たかが、恋

水野七緒

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第2話

8・しつこい友達(その1)

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 というわけで──

「なあなあ、佐島佐島、佐島」

 今日も朝から、間中くんは私のあとをついてくる。

「なあ、考えてくれた? キューペットの件」
「ペットじゃないから。『ピット』もしくは『ピッド』だから」
「それそれ、キューピット」

 もうやだ、しつこい。
 でも、間中くんのほうが足が長いから、振り切るのはたぶん無理だ。それに行き先は同じ教室だし。
 あれから3日──何度も断ったけど間中くんはあきらめようとしない。

「佐島しかいねーんだよ。池沢先輩と仲いいの」

 そんなことない。結麻ちゃんと同じ吹奏楽部の人、うちのクラスにも何人かいるでしょ。

「でも、あいつらはこのこと知らねーし」
「打ち明けて相談してもらえば?」
「無理! 絶対無理!」

 大声で否定したあと、間中くんはぽつりとつぶやいた。

「バレたら絶対笑われる。俺のキャラじゃないって」

 ──たしかに。
 少し前、間中くんが、私に「付き合って」って言ったときのことが脳裏をよぎる。
 あのときのクラスメイトたちの反応はほぼ「ありえない」って感じで、私はそれを「佐島なんかと?」って意味だと受け取った。けれど、実際はそれだけじゃなかったのかも。「間中が告白!?」とか「間中って好きな子いたの?」とか、そういうのもあったりして。
 って、流されるな私!

「なあ、佐島──」
「ダメ、無理」

 元親友の恋バナにすらうんざりしてしまった私だ。間中くんに協力できるとは思えない。
 それに「一目惚れ」っていうのも気に食わない。

(そういう人、すごく多いけど)

 それって、つまり結麻ちゃんの外見が好きってことでしょ?
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