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始まりの日、始まってしまった日

俺の日常3

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 さて教室についた俺たちは一先ず席に着くために別れた、と一人になったのも束の間、教室の中にいた一人が、机や椅子に当たるのを考えずにものすごい勢いで俺の席まで走って来た。

「おはよう!!大月、さっそくだけど宿題を見せてくれ頼む!!」
「おはようさん柊、いやまあいいんだけど、そんなに焦らなくても数学の授業昼休みの後だから大丈夫じゃないか?」
「それがそうもいかんのよ、部活のことでちょっとやらないといけないこともあるし、君島先生からも頼み事されているし、早めに済ましせておきたいのよ」
「忙しいのは分かったけど、それなら昨日のうちにやっとけばよかっただろうに」
「その通りすぎるんだけど...、うんいや実は昨日弟が軽く熱を出して寝込んでしまって看病してたのよ、それで疲れもあってそっちまで手が付けられなくてね、だから見せてくれると助かるなと」
「それ言われたら何とも言えんなぁ、まあ見ていいからくれぐれもばれないようにしろよ」
「ありがとう!!わかってる、先週の有紗みたいには絶対になりたくねえ...」

 そうやって柊が恐れるくらいあの人を怒らせると怖いのよ。

 と柊との会話が終わった後、ふと扉に目を向けると黒が目に飛び込んできた、それは鮮やかで光沢を発しているかの如く漆黒、そんな黒髪を持つ生徒を俺は一人しか知らない、その彼女が周りのクラスメイトに挨拶をしながら俺の席の隣までやってきた、靡く髪の毛から感じる匂いに自然と心拍数が上がってしまう、毎日思うんだけど彼女が発するふわっとした甘い匂いには一向に慣れる気配がない、まあでも許してほしい、皆も1回目にすると俺の気持ちがわかるはずだ。

 彼女ほど心が綺麗でまた見た目もこの上ないぐらい美しい人間は今まで出会ったことがないし、これからも出会うことがないのだろうとどこか予感している、そのオーラと存在感だけで邪な気持ちがどこかに消え失せるような感覚を覚える、まあなんにせよ俺を含めたそこら辺の人間と比べるにはちょっと次元が違いすぎる彼女である。

 彼女の名前は夢ヶ島陽彩ゆめがしまひいろ、本人にあまり自覚は無いようだけど、ぱっちりと開いた大きな目に、すっと一本線が入ったような鼻、あと見るからに健康そうな口元等、まあ上げたらきりがないが、なにせこの学校の1番の有名人と言っても差し支えないはずだ。

 そうでなくても誰にでも優しく、それでいて言うべきところでははっきりと物申す、その絶妙なバランス...正直かなり優しさによっていると思うけど、ほんとに念を押したいぐらい聖人君子ぶりである。

「あ、おはよう嬉野君、佐久間君かなり慌ててたみたいだけど大丈夫だった?」

 そしてこのフランクさである、人気が出ないほうがおかしいね、ていうか非公式高公式だかのファンクラブが出来ていることを俺は知っている、ただ話しかけられる方は毎回ドキドキだってことをわかってほしい。

「おはよう、まあ大丈夫よ、宿題が終わってないだけだから」
「そうなんだ!でも宿題は家でやらないといけないってちゃんと言ってあげないとだめだよ?」
「わかってるわかってる、それにあいつにも事情があるから心配しなくて大丈夫よ」
「うんわかった、でも何か問題あればいつでも相談してね、困ったときはお互い様だもん」

 おおう、ここまでくると普通ならあざとさを覚えるレベルだけど、これが不思議と全く悪い気がしない、流石夢ヶ島陽彩ってところか。
 駄目だ駄目だ、彼女と話していると自然とテンションが上がるのか変な思考になってる自分がいる、自制しなければ自制。

 そうこう話しているうちに時間は8時30分になり、朝礼開始のチャイムが鳴って、今日の学校生活が始まりを告げた。
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