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第4話

7・瞑想、迷走…?(その2)

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「まあ、いいか」

 いや、よくねーよ! さんざんもったいぶっておいてそれかよ!
 再び抗議する俺に、八尾はカラカラと笑った。

「だって、やっぱ違うだろ。第三者の俺があれこれ言うのは」
「とか言って、ほんとは説明するのが面倒くさくなっただけだろ」
「ハハハッ、わかってんじゃねーか」

 くそ、こんなの詐欺だ。俺の心をもてあそびやがって。

「まあ、でも安心しろよ。一番大事なとこは迷走してねーから」
「というと?」
「お前を元の世界に戻すって計画。そっちはちゃんと前進してんだ、だったら何も問題ないだろ」

 「な?」と親指をたてる親友に、不覚にもちょっとキュンときた。
 なんだよ、こっちの八尾。思ってた以上に頼りがいがあるじゃん。

「ヤバい、惚れそう」
「いいぞ惚れても。青野にまた嫌味言われるだろうけど」
「それは……ちょっと困る」

 いや、嫌味そのものは我慢できなくもないんだけどさ。
 あいつ、たぶんまた傷ついた顔するだろ。
 それは嫌だ。絶対に嫌だ。
 だって、そういうときのあいつ、本当に辛そうなんだ。緑色の目をゆらゆら揺らして、そのくせ「なんともありません」って強がろうとして。

「そういうの見ちゃうと、罪悪感がすごいっつーか」
「あーそれな、こっちのお前も言ってたわ」

 だよな? やっぱりそう思うよな?
おお、やっとこっちの俺と意見が合って……

「だから、ときどきすげーいじめたくなるんだと。意外とSだよな、こっちのお前」

 ──前言撤回。こっちの俺、ただのひどいヤツだった。
 あの青野を見て「いじめたくなる」なんて、人の心がなさすぎるだろ。

「でもよ、お前が元の世界に戻った場合、青野はその『ひどいお前』とよりを戻すことになるんじゃねーの?」
「う……」
「まあ、十中八九戻るだろうな。こっちのお前、マジで自己主張強いから『別れたなんて聞いてない! 青野は! 俺の彼氏!』って大騒ぎするだろうし」
「お、おう……そっか……」

 ヤバい、迷いが生じてきた。
 こっちの俺とよりを戻すのは、青野にとって幸せなのか?
 やっぱりナナセと付き合ったほうが幸せになれるんじゃないのか?
 でも、そうなったらそうなったで、なんだかまたモヤりそうだし……

(いっそ、俺が青野と……)

 そこまで考えたところで、我に返る。
 待て待て、なにを言い出すんだ、俺。
 それはない、絶対にない!
 俺が青野と付き合うなんて、そんなこと……

「ま、青野の話はそれくらいにして。もうちょっと話を詰めようぜ」
「お、おう」

 そうだ、大事なのはそっちだ。今は、どうやったら俺が元の世界に戻れるのかを考えないと。
 その結果、青野がこっちの俺とよりを戻すかどうかは青野自身の問題だ。俺が口出しすることじゃない。

「とりあえず『瞑想』は絶対試すとして──他にお前がやっていそうなことってあるか?」
「それが、あるにはあるけど、すげーありきたりなことばかりなんだよな」
「というと?」
「マンガを読むとか動画を観るとか、あとは……SNSをチェックするとか」

 どれもあまりにもふつうすぎて、特別感がぜんぜんない。
 それに、このテのことって、これまでの満月の日に何度もやっていたことだろ? なのに前回まで何も起こらなかったんだから、こういうのは除外していいと思うんだ。

「たしかに……となると、今んとこ『瞑想』だけが新しくやりはじめたことってわけか」
「ああ、たぶん……俺が覚えている限りでは」

 なんかごめんな、はっきり断言できなくて。
 謝ると、八尾は「気にするな」と笑ってくれた。

「まだもうちょっと日はあるだろ。また何か思い出したら教えてくれ」
「わかった」
「あとは、そろそろ具体的なことを決めないとな」
「というと?」
「時間と場所。『満月の日』なのは確定として、昼間に試すか、夜に試すか。場所は学校か、お前の家か。俺に付き添ってほしいなら、場所は『病院』一択で時間も限られるわけだけど……」

 というわけで、ふたりでさらに話し合った結果──
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