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第五十八話【戻ってきたマンション】
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「お久しぶりです、深月さん。」
お元気そうで何よりです。
なんてソファーから立ち上がりながら三嶋さんが私に言う。
元気は元気だけど元気じゃないです。
二度と来たくないし来ないと思っていたあのマンションに逆戻りしたわけですし。
なんなら今のこの状態も状況もかなり良くないので、元気でいられるわけがないといいますか。
「あの、佐竹さん?マンションについたんだし、コレ外してもらえませんかね?」
コレ。
コレとは。
あの素敵なホテルの一室の中で、ぎゅうっとされた後。
『深月…』と囁かれて両手を取られ、不覚にもドキっとしたのに。
カチャ、カチャ。と音がしたと思ったら指錠をはめられていた。
みなさん、指錠というのをご存じだろうか。
私は初めて見た。
楕円形のプレート状になった手錠のことである。
ただし、手首に嵌めるものではなく、親指を嵌める。
手錠よりもコンパクトでかつ、稼働域が減って何もできないのである。
その後あれよあれよという間にここまで連れ戻されてしまったのである。
今回はお姫様抱っこではなかっただけまだましだけど。
「んー、もう少し我慢しような?」
なんでだ!?
前で固定されている私の親指たちを佐竹さんに掲げ、コレと差し出していたわけだが、その手をとり、ソファに促される。
佐竹さんがソファーに座り、私はその膝に横向きで座らされる。
相変わらずの定位置である。
もう諦めた。
何を言ってもこの人には通用しないし、結局やらされるし。
クスクスと向かいで笑い声が聞こえ、三嶋さんの肩が揺れているのが見えた。
「ヒカルが満足そうにしている姿を見るのは久しぶりですね。深月さんを膝にのせているのもなんだか懐かしい。」
まぁ、3カ月ぶりですしね。そら懐かしいでしょうよ。
てか、私を探すの諦めてたんじゃないんかい。
「もう私を探すの諦めていたんだと思いました。」
「なわけ。」
間髪入れずに上から答えられて、それはそれで驚いた。
だって年明けから探している感じは見えなかったって…
「さて、深月さんが無事なのが確認できたということで。僕はちょっと行くところがあるので。深月さん、後程。」
あとは任せましたよ。
と佐竹さんに言うと三嶋さんはリビングを出て行った。
「…うぉっ!?」
三嶋さんが出ていくのを目で追って呆けていると、急に体が浮いた。
今日はお姫様抱っこないとおもったのに!!!
「腕、頭に回して。」
完結にものをいう佐竹さん。
いや、あの。
回すよ回すけどね?
親指固定されてると結構いろいろやりずらいよ!?
すると、リビングとつながっていたあの開かずの扉の前に立った。
前に来たときは「ここはお前には関係ない」みたいなことを言われていた場所である。
よく見えないが佐竹さんが何かをしたら、鉄で出来ているようなドアが横にヴンとスライドした。
「ここはもともとシェルターだ。何かあったときのために、外部からの攻撃の一切を遮断できる。天災だろうが、爆撃だろうが。」
天災はいいとして、爆撃って何。戦争でもするの?
あ、戦争は戦争でも抗争の方か?職業柄。それなら納得。
「何日でも、籠れる。」
……。
何日でも?
私いま佐竹さんにここに連れてこられて……
あれ?どういうことだ?
ストンと私を下した場所。
それはこのシェルターと呼ばれた部屋に置かれた、キングサイズのベッド。
んんんんん?!
「深月…」
「んふっ!」
いやいやいやいや
急だな!ベッドに置かれた時点であれだとは思ったけれども!!
いきなりキスをされて、目を見開く。
ゆっくりと唇が離れ、熱い瞳で見つめられる。
なんだろう、この人。
ホテルでも思ったけど、なんだか不思議と怖くない……
お元気そうで何よりです。
なんてソファーから立ち上がりながら三嶋さんが私に言う。
元気は元気だけど元気じゃないです。
二度と来たくないし来ないと思っていたあのマンションに逆戻りしたわけですし。
なんなら今のこの状態も状況もかなり良くないので、元気でいられるわけがないといいますか。
「あの、佐竹さん?マンションについたんだし、コレ外してもらえませんかね?」
コレ。
コレとは。
あの素敵なホテルの一室の中で、ぎゅうっとされた後。
『深月…』と囁かれて両手を取られ、不覚にもドキっとしたのに。
カチャ、カチャ。と音がしたと思ったら指錠をはめられていた。
みなさん、指錠というのをご存じだろうか。
私は初めて見た。
楕円形のプレート状になった手錠のことである。
ただし、手首に嵌めるものではなく、親指を嵌める。
手錠よりもコンパクトでかつ、稼働域が減って何もできないのである。
その後あれよあれよという間にここまで連れ戻されてしまったのである。
今回はお姫様抱っこではなかっただけまだましだけど。
「んー、もう少し我慢しような?」
なんでだ!?
前で固定されている私の親指たちを佐竹さんに掲げ、コレと差し出していたわけだが、その手をとり、ソファに促される。
佐竹さんがソファーに座り、私はその膝に横向きで座らされる。
相変わらずの定位置である。
もう諦めた。
何を言ってもこの人には通用しないし、結局やらされるし。
クスクスと向かいで笑い声が聞こえ、三嶋さんの肩が揺れているのが見えた。
「ヒカルが満足そうにしている姿を見るのは久しぶりですね。深月さんを膝にのせているのもなんだか懐かしい。」
まぁ、3カ月ぶりですしね。そら懐かしいでしょうよ。
てか、私を探すの諦めてたんじゃないんかい。
「もう私を探すの諦めていたんだと思いました。」
「なわけ。」
間髪入れずに上から答えられて、それはそれで驚いた。
だって年明けから探している感じは見えなかったって…
「さて、深月さんが無事なのが確認できたということで。僕はちょっと行くところがあるので。深月さん、後程。」
あとは任せましたよ。
と佐竹さんに言うと三嶋さんはリビングを出て行った。
「…うぉっ!?」
三嶋さんが出ていくのを目で追って呆けていると、急に体が浮いた。
今日はお姫様抱っこないとおもったのに!!!
「腕、頭に回して。」
完結にものをいう佐竹さん。
いや、あの。
回すよ回すけどね?
親指固定されてると結構いろいろやりずらいよ!?
すると、リビングとつながっていたあの開かずの扉の前に立った。
前に来たときは「ここはお前には関係ない」みたいなことを言われていた場所である。
よく見えないが佐竹さんが何かをしたら、鉄で出来ているようなドアが横にヴンとスライドした。
「ここはもともとシェルターだ。何かあったときのために、外部からの攻撃の一切を遮断できる。天災だろうが、爆撃だろうが。」
天災はいいとして、爆撃って何。戦争でもするの?
あ、戦争は戦争でも抗争の方か?職業柄。それなら納得。
「何日でも、籠れる。」
……。
何日でも?
私いま佐竹さんにここに連れてこられて……
あれ?どういうことだ?
ストンと私を下した場所。
それはこのシェルターと呼ばれた部屋に置かれた、キングサイズのベッド。
んんんんん?!
「深月…」
「んふっ!」
いやいやいやいや
急だな!ベッドに置かれた時点であれだとは思ったけれども!!
いきなりキスをされて、目を見開く。
ゆっくりと唇が離れ、熱い瞳で見つめられる。
なんだろう、この人。
ホテルでも思ったけど、なんだか不思議と怖くない……
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