上 下
52 / 55
聖女じゃなくて嫁召喚?

聖女じゃなくて嫁召喚?−24−

しおりを挟む
……

執務室でジョーから領内の様子を確認する。
「日増しに強い魔獣が現れ、それに伴い、被害も拡大して行き、状況は悪化する一方でした」
ジョーからの報告はおおかた予想通りのものだった。


ちょうど召喚の儀が行われていた頃でしょうか。
突然、屋敷内から浄化の魔法が放出したかと思うと、魔獣を駆逐して行ったのです。
さらに、屋敷内の精霊達が復活しました。


「浄化の魔法は精霊達が?」
「いえ、、、エンケリ様のお部屋からでございました」
「エンケリの?」
「エンケリ様のお部屋に女性のお召し物と持ち物がありまして、そららの周りに精霊達が群がっておりました」

ジョーが見たこともない意匠の洋服や持ち物を差し出してくる。
その中に一点だけ見知った袋を見つけ手に取る。
手が震える。
母が刺しゅうし、エンケリに大切なものをこれに入れなさいと言って渡した袋だ。
使い込まれ、色あせてはいるが、持ち主が大事に使ってきたのだろう。
何度か繕った跡があった。

ジョーが話を続ける。
精霊達がエンケリ様が帰ってきたと、レオン様と婚約されたと口々に言っておりましたので、こちらのお召し物のサイズに合わせた物をご用意しておりましたが...まさか、あのようなお姿とは思いませんで。

「タカナシと言ったよな」
「勇者ゴウ様は、ゴウ・タカナシとおっしゃいました」
「それじゃ、エンケリは...」
「エンケリ様は、奥様が聖女である事を悟られないようにと名前とお姿を」
「母が?」
「ハイ。この事を知っているのは、他はマリーだけです」
「そうか...アンが聖女というのは間違いないのか」
「奥様はそのように。王家から護らないとと仰っておりました」


イヤー!!


しおりを挟む

処理中です...