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キメラ・ハウスからの脱出劇
朱き浪漫
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「おねぇちゃん!!」
救出した皆を連れ、小人の村ナヨージに帰るとシエスタちゃんが走ってお姉さんに飛び込んだ。
「コカナシ! トモ! おかえり!」
一度うずめた顔をこちらに向ける。僅かに残る涙の跡が気にならないほどの笑顔である。
「この度は本当に……本当にありがとうございます。村を代表してお礼申し上げる」
村長が深く頭を下げる。
「いえ、そんな……」
「今宵はどうぞお泊りください。最大のおもてなし料理を用意しました。特に妻が作った……おい、何をする」
奥さんの話を始めた村長が引きづられていく。
「ね、いこ! シェンも飾り付け手伝ったの!」
お姉さんの腰に引っ付いているシエスタちゃんに連れられ、村長の家へと向かった。
*
「コカナシ! トモ! これあげる!」
宴も終盤の雰囲気を醸し出してきた頃、ようやくお姉さんから離れたシエスタちゃんが二つの箱をわたし達に差し出した。
「シェンね、手先がキヨーだねーって褒められたの!」
コカナシさんは細長い箱、わたしは四角の箱。どちらも木製の物で可愛くデコレーションされている。
「これ、シエスタが可愛くしてくれたのですか?」
「うん! 箱はそんちょーがコレにしなさいって!」
「これシエンシス、まだ中身を入れておらんじゃろう」
慌てた村長が二つの風呂敷を持って走ってきた。
「これはお礼の品。コカナシさんにはコレを」
「手に馴染む……手作りの包丁ですか?」
「ええ、上手く扱えば猪の骨を相手取っても溢れぬ刃を持つ秘伝の包丁。小人族である貴女ならば扱えるでしょう」
コカナシさんの箱に包丁を入れ、村長はわたしの前に来る。
「トモノさんは錬金術師と聞いた。いつかコレが役立つでしょう」
「これは……」
*
「またね、絶対またね! さよならじゃなくてまたね!」
「うん、また来るよ」
シエスタちゃん達に見送られ、わたし達は村を出た。
「うへぇ……喉がもう限界だ」
一緒に来たデュパンさんはずっと謝り倒していたらしい。
「ところで、綺麗な宝石だね」
視線はわたしのペンダントに向けられている。
「宝石……とは、少し違います」
真紅の石を撫でて答えようとしたら手で止められた。
「ちょっと待ってくれ。推理しよう」
少しのあいだ顎を撫で「あっ」と言って手を叩く。
「その深紅……加工されてなく貰ったのはあの村……ならば例の龍の目だね」
「はい、本当に龍の目なのかはわかりませんけど……」
「まあ、そこはロマンというやつですよね。生命力は保有していそうですし、何かしらの生物の何かではありそうですけど」
森を抜け、差した光が石に反射する。
赤きソレを胸にしまい前を向く。
「ロマン……ですねぇ」
救出した皆を連れ、小人の村ナヨージに帰るとシエスタちゃんが走ってお姉さんに飛び込んだ。
「コカナシ! トモ! おかえり!」
一度うずめた顔をこちらに向ける。僅かに残る涙の跡が気にならないほどの笑顔である。
「この度は本当に……本当にありがとうございます。村を代表してお礼申し上げる」
村長が深く頭を下げる。
「いえ、そんな……」
「今宵はどうぞお泊りください。最大のおもてなし料理を用意しました。特に妻が作った……おい、何をする」
奥さんの話を始めた村長が引きづられていく。
「ね、いこ! シェンも飾り付け手伝ったの!」
お姉さんの腰に引っ付いているシエスタちゃんに連れられ、村長の家へと向かった。
*
「コカナシ! トモ! これあげる!」
宴も終盤の雰囲気を醸し出してきた頃、ようやくお姉さんから離れたシエスタちゃんが二つの箱をわたし達に差し出した。
「シェンね、手先がキヨーだねーって褒められたの!」
コカナシさんは細長い箱、わたしは四角の箱。どちらも木製の物で可愛くデコレーションされている。
「これ、シエスタが可愛くしてくれたのですか?」
「うん! 箱はそんちょーがコレにしなさいって!」
「これシエンシス、まだ中身を入れておらんじゃろう」
慌てた村長が二つの風呂敷を持って走ってきた。
「これはお礼の品。コカナシさんにはコレを」
「手に馴染む……手作りの包丁ですか?」
「ええ、上手く扱えば猪の骨を相手取っても溢れぬ刃を持つ秘伝の包丁。小人族である貴女ならば扱えるでしょう」
コカナシさんの箱に包丁を入れ、村長はわたしの前に来る。
「トモノさんは錬金術師と聞いた。いつかコレが役立つでしょう」
「これは……」
*
「またね、絶対またね! さよならじゃなくてまたね!」
「うん、また来るよ」
シエスタちゃん達に見送られ、わたし達は村を出た。
「うへぇ……喉がもう限界だ」
一緒に来たデュパンさんはずっと謝り倒していたらしい。
「ところで、綺麗な宝石だね」
視線はわたしのペンダントに向けられている。
「宝石……とは、少し違います」
真紅の石を撫でて答えようとしたら手で止められた。
「ちょっと待ってくれ。推理しよう」
少しのあいだ顎を撫で「あっ」と言って手を叩く。
「その深紅……加工されてなく貰ったのはあの村……ならば例の龍の目だね」
「はい、本当に龍の目なのかはわかりませんけど……」
「まあ、そこはロマンというやつですよね。生命力は保有していそうですし、何かしらの生物の何かではありそうですけど」
森を抜け、差した光が石に反射する。
赤きソレを胸にしまい前を向く。
「ロマン……ですねぇ」
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