たかが、恋

水野七緒

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第6話

2・友達の顔

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 試合当日のことを確認して、この日の作戦会議は終了となった。
 5時間目開始まではまだまだ時間がある。間中くんは、このあと隣のクラスに顔を出すみたいだ。

「あのさ!」

 渡り廊下の真ん中あたりで、いきなり間中くんが立ち止まった。

「なんか今日、元気なくね?」
「誰が?」
「佐島が」
「そんなことないよ。いたってふつうだけど」

 まあ、間中くんと比べれば元気ないかもね。もっとも、間中くんレベルで元気がある人なんてそうそういないけど。

「いや、でも……なんか……なんか……」

 まただ。この煮え切らないような態度。
 こういうときは待つに限る。下手に突っつくと、間中くんは焦って適当な答えを口にしちゃうから。

「あのさ……あれだ! 最近の佐島、ちょっとときどきボーッとしてることがある!」

 ──うん? 最近?

「ただボーッとしてるだけならいいんだけど、なんかちょっと悲しそうにボーッとしてる。そういうの、見ててすっげー気になる」

 だからさ、と間中くんはニパッと笑った。

「なんかあったら相談──は、俺、頭悪いから無理かもしれねーけど。話くらいなら聞く! いくらでも聞く! だから、なんか話したくなったら俺に言えよな!」

 ああ──これは「友達」の顔だ。「友達」として、私のことを気にかけてくれているのだ。
 どうしよう、嬉しい。
 嬉しいけどしんどい。
 割合だと5:5──あ、でも今は「しんどい」のほうがちょっと優勢かも。

「わかった、ありがとう」
「どういたしまして!」

 胸を張る彼は、どこかスッキリとした様子。言いたかったことを伝えられたから、満足しているんだろうな。
 でも、ごめん。間中くんにだけは話せない。
 間中くんにだけは打ち明けられない。

(厄介だなぁ)

 どうしたって、うまくいかない恋。
 そういうの、みんなどうやって処理しているんだろう。
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