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第一章 弘樹,転生す

第十八話 召喚された勇者が実力をつけていた件

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~サイド エンラルド王国に召喚されたクラスメイト,連~

これはまだ弘樹が地獄の魔窟攻略をしていた時の話。

 エンラルド王国,首都エルトから少し離れた森で,八人ほどがゴブリンの群れと戦っていた。
「おい,勝しゅう,右まわれ」
リーダと思われる少年が勝と呼ばれた少年に声をかける。
「了解,連」
「ボブ,そっちに何体か行ったぞ」
ボブと呼ばれた他の少年とは身長も体格も一線をかく少年は目の前からくるゴブリンを対処する。
「リョウカイデース。イマ,タオシマース」
「これで最後の一体。じゃあな,ゴブリンども」
リーダー格の少年が最後の一体のゴブリンにとどめをさした。その瞬間戦闘を行っていた人たちから歓声が漏れる。
「「いよっしゃー」」
「かったぞー」

その瞬間,一気に空気が明るくなり祝杯ムードになった。何人かはハイタッチしているようだ。


 俺はそれを見てきだる気に考ええる。
 はぁ,勝てて良かったな。だけど,作戦に変更を入れないとだな。今のままだと仲間が危険だ。ああ,なんで俺がこんな役目になっているんだ。ここは,本来なら弘樹の⋯⋯。いや,あいつはもう⋯⋯。落ち着け,俺。今することは悲しむことじゃない。どうやって仲間を守るか,だ。

 そういうと俺はみんなに向き直す。
「なあ,そろそろ時間だ。王城に変えるぞ」
「えー。ちょっと休憩--」
「だめだ。帰るぞ」
そういうと俺はすたすたと歩き出した。それにつられてみんなも歩き出すようだ。

 今の戦闘を行っていたのはエンラルド王国に召喚された異世界人,連たちである。彼らは召喚されてから騎士団のもと訓練を積み,魔物討伐に精を出していた。今は訓練の一環である魔物討伐中である。

「いやー,私たちも強くなったよねー」
そういった女子を連が注意する。
「全く,まだまだだぞ。第一,まだ俺たちが戦えているのは低級の魔物だけだ。それで思い上がったらいいことなんてないぞ」
「連は容赦ないなあ。そういうところが立夏には高評価なのかなー」
立夏は顔を赤くして起こり始める。正直全く迫力がないが。
「ちょ,やめなさい舞子」
「ごめんってー」

 今からかわれているのが川島 立夏。身長は150センチちょとで明るいパーティーのムードメイカーである。そしてからかっているのが立川 舞子。立夏の親友でいつもふざけている。身長は160センチくらい。立夏とは高校で知り合いそのまま意気投合したのである。

 そして,立夏がからかわれる原因ともいえる連こと大田おおた 連れん。身長は180センチ越えで大柄,顔もイケメンと来ている。まさに勇者と呼べる人である。ただ冷たいのがたまに傷であるが。ちなみに弘樹とは幼馴染である。






「よし,今日も無事帰ってきたな」
「ああ。途中で危ないとこがあったけど何とかなった。でもこれはもっといい装備をつけないとだめだぞ」
「そうか。それは良かった。お前らも成長したな。で,今日でレベルはいくつ上がったんだ」
今連たちと話しているのがこの国の騎士団長であるビルさんだ。今は国から勇者の育成を頼まれている。
「それは各自に報告させる。まずは俺から行くか」


大田 連
Lv15
HP120
MP40
攻撃力50
物理防御力43
魔法防御力37
素早さ22
スキル 剣術Lv3
    光魔法初級Lv1

「うんうん,素晴らしいな。今日もすさまじい成長っぷりだよ。これは俺が追い付かれる日も近いかも知れないな」
「そんなことはない。たとえ俺がステータスで勝っても経験で全く勝てないからな」
「お,うれしいねえ。それで他の奴らはどうなったんだ」
「次に立夏について報告するか⋯⋯」

 こうして勇者たちの報告会は進んでいく。






 そして,異世界人たちがゴブリンの群れと戦ってから1週間くらいが経った頃。王城にて。俺は柄にもなく緊張していた。まったく,計画どうりやれば失敗などしないはずなのに。

 そして俺は立夏に話しかける。
「連,今日はついに魔窟攻略だね」
そういうと立夏は連に抱き着いた。
「なっ」

 全く,立夏もなかなか成長しているんだから,いくら幼馴染だってこういうことはやめてほしい。俺だって男だから間違いだっておこってしまうかも知れない。起こさないようにするけど。まあ,今くらいはいいか。

 そう言って俺は立夏の頭をなでる。
「立夏か。ああ,そうだな」
「なに,緊張してるの? 心臓バクバクいっているよ」
「ああ,多少な」
「そんなに気負う事ないよ」
「そんなこと言ってもだな,俺が司令塔なわけで,俺がミスをしたら部隊が壊滅するかもしれないんだぞ」
「そうだけどさ,みんなかなり強くなったじゃん」
「そうだ,な。俺もみんなのことを弱く思いすぎているのかも知れない」
俺は立夏に言われて初めてみんなのことを舐めていたと自覚する。こんなんじゃだめだな。リーダー失格だ。
「そうだよ,その調子。いっつもどうりの連の方がいいよ」
「そうか。ありがとう」
そう言って俺は笑った。どうやら俺はまた立夏に救われてしまったようだ。





 勇者一行は移動して場所は魔窟前。俺が大声で激励をしていた。
「いいか,お前ら。これから魔窟に潜る。その前にこの魔窟について軽くおさらいをしておくぞ」
「「「はい」」」
「この魔窟は群の魔窟という。この魔窟の特徴は魔物が他の魔窟と比べて多数で出現することだ。だが,お前らはもう十分強くなった。恐れるものはない。この魔窟を踏破し,我ら勇者一行の最初の実績とするぞ」
「「「おー」」」 

 その後騎士団長のビルさんが話し始める。
「流石だね。連君からほぼほぼ言われてしまったが私からも幾つか注意点を言おう。まず陣形を崩さないこと。次に自分勝手な行動派とらないこと。そしていざというときはちゃんと撤退をし,アイテムもどんどん使うこと。以上だ」
「「「はい」」」
「それでは行ってこい」
「「「行ってきます」」」
「おっと,洞窟に入る前に陣形を確認しておこう。剣士である俺と勝,棒使いであるボブは前衛。そしてその後ろに魔法使いの舞子,陽太だ。そしてその後ろにヒーラーの立夏,一葉が続いてくれ。スカウトである風子は戦闘時は自由に動き回ってくれ」
「「「了解」」」
「ワカリマシータ」
「それじゃあ突入」






 そして,場所は群の魔窟の中層,4階層に当たる場所にて。俺たちはここまで特に危なげなく進んでいた。

 ここまでは予想通りか。さすがに今まで戦ったことのある魔物に後れを取る俺たちじゃないからな。でもみんな俺の思っていたより強くなっているな。だが相当疲労がたまっているようだ。

「ふむ,ここらへんでいったん休憩にするか」
俺は話しかける。それに反応したのは戦闘時以外ずっと連のそばにいる立夏だった。
「そうね。それがいいわ」
「風子,みんなに伝えてからキャンプの用意を頼んでいいか」
「わかったわ」

 風子と呼ばれた少女は足音も立てずにみんなのところに伝えに行った。どこかで風子の突然の訪問に驚いたような声が聞こえたが俺は無視する。ちなみに風子はこのパーティー唯一のスカウトだ。スカウトとは魔物の接近を知らせたりトラップの解除をする人である。

「ねえ,連。分かっていると思うけどみんなの疲労がかなり来ているわよ。今回は長めに休憩を取らないと」
「ああ,そうだな。今ちょうど風子にキャンプの設置を頼んだとこだ」
「流石ね。それにしても私含めてみんな予想以上に疲れがきているわね」
「ああ。まあ,そりゃあ初めてのダンジョン攻略なんだ。実際の戦闘回数もいつもより多いし魔窟という閉鎖的なものがより増幅させているんだろう。トラップにも気を付けないといけなかったしな」
「そうね。それじゃあ私もごはんの用意に参加してくるね」


 そして勇者一行の夜は更けていく。
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