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第五章 恐怖!カルト宗教

第五十話 謎のQRコード

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休憩が終わると再び賛美歌タイムになる。今度は「Do They Know It's Christmas?」のオマージュだった。教祖はチャリティーが好きなのだろうか。皆座って聞いているため、ここで動くと目立つ。

じっとタイミングを見計らっていたところ、賛美歌が終わり、再び教祖が前に出てきた。講話が始まるようだ。すると、再び全員で立ち上がっての「クリアーですかー!」「クリアーでーす!!」が始まったため、そっと後ろの扉を出た。

事務所は四階にある。入会手続きをした時、吉野が書類に印鑑を押すのに付いて行ったため、吉野のデスクも把握していた。十個ほどの地味なデスクが並ぶあまりにも普通の事務所で、ここだけ見ればどこかの中小企業のようだ。

一つだけ違うのは、壁に満面の笑みを浮かべた金日成と金正日の肖像画が掛けられていることだった。吉野に聞くと、

「天道加世が北朝鮮旅行に行ったときに買ってきたもので、何故かずっと飾ってるんですよね。教祖は結構北朝鮮が好きで、どうも家系のルーツがあのあたりみたいなんですよ。」

と言っていた。

宗教の教祖が共産主義国のシンパというのも不思議な話だ、といっても小山内のように共産趣味者という線もあるか……などと思いながらデスクの上の書類を見ていたが、特に怪しいものはなかった。いくら教会の中といえども、危ない情報は置きっぱなしにはしないだろう。ここはもう一歩進む必要がある。済は深呼吸し、思い切って吉野のデスクの引き出しを開けた。すると、ペンや書類に混じって気になるものがあった。

引き出しの隅の方に、QRコードを印刷した紙が山積みになっている。大きさはポケットに入る程度だ。教団ホームページのURLだろうか。済はとりあえず一枚をポケットにしまい、事務所を出た。

何事もなかったようにホールへ戻ると、天道加世の講話に入っていた。特に咎められることもなく最後列に座る。講話が終わると祈りの時間となり、閉会となった。その日は吉野から数人の信者を紹介された後に解放され、教会を出た。



「思ったよりは普通の人が多いと思ったんだけど、どうもサークルの師匠陣が信者みたいなんだよ。最初は気付かなかったけど、前に立たされた時、こしじが座ってるのが見えてさ。」

帰宅後、済はスパイカメラで撮影した動画を見せながら、吉井、陽子と三人で報告会をしていた。

「今入ってきた、白いローブの女が教祖なんだよ。この後が笑っちゃうんだけど、法の華三法行みたいなことを始めて……。」

済がそう言った時だった。天道加世の顔が大きく映り、陽子があっ、と声を上げた。

「この人、恭子のシェアハウスにいた!カヨコ!」
「なんだって!?」
「間違いない。自己啓発セミナー最終日に話したのもこの人。」
「だんだん繋がってきたな。」

MASKにいたカヨコが科学の道の教祖で、その信者にはサークルの師匠がいる……やはりサークル、MASK、科学の道は繋がっている。市村が言っていた「真髄となる教え」が科学の道だとすると、黒幕はカヨコか。サークルの売上が教団の運営資金にでもなっているのだろうか?だが、それにしては活動内容が地味すぎる。

考え込んでいると、吉井が口を開いた。

「そういえばあれ、思い出したんだよ。これを見てくれ。」

吉井が送ってきたのは、サークルが売っているアミノ酸サプリの画像だった。

「ちょっとこいつのラベルを見てくれ。ほらここ!」

吉井が示したのは、ラベルに書かれた製造者情報だった。

「群馬県C郡……Y町!?山崎が送ってきてたY町か!」
「これ、偶然か?」
「とりあえずこの工場の場所を探ってみるか。」

済は早速グーグルマップを開き、製造場所として記載された住所を打ち込んだ。表示された場所は群馬の山中で、ストリートビューで表示すると、道路から少し脇に入ったところで突然駐車場と真っ白な建物が現れる立地になっていた。駐車場の入り口には「株式会社 購買製造」という、購買なのか製造なのか分からない社名が記載されている。「株式会社 購買」の商品を製造しているため、このような不可解な名前になったのだろう。

ストリートビューは意外と奥まで見られるようになっており、工場を一周することができた。済は工場の裏手にある集積場所に注目した。この工場は原料を買ってきてカプセルや錠剤に成形する部分を行っているらしく、アミノ酸やビタミンの段ボールが積んである。雑然と積まれた段ボールを眺めるうち、済は他と毛色の異なるものが混じっていることに気づいた。

「水素化アルミニウムリチウム……?何でサプリの工場にこんなものがいるんだ?アミノ酸に水素化アルミニウムリチウム……ヨッさん、山崎の専門は何だったっけ?」
「あいつの専門は有機合成だったな。俺よりワタルに近いと思う。」
「ヨッさん、もしかしてこりゃあ……。」
「えっ?あ、まさかそんな……!」
「えっ、何!?」

陽子は全くピンと来ていなかったが、化学系出身の二人の頭にはあるものが浮かんでいた。
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