たかが、恋

水野七緒

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第5話

10・それでも…

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「それでもいい」

 ようやく答えが返ってきた。

「やけくそでも苦しくてもいい。俺は後夜祭に賭けたい。後夜祭のときに、池沢先輩に告白したい」
「……」
「つーか、まだそうなるって決まったわけじゃないじゃん! 俺はうまくいくって信じてんだって!」

 大きな目が、再び強い輝きを放つ。
 ああ、こういうのをきっと「目力が強い」っていうんだ。相手に有無を言わせない、絶対に自分を曲げない人がもつ強い眼差し。

「ああああああ……っ」

 私は思いきり叫んだ。そうでもしなければやってられなかった。
 ギョッとしたように間中くんが後退る。
 でもさ、これくらいさせてよ。これから、私は私の意見を曲げるんだから。

「わかった。やれるだけのことはやってみよう」
「マジで? 賛成ってこと?」
「賛成はしてない。けど……」

 そこまで言うなら、力を貸すしかないじゃん。
 腹をくくるしかないじゃん。

「とりあえず、まずは県大会に誘うことだよね。それ以外にもアピールできそうならがんばって、それから後夜祭のジンクスについてもリサーチして……」
「リサーチってなに?」
「調べること。ああ、もうやることいっぱいじゃん」

 でも、それがいい。そのほうがいい。
 それなら、あれこれ考えなくて済むから。

「さっすが佐島、頼りになる!」

 間中くんの笑顔は、あいかわらずまぶしい。なのに泣きたくなるなんて、まるで意味がわからなかった。
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