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始まりの日、始まってしまった日

俺と彼女の始まり

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 雨の降る街の路地裏、学生や主婦たちが多くいるはずの大通りから少し離れたその場所で俺は後悔に苛まれていた。

 俺の頭にはっきり映るのは彼女が最後に見せた裏切られショックを受けた顔で、信じられないと言わんばかりの目がこちらを見ていた光景だ、自分の身可愛さに彼女を見捨てたのは俺であり、そんなこと思う資格はないのだろうが、彼女のことが心配になり吐き気を催した、ただそれでもあの何もかもを見通すかのような目に囚われてしまったごとく、彼女のことが頭から離れない。

 そう長く時間は経っていないのだろうが、1秒が何十倍にも引き延ばされているような感覚の中で、俺は決心しようとしていた、いや実際は決心なんて大層なものではなくただ衝動的なものだと思うが、体温をほとんど感じずふわついている体で今まさに走って来た道を引き返した。




          だが

       そんな俺の薄い決心を

        嘲笑うかのように

     息を切らす俺の目の前でまさに今




 彼女は頭を殴られ血を流したまま道に倒れ伏した










 流石にやばいと感じたのか逃げ出す3人組を急に眼が回ったかのような錯覚に陥りながら目の端に捉えた俺は後悔と共に別のことを考えていた。




 俺は人間として必要な何かが欠けているんじゃないかって思ってる、人が不幸な目に合っていても可哀そうだなと思うよりも前に「自分じゃなくてよかった」と考えてしまうしなんなら自分に害が及びそうならこちらから先に潰してしまえと考える始末だ、ただ運はいいんだろうな、その自分の醜さを隠すことのできる賢さはあったし、機転が利くから今まで問題なく社会生活を営むことが出来た。




 中学に上がる頃には嫌だった自分の性格にもある程度折り合いをつけることができていた、所謂中二病的な考えだけど、まあ要するにちょっと人間のダークサイド的な部分に漠然とした憧れを持っていたみたいで、今から考えると浅はかとしか思えないし、想像するだけで罪悪感に悩まされるのだけど、当時の俺にはそんなことわかる訳がなかった、ただ繰り返すようだけど運はよかった、少々目に余る言動をしてしまってもまだ子供だからと許されたし、時には叱られることもあったけど問題になることはなかった。




 さてこういった回想を考えているからにはもちろん理由がある、それは先ほどここに戻って来るときに彼女の身を案じていたこと以外に考えていたことが原因だ、そして今衝撃的な光景を目の当たりにしながら、俺の頭にあったのは、「ああ、俺の醜い正体がばれなくても済むかもしれない」なんていうどうしようもなく自己中心的な考えだった。
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