを探るのも一苦労でしたから」
「ど、独学で魔法を……」
俺の言葉に驚きを隠せず、言葉を失ってしまうユミィ。
そんな彼女の反応に満足すると、俺は尻餅を付いてしまっているユミィへと手を差し伸べた。すると、その意図が分からないのかユミィは困惑した表情を向けてくる。
「あ、あの……これは……?」
「お手をどうぞ。『本家』の方を手助けするのも『分家』の人間の務めですので」
「あ、ありがとうございます……」
そうして、自分の失態を恥じたのか顔を真っ赤にしながら手を取るユミィを起こし、俺はにっこりと笑顔を向ける。
実際、俺の暴走に比べれば、さっきのユミィの暴走なんて全然軽いくらいだ。とはいえ、人に教えるというのは案外面白い。
それに、意外にも彼女は素直で教え甲斐もある。
「では、お嬢様。次は今日の復習をしましょうか」
そんな彼女の成長に期待しつつ、俺はそう言って魔法の授業を再開したのだった。
「ええ。正真正銘、お嬢様が初めて覚えた魔法ですよ」
「あはは! すごい!」
あれからしばらくしても、ユミィは自分が魔法を使えたことが余程嬉しいのか、手から出した火の魔法を消すことなく、年相応の子供のようにはしゃぎ回っていた。
それまで悲しそうな目ばかり見ていたが、笑顔ではしゃぎ回る姿はとても可愛らしいものだ。
「それにしても、どうして魔法が……大陸で有名な魔法のお師匠様を何人連れて来ても無理だったのに……」
「先程話した通りですよ。私達のように魔力が普通より多い人間は、通常のやり方では一生経っても魔法が使えるようにはならないんです」
「そ、そうでしたね! うん、そうです!」
そうして、弛緩しきった顔で「えへへ」と笑みを浮かべる彼女に俺は力が抜けてしまう。なんかユミィのノリがあまりにも違い過ぎて驚くが、元々はこんな感じの子なのかもしれない。
浮かれながら足取りを軽くしている彼女を眺めていると、やがてピタッと動きを停めてしまう。
「お嬢様? どうかしましたか?」
俺が常に様子を伺っているから、別に魔法で火傷をしたとかそういう事も無いはずだけど。
突然のことに困惑しつつそう声を掛けると、「コホン……」と声が聞こえてゆっくりとユミィが俺の方へと振り返ってきた。
そして、顔を真っ赤にしながら尊大な態度で俺へと言葉を投げ掛けてくる。
「……す、少しばかりはしゃぎ過ぎましたね。子供ではないのですし、これくらいのことでいちいち喜んでいられません」
「いえ、私もお嬢様もまだ充分に子供ですよ。ですので、お嬢様の喜んでいる姿は自然ですし、見ていて微笑ましいものです」
「わ、私を子供扱いしないで下さい! 私はこれでも『本家』の長女ですよ! 他の者ならいざ知らず、誇り高き『ユーグ家』の『本家』の長女たる私がそのような子供じみた事で一喜一憂するなどあってはなりません!」
いや、今まさに一喜一憂してたけどね。
とはいえ、今それを言うと機嫌を損ねそうだから後で言おう。後で。時間差を付けて。
「そ、それより、この魔法を消す方法を教えて下さい!」
「あぁ、そうでしたね。頭の中でロウソクの火が消えるイメージをしてみて下さい。そっとロウソクの火を息で吹き消すように。ただし、思い切り消すようにイメージしないで下さい。場合によっては、風の魔法が暴発してしまう可能性もありますから」
「え? ろ、ロウソクの火を息で吹き消すように……でも、思い切り消さないように……?」
そう言って、目をつむりながらイメージするユミィだったが―
「きゃあ!?」
「危ない!」
加減が分からなかったのか、火を消すどころか風の魔法が発動してしまい、ユミィの周辺に風が強く舞い始めてしまう。だが、すぐに俺も風の魔法を使ってそれを中和し、相殺したユミィの魔法はゆっくりと勢いを無くしていった。
そして、それを見ていたユミィはペタリと腰を床に付け、驚いた顔で俺の顔を見てきた。
「ご、ごめんなさい、私……」
「まあ、最初はこんなものですよ。実を言うと、僕も最初は森でやった時に木を何本か吹き飛ばしてしまいましたから」
「え……? き、木を何本か吹き飛ばした……?」
「はい。私の場合、師匠が居たわけでありませんので。独学でやっていると、加減というのを探るのも一苦労でしたから」
「ど、独学で魔法を……」
俺の言葉に驚きを隠せず、言葉を失ってしまうユミィ。
そんな彼女の反応に満足すると、俺は尻餅を付いてしまっているユミィへと手を差し伸べた。すると、その意図が分からないのかユミィは困惑した表情を向けてくる。
「あ、あの……これは……?」
「お手をどうぞ。『本家』の方を手助けするのも『分家』の人間の務めですので」
「あ、ありがとうございます……」
そうして、自分の失態を恥じたのか顔を真っ赤にしながら手を取るユミィを起こし、俺はにっこりと笑顔を向ける。
実際、俺の暴走に比べれば、さっきのユミィの暴走なんて全然軽いくらいだ。とはいえ、人に教えるというのは案外面白い。
それに、意外にも彼女は素直で教え甲斐もある。
「では、お嬢様。次は今日の復習をしましょうか」
そんな彼女の成長に期待しつつ、俺はそう言って魔法の授業を再開したのだった。
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