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新しい日常

忘れてはいけないこと

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「なあ陽彩、そういえば聞いてなかったけどこれからどうするんだ?」

 今日の授業が終わり、特に用事も無かった俺たちは一緒に下校していた、その途中ふと浮かんだ疑問を口にしてみる。

「何するってどういう意味?普通に学生だけど」
「ああいやそういうことじゃなくてな、よく考えてみれば陽彩が学校以外で何をしていたのかよく知らないし、だからお前は学校以外の時は何するんだろうなって」
「はぁなんとも微妙な質問なこと、じゃあ逆に聞くけど君は何してるのさ」

 質問に質問で返すなと教えられなかったのかと言いたいところだが、確かにわかりにくい質問ではあったか。
 ていうか俺も答えるの難しいな。

「そうだな、放課後は特に目的無くダラダラ過ごすことが多いのかな、柊や有紗とかと遊んだり、一人でどっかのお店に行ったり。後はまあ妹と家で過ごしたりとか」
「あー妹ね確か光花ちゃんだっけ、話でしか聞いたことないから一度会ってみたいな」
「また今度機会あれば会ってあげてくれ、なんか光花も陽彩のこと興味あるって言ってたし」
「おーほんとに?それは楽しみにしておこう、というかなんなら今日でもいいよ?」
「あー今日は辞めといたほうがいいと思う部活で遅くなるって言ってたし、それに休日のほうがゆっくりできるしいいんじゃないか?」
「それもそうだね、また予定聞いといてね、わたしはいつでも空いてるから」
「知ってる知ってる」

 どれだけ連絡来てると思ってるんだ、大体のことは把握してるわ。

「ていうかさっきの質問答えろよ、結局これから何かしたりしないのか?」
「そうだねえ、こんな感じで大月と話したり、両親と一緒に過ごすのもそれはそれで別にいいんだけど、他に何かあるかなー……ああでもそうだね、記憶を取り戻すことを考えたら色々なことをして脳を刺激するのがいいか」

 ……聞いておいてなんだがまさか彼女のほうからそのことを言い出してくるとは思わなかった。

「何意外って顔してるの?わたしがそのこと考えていないとでも思った?」
「いやだっていいのかお前はそれで?……もし記憶が戻ったらお前の人格は無くなってしまうかもしれないんだぞ?」
「いや大月はわたしの記憶が戻ってほしいのか戻ってほしくないのかどっちなのさ、普通は元ある状態に戻そうとするんじゃないの?」
「そうかもしれないよ、そうかもしれないさ……だけどそう簡単に割り切れるものでもないだろ」
「あーだからそれはわたしの認識と大月の認識って大きく違うからそう思うだけよ」

 そういえばこんな会話前にもした気がする……あの時だ、陽彩が記憶を失った直後に自分の状態を聞かれた時と同じ雰囲気だ。

「つまりねわたしにとっては前のわたしも今のわたしも同じ一人の夢ヶ島陽彩なの、だから今のこの状態で過ごそうが、前の人格に戻ることになろうがわたしにとっては何も変わらないの、結局どういう風に転んだとしてもわたしはわたしでしかないのよ。まあ強いて言うなら皆が言う元のわたしに戻った方が、皆も安心するだろうなって思うから記憶を戻すことに賛成してるだけだよ」

 なるほどそれなら確かに俺らとは全く感覚の違う話だ、実際に記憶が戻ってみないと分からないことだらけではあるがギリギリ理解できる範疇だ。

「それより大月の方が問題でしょ、元のわたしに何をしたのかは聞かないけどしっかりと罪滅ぼしは考えときなさいよ」

 ……わかってる勿論忘れたことは無い、が俺がどう許しを乞うた所で許してくれるかどうかはわからない、いや確率はかなり低いとみている、だから考えないようにしていたことだ。

 けどタイムリミットは必ず来る。







 ここで真剣に考えれず逃げてしまうのが俺の悪いところだと思う……それはわかっているが今はこれからのことを考えよう。

 陽彩にこれからどうするのかを聞いたのは今のあいつは放っておくと何するかわからないからだ、今日だってクラスメイトとあれだけ仲良くなったんだ、これからも俺の想像なんて簡単に越えてくると考えていいだろう。
 じゃあそうなる前にある程度手綱を握っておきたいという魂胆だ、まあ勿論それに素直に従ってくれるかはまた別の話としてな。
 後気になるのはやはり勝野のことだ、今は登下校を共にしてるし前みたいに不用意に路地裏に入らないようにも気を付けてるし、危険度は少ないと思うけど油断はできない……ていうか路地裏で襲われるってどんだけ運が悪いんだよ、冷静に考えてみるとそうあることじゃないよな。
 それによく考えてみたら何故夢ヶ島は殴られたのか、激しく抵抗したのならあり得ないことではないだろうけど、どうにも違和感が拭いきれない。

 ……まあ色々と気になることはあるが今できることは何もない、とりあえず陽彩がこれから何をするのかは考えると言ってたし、今はあいつ待ちでいいだろう。




 家に着いてからある程度時間潰したところで料理を始める、光花は遅くなるそうだからそれに合わせてご飯を作るタイミングもいつもより遅い。
 ある程度料理を作り終え光花の帰りを待つ、それからほどなくして帰宅した光花とご飯を食べ始める。

 少しすると光花がこんなことを聞いてきた。

「ねえお兄ちゃん、今日はその夢ヶ島さんと一緒に登下校してたの?」
「そうそう、しばらくはその予定だけど……あれ?なんで知ってるんだ?」
「ああ実はね、あの舞歌まいかちゃんが二人が一緒に歩いているところを見たって教えてくれたの」
「あーあの#亀田_かめだ__#さん家の舞歌ちゃんね、なるほどなるほど」

 舞歌ちゃんとは、この近くに住んでいる光花の同級生で、結構昔からの知り合いだから俺のことも知っている。

「しかも舞歌ちゃんすっごく興奮した様子でね、光花のお兄ちゃんが滅茶苦茶綺麗な人と一緒に歩いていた!!って、報告してきてびっくりしたよ。」
「まあ確かに陽彩はなあ……言われても納得の容姿だと思うわ」
「陽彩……?」
「そう夢ヶ島陽彩、あ、そうそうその陽彩が今度お前に会いたいって言ってるんだけど、どうだ?会ってみないか?」
「夢ヶ島さんが!?……うんいい機会です直接お話しするとしましょう……はい是非お願いしたいです、そう伝えといてくれる?」

 何か思っていた光花の反応と違うんだが、途中小言で聞き取れなかったし……まあいいやとりあえず会うことを了承してくれたし。

「おっけーわかった伝えとく、日にちとかも調整してまた伝えるわ」
「ふふお願いします楽しみにしています」

 何処か得体の知れない雰囲気を光花から感じたけどこれは関わらない方がいいな、なんせちょっと目が怖いです。
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