たかが、恋

水野七緒

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第7話

1・サッカー部の結果

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 まだ木曜日にも関わらず、校内の雰囲気はどこかソワソワしている。
 たぶん、文化祭を控えているせい。明日の午後から前夜祭がはじまるのだ。
 明らかにクラス展示に手を抜いているうちのクラスですら、みんなどこか浮き足立っているんだから、本気で力を入れている人たちがおかしなテンションになるのも当然だろう。
 ただ、私がソワソワしているのは文化祭のせいじゃない。
 ぜんぜん別の理由からだ。

「みんなーっ、聞けーっ」

 放課後、教室の清掃をしていると、お調子者の坂田くんが勢いよく駆け込んできた。

「サッカー部勝ったって! 決勝進出だってよ!」

 それだ。その情報を待っていたのだ。イライラさせられることが多い坂田くんだけど、今回はありがとうって感じ。

「マジで? どこ情報?」
「職員室! さっき先生たちが話してた!」
「すげーなぁ、県大会で決勝かぁ」

 しみじみ呟いたのは、野球部の西原くん。そういえば、野球部は準決勝で負けたんだっけ。

「あ……決勝点を決めたの、間中らしいよ」

 そう付け加えたのは、クラスで一番背が高い徳永さんだ。

「え、それどこ情報?」
「お姉ちゃん情報。うちのお姉ちゃん、サッカー部のマネージャーだから」
「マジか……すげーな、マナ」

 ほんとだよ! すごいよ、間中くん!
 モップでゴミを集めながら、私は心のなかでガッツポーズをした。
 またうまくディフェンダーのマークを外せたのかな。だとしたら、トレーニングの成果が出ているってことだよね。
 とはいえ、これで「告白作戦」はちょっと大変なことになった。
 なにせ、決勝戦は日曜日──文化祭2日目とかぶっているのだ。
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