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第5話

13・いつものカフェにて(その3)

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 ──は? なに言ってんだ、この人。
 さすがにカチンときた俺は、遠慮なくナツさんを睨みつける。
 けれど、ナツさんの態度は変わらない。

「青野、さっきからこっちのオレへの気遣いがどうのこうの言ってるけどさー、本音はフラれるのが怖いだけじゃん。フラれたくないから、あれこれゴチャゴチャ言い訳してるだけじゃん?」
「違います! 俺は本当に──」
「伝えない想いに価値なんてないから」

 ナツさんは、容赦なく吐き捨てた。

「お前がどんなに『夏樹さん』を好きでも、大好きな『夏樹さん』のなかにお前の居場所はないから! ぶっちゃけ、お前なんかランク外だ!」

 はぁぁっ!?

「なんですか、その『ランク外』って!」
「大事な人ランキングだよ! オレのなかにもあるから、たぶんこっちのオレのなかにもある……絶対にある!」
「いや、そんなの勝手に……」
「お前はランク外! 妹の彼氏なんてその程度!」

 さらに「バーカバーカ、ランク外!」と付け加えて、ナツさんはべーっと舌を出してきた。
 なんだ、この人……本当に何なんだ!

「わかりました、だったらランク外でいいです。──どうせナツさんが考えたランキングでしょうし」
「はぁっ!?」
「夏樹さんは違いますから。あの人は、そんなランキングつけませんから」
「いーや、つけてる!」
「つけてません!」
「うるせぇ、この意気地なし!」
「そちらこそ、最低最悪わがままな浮気野郎でしょう!」

 口喧嘩はとめどなく続き、最後は店員が「申し訳ありませんが、他のお客様のご迷惑ですので」と間に割って入ってきた。
 ナツさんは、しつこくストローを噛みつづけ、俺はパリパリのカラメルに何度もスプーンを突き刺した。
 なんだ、この状況は。なんなのだ、一体。
 今日、俺は「この間のお礼」のために、このカフェに呼び出されたはずだ。
 なのに、なぜ俺たちは、低レベルの、小学生並みの、くだらないぶつかり合いをしている?

「青野の意気地なし」

 ナツさんはしつこく呟くと、ぶくぶくとロイヤルミルクティーに息を吹き込んだ。子どもか。やっぱり小学生か。ほんと、どうしようもないな、この人!
 なのに、どうして俺は言い返せないんだろう。「俺は意気地なしなんかじゃない」って。
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