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第4話
2・妹からの苦言
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「──は?」
俺が? 青野と? よりを戻したい?
「だって、やけに気にしてるじゃん、青野のこと」
「そ、そんなことねーよ! べつに気にしてなんか……」
「じゃあ、なんで私にいろいろ訊いてくるの?」
「それは……」
お前が青野と同じクラスだから。
お前くらいしか聞ける相手がいないから。
なにより──
(お前、青野とすげー仲よさそうだし)
最後の一言は、やっぱり口にはできない。だって、それこそやきもちを妬いてるみたいだし。
(そんなことねーっての)
しつこいようだけど、俺は青野には幸せになってほしい。そのためなら、今後あいつが誰と付き合おうがかまわない。
こっちの世界の俺とよりを戻そうが、ナナセと付き合うことになろうが、俺としては「どうぞどうぞ」ってスタンスだ。──いちおうは。
なのに、妹の目はいつになく冷ややかだ。
「なんか……お兄ちゃん、変わったよね」
いや、変わったもなにも中身は別人だからな。
「前のお兄ちゃんはさ、もうちょっと、こう……おバカな感じっていうかさ」
「おい」
「バカでやりたい放題で、私や青野にいっぱい迷惑かけて──でも、すごく素直でわかりやすかった。そういうところ、ちょっとすごいって思ってた」
「え……」
「だって、ふつうはさ、お兄ちゃんみたいに素直になれないんだよ。意地やプライドがあるし、周囲の目も気になるし、空気読まないといけないし。そんな好き勝手なこと、そうそうできっこないじゃん」
でもさ、とナナセは続けた。
「今のお兄ちゃんは、私らとそんなに変わらないよね。ていうか下手すれば私より意地っ張りかも」
「いや、それは……」
「別にいいじゃん、青野のことが気になるなら気になるで。あれだけ『好き好き』って騒いでた相手なんだからさ、未練があってもおかしくないじゃん」
実にごもっともな妹からの助言。
ナナセ、ありがとな。
けど、それはあくまで「こっちの俺」の話なんだ。
俺は違う。俺は、こっちの世界の俺じゃない。
だから、あいつと別れるって決めた。どうがんばっても、青野のことを恋愛相手として見ることができないから。
(そう、できっこない。青野に恋をするなんて)
俺がうつむいてしまったせいか、ナナセは「ごめんごめん」と慌てたように俺の背中を撫でた。
「ちょっと言い過ぎた。別に今のお兄ちゃんが嫌いってわけじゃないからね。むしろ、お兄ちゃんに振りまわされなくなったおかげで、明らかにストレスが減ってるし」
「……おう」
「ただ、青野のことは、ほんと意地をはることはないっていうか……」
ナナセは少し考え込んだあと、「よし!」と俺の背中を強く叩いた。
「とりあえずさ、今度うちのクラスを覗きにおいで! 青野が今どんな感じなのか、直接その目で確かめてみなよ」
「……嫌だ、絶対に行かねぇ」
「また、そんな意地を張らないで……」
「嫌だ。行かないもんは行かねぇ」
つーか、そんなに俺の背中を押していいのか? お前は今、青野といい感じなんじゃねーの?
そうした疑問が次々とわいてきて、けどやっぱり口にはできない。
ああ、わかってる。俺のこういうところが、こっちの俺より「意地っ張り」なんだろうな。
俺が? 青野と? よりを戻したい?
「だって、やけに気にしてるじゃん、青野のこと」
「そ、そんなことねーよ! べつに気にしてなんか……」
「じゃあ、なんで私にいろいろ訊いてくるの?」
「それは……」
お前が青野と同じクラスだから。
お前くらいしか聞ける相手がいないから。
なにより──
(お前、青野とすげー仲よさそうだし)
最後の一言は、やっぱり口にはできない。だって、それこそやきもちを妬いてるみたいだし。
(そんなことねーっての)
しつこいようだけど、俺は青野には幸せになってほしい。そのためなら、今後あいつが誰と付き合おうがかまわない。
こっちの世界の俺とよりを戻そうが、ナナセと付き合うことになろうが、俺としては「どうぞどうぞ」ってスタンスだ。──いちおうは。
なのに、妹の目はいつになく冷ややかだ。
「なんか……お兄ちゃん、変わったよね」
いや、変わったもなにも中身は別人だからな。
「前のお兄ちゃんはさ、もうちょっと、こう……おバカな感じっていうかさ」
「おい」
「バカでやりたい放題で、私や青野にいっぱい迷惑かけて──でも、すごく素直でわかりやすかった。そういうところ、ちょっとすごいって思ってた」
「え……」
「だって、ふつうはさ、お兄ちゃんみたいに素直になれないんだよ。意地やプライドがあるし、周囲の目も気になるし、空気読まないといけないし。そんな好き勝手なこと、そうそうできっこないじゃん」
でもさ、とナナセは続けた。
「今のお兄ちゃんは、私らとそんなに変わらないよね。ていうか下手すれば私より意地っ張りかも」
「いや、それは……」
「別にいいじゃん、青野のことが気になるなら気になるで。あれだけ『好き好き』って騒いでた相手なんだからさ、未練があってもおかしくないじゃん」
実にごもっともな妹からの助言。
ナナセ、ありがとな。
けど、それはあくまで「こっちの俺」の話なんだ。
俺は違う。俺は、こっちの世界の俺じゃない。
だから、あいつと別れるって決めた。どうがんばっても、青野のことを恋愛相手として見ることができないから。
(そう、できっこない。青野に恋をするなんて)
俺がうつむいてしまったせいか、ナナセは「ごめんごめん」と慌てたように俺の背中を撫でた。
「ちょっと言い過ぎた。別に今のお兄ちゃんが嫌いってわけじゃないからね。むしろ、お兄ちゃんに振りまわされなくなったおかげで、明らかにストレスが減ってるし」
「……おう」
「ただ、青野のことは、ほんと意地をはることはないっていうか……」
ナナセは少し考え込んだあと、「よし!」と俺の背中を強く叩いた。
「とりあえずさ、今度うちのクラスを覗きにおいで! 青野が今どんな感じなのか、直接その目で確かめてみなよ」
「……嫌だ、絶対に行かねぇ」
「また、そんな意地を張らないで……」
「嫌だ。行かないもんは行かねぇ」
つーか、そんなに俺の背中を押していいのか? お前は今、青野といい感じなんじゃねーの?
そうした疑問が次々とわいてきて、けどやっぱり口にはできない。
ああ、わかってる。俺のこういうところが、こっちの俺より「意地っ張り」なんだろうな。
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