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第9話
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冷静になってみれば、とんでもない発言だ。
時間帯からして周囲には登校中のヤツらがたくさんいるわけで、案の定みんなギョッとしたようにこっちを見ている。
「わがままプリンセス」に慣れているはずの青野も、これにはさすがにドン引きしたようだ。
「は? なに言ってるんっすか、あんた……」
「いいじゃん、して!」
「いや、それはさすがに……」
「して! おねがいだからして!」
最後だから。
もう二度とこんなこと言わない──言えないから!
「おねがい、青野。今すぐキスして!」
俺の必死の頼みに、青野はうんざりしたようにため息をついた。
「だから嫌ですってば」
「……」
「お願いですから勘弁してください」
「……そっか」
まあ、そうだよな。ふつうに考えると、すげー恥ずかしいよな。
俺だって、普段なら絶対言わねーよ。いちおう人並みの羞恥心を持ち合わせているわけだし。
と、青野が小さく舌打ちした。
やべ、すげー苛ついてる……そう思った矢先、両頬を押さえつけられ、唇と唇が軽くぶつかった。
(え……えっ?)
呆ける俺の目の前で、青野は絞り出すような声を出した。
「ほんと勘弁してください」
「……」
「じゃあ、また明日」
首まで真っ赤に染まった状態で、青野は足早に去って行く。
けれども、俺はなかなか動けなくて。「嬉しい」とか「びっくり」とかいろんな気持ちがグチャグチャに混ざり合っている状態で。
でも、遠ざかる背中を見送っているうちに思ったんだ。
ああ、明日またこいつはうちの最寄り駅まで迎えに来てくれるんだろう。で、お前が本当に好きになった「俺」と一緒に、当たり前のように登校するんだろうな。
そのとたん、一気に視界が歪んだ。
感情のかたまりのようなものがググッとこみあげてきて、俺は慌てて口元を押さえた。
バカ、泣くな。
こんなところで泣いたら、めちゃくちゃ恥ずかしすぎるだろうが。
でも、本当は子どもみたいに泣きたかった。
わんわん声をあげて大泣きしたかった。
時間帯からして周囲には登校中のヤツらがたくさんいるわけで、案の定みんなギョッとしたようにこっちを見ている。
「わがままプリンセス」に慣れているはずの青野も、これにはさすがにドン引きしたようだ。
「は? なに言ってるんっすか、あんた……」
「いいじゃん、して!」
「いや、それはさすがに……」
「して! おねがいだからして!」
最後だから。
もう二度とこんなこと言わない──言えないから!
「おねがい、青野。今すぐキスして!」
俺の必死の頼みに、青野はうんざりしたようにため息をついた。
「だから嫌ですってば」
「……」
「お願いですから勘弁してください」
「……そっか」
まあ、そうだよな。ふつうに考えると、すげー恥ずかしいよな。
俺だって、普段なら絶対言わねーよ。いちおう人並みの羞恥心を持ち合わせているわけだし。
と、青野が小さく舌打ちした。
やべ、すげー苛ついてる……そう思った矢先、両頬を押さえつけられ、唇と唇が軽くぶつかった。
(え……えっ?)
呆ける俺の目の前で、青野は絞り出すような声を出した。
「ほんと勘弁してください」
「……」
「じゃあ、また明日」
首まで真っ赤に染まった状態で、青野は足早に去って行く。
けれども、俺はなかなか動けなくて。「嬉しい」とか「びっくり」とかいろんな気持ちがグチャグチャに混ざり合っている状態で。
でも、遠ざかる背中を見送っているうちに思ったんだ。
ああ、明日またこいつはうちの最寄り駅まで迎えに来てくれるんだろう。で、お前が本当に好きになった「俺」と一緒に、当たり前のように登校するんだろうな。
そのとたん、一気に視界が歪んだ。
感情のかたまりのようなものがググッとこみあげてきて、俺は慌てて口元を押さえた。
バカ、泣くな。
こんなところで泣いたら、めちゃくちゃ恥ずかしすぎるだろうが。
でも、本当は子どもみたいに泣きたかった。
わんわん声をあげて大泣きしたかった。
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