たかが、恋

水野七緒

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第2話

10・しつこい友達(その2)

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 なのに、今日も間中くんはしつこい。朝、玄関で内履きに履きかえていると「佐島ぁ」とどこからともなく現れる。

「無理」
「なんでだよー?」
「なんでも。無理なものは無理」

 同じように内履きに履き替えていた子たちが「なにあれ」って感じでこっちを見ている。
 ああ、いたたまれない。こういうの、ほんとやめてほしい。
 最近では、クラスメイトたち好奇の目を向けられているくらいだし。
 なので、今日こそこの状況を変えると決めた。

「昼休み、ここに来て」

 渡したのは、「ひみつの場所」への地図。

「……これ、どこ?」
「来ればわかる。この場所、ひみつだから絶対誰にも教えないで」
「えっ、佐島のひみつ基地ってこと!?」

 すげーやべーかっこいい!
 無邪気にはしゃぎだした間中くんにめまいを覚えたけど、ここは我慢。誰かに聞かれないように、早く会話を切りあげないと。

「いい、わかった? 給食が終わったらここに来て」
「おう」
「絶対、誰にも内緒だからね?」
「おう!」

 間中くんは飛び跳ねるような足取りで、先に教室に行ってしまった。
 なんだかワクワクしているみたいだけど、あいにく彼の期待には応えられない。

(今日こそはっきり断ろう)

 それで、こんなふうなつきまといをきっぱりやめてもらうんだ。
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